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脅しの存在
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千紘も正直1回や2回担当しただけの客の顔など覚えていない。その場しのぎで楽しく会話をしたとしても、次までの予約が空けば忘れてしまう。
それでも何年もずっと通ってくれている客のことは自然と覚えていくし、どんなに時間が空いても前回話した内容も思い出せるほど印象深くなっていくものだ。
凪にとっての客も同じだろうと思えた。凪に関していえば、その買った予約自体が共有する時間となり、給料となる。
長くコースを取ってくれれば、それが自分に対する価値だとわかりやすく表示される。
凪にしてみたって70分コースを月1で通う客よりも、丸1日貸し切ったり180分以上のコースを月に何度も利用してくれる客の方がありがたいし、特別感は増す。
だからこそ、顔も覚えられていないような客が営業妨害をするなど、とても許せないのだ。
千紘にはそれが痛いほどよく伝わってきた。ただ、千紘に関しては相手の男の印象があまり良くなかったせいで記憶に残ってはいたのだが。
「図々しいってなんだよ! こっちは客だぞ!」
「金払ってれば何してもいいってもんじゃねぇんだよ。つーか、営業妨害してる時点で客でもなんでもねぇわ。かっこ悪いことしてねぇでもっと他のことに時間使えよ、暇人」
「はぁ!? てめっ」
「あ、俺仕事だから行くわ。お前みたいな暇人相手にしてるほど俺は暇じゃないから」
凪はそれだけ言うと、手をひらひらと靡かせてポケットに両手を突っ込んで背を向けた。腹を立てた男が追いかけようと足を踏み出したが、その途端に男のスマートフォンが音を立てた。
画面と凪の背中を交互に見た男は、軽く舌打ちをした後、電話を優先させた。
「あー、もしもし。最悪。変なのに捕まったわ。いや、大丈夫。アイツにはなんもできないし。それより後何人だっけ? 新規で予約入れる?」
笑いながら話している男。新規での予約はきっと千紘のカット予約のことだろうと思えた。千紘は録音しているのを確認し、機会を窺う。
「成田千紘の予約を俺達でいっぱいにして全員キャンセルすれば、ガッツリ仕事なくなるだろうな。暇になったら俺らの予約も入れやすくなるし、お前のとこにも戻ってくんじゃね?」
そんな会話が聞こえ、ああ……相手は元彼か、なんて千紘は思った。
「上手くいってるから、また連絡するわ。うん。じゃあな」
男が電話を切ってスマートフォンの画面を見たと同時に千紘は立ち上がって一歩踏み出した。片手で録音停止ボタンを押す。
「ねぇ、その話詳しく聞かせてくれる?」
千紘は男の顔を覗き込むようにして後ろから話しかけた。
それでも何年もずっと通ってくれている客のことは自然と覚えていくし、どんなに時間が空いても前回話した内容も思い出せるほど印象深くなっていくものだ。
凪にとっての客も同じだろうと思えた。凪に関していえば、その買った予約自体が共有する時間となり、給料となる。
長くコースを取ってくれれば、それが自分に対する価値だとわかりやすく表示される。
凪にしてみたって70分コースを月1で通う客よりも、丸1日貸し切ったり180分以上のコースを月に何度も利用してくれる客の方がありがたいし、特別感は増す。
だからこそ、顔も覚えられていないような客が営業妨害をするなど、とても許せないのだ。
千紘にはそれが痛いほどよく伝わってきた。ただ、千紘に関しては相手の男の印象があまり良くなかったせいで記憶に残ってはいたのだが。
「図々しいってなんだよ! こっちは客だぞ!」
「金払ってれば何してもいいってもんじゃねぇんだよ。つーか、営業妨害してる時点で客でもなんでもねぇわ。かっこ悪いことしてねぇでもっと他のことに時間使えよ、暇人」
「はぁ!? てめっ」
「あ、俺仕事だから行くわ。お前みたいな暇人相手にしてるほど俺は暇じゃないから」
凪はそれだけ言うと、手をひらひらと靡かせてポケットに両手を突っ込んで背を向けた。腹を立てた男が追いかけようと足を踏み出したが、その途端に男のスマートフォンが音を立てた。
画面と凪の背中を交互に見た男は、軽く舌打ちをした後、電話を優先させた。
「あー、もしもし。最悪。変なのに捕まったわ。いや、大丈夫。アイツにはなんもできないし。それより後何人だっけ? 新規で予約入れる?」
笑いながら話している男。新規での予約はきっと千紘のカット予約のことだろうと思えた。千紘は録音しているのを確認し、機会を窺う。
「成田千紘の予約を俺達でいっぱいにして全員キャンセルすれば、ガッツリ仕事なくなるだろうな。暇になったら俺らの予約も入れやすくなるし、お前のとこにも戻ってくんじゃね?」
そんな会話が聞こえ、ああ……相手は元彼か、なんて千紘は思った。
「上手くいってるから、また連絡するわ。うん。じゃあな」
男が電話を切ってスマートフォンの画面を見たと同時に千紘は立ち上がって一歩踏み出した。片手で録音停止ボタンを押す。
「ねぇ、その話詳しく聞かせてくれる?」
千紘は男の顔を覗き込むようにして後ろから話しかけた。
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