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新しい風

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 性別の壁を越えた恋愛が存在することは知っていた。そういった人間を軽蔑する気はない。ただ、亜純はどこか他人事で自分がその対象になることがあるだなんて考えたことはなかった。

 ましてや真白は親友だった。何度も遊んで出かけて実家に泊まりにもきた。ずっと友達だった。きっと自分の友達だという当たり前が無意識に真白を恋愛対象外へと追いやっていたのだと思えた。

 異性だから恋愛に発展する可能性がある。同性だから自分の恋を応援してくれる。そんなことは決して当たり前ではない。
 真白が嬉しそうに彼氏の話をしたことなど一度もなかった。結婚に憧れを抱いている素振りも子供が欲しいという発言もない。

 男は皆クズばっかりだ。そう言った真白から男性そのものを嫌う言動はいくらでもあった。彼氏がいることも体だけの関係を続けている男がいたことも知ってはいた。男性が嫌いなのにどうして彼氏は作るのか。そこに疑問を持とうとはしなかった。
 というより、亜純には理解ができなかったのだ。真白は親友だったからそれらの行動を否定する気はなかった。よくないことだとわかっていても、真白が決めたことならそれでいい。自分だけは変わらず友人でいるのだから。そんなふうに思っていた。

 けれど真白の気持ちを知った今、彼女は自分がレズビアンだと亜純に知られたくなかったのではないかと思えた。
 だから必要以上に常に男性の存在を匂わせていた。自分の恋愛対象は男性なのだと亜純に思い込ませていたのではないかと考えた。

 それとも、最初から叶わない恋だとわかっていたから自暴自棄になっていたのだろうか。色々と考えてみたが、1つだけわかるのは真白は本当に好きな人と付き合えたことが一度もないということだった。
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