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新しい風

04

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 まさか千景とキスをすることになるとは思っていなかった。今まで男性として意識したことなど一度もなかったのに、今更になってこんな関係になろうとはおそらく誰も予想しなかったことだ。

 だから帰り際に千景から「明日、全部やること終わって落ち着いたら2人のこれからのこと、話そう」そう言われても軽く頷いて別れてしまった。

 1人になった空間でようやくそれは今後付き合うかどうするかということではないかと考え始めた。
 亜純はとても不思議な気分だった。もう暫く恋愛はいいや。そう思い始めたところで千景と進展したのだから。
 悪縁を切ると良縁がやってくるとは聞くが、千景の場合はずっと傍にいてくれた存在だ。

 それに真白だって高校時代から千景はどうかと勧めた。あの時依ではなく、千景に目を向けていたらどうなっていただろうかと亜純は考えた。
 そんなことを考えるのも初めてのことだった。

 高校の時から千景と付き合い、結婚していたら……軽く想像してみたが、亜純は軽く首を左右に振った。きっとそんな未来はなかったとすぐに思い直す。
 あの時依と付き合わなかったとしても、振った依の友達である千景と付き合うことはなかっただろうし、仮に付き合っていたら千景は絵本作家になっていなかったはずだ。

 恋愛を後回しにして夢を追い続けた結果、今の千景があるのだ。そして、亜純も依と結婚したからこそ彼のいいところも悪い所も知ることができた。それから自分から恋愛を掴み取る難しさも。

 だからもしも千景と付き合うなら、しっかり男女の恋愛として向き合うならそれは今なのだ。色んな人生経験を重ね、大人になった2人だからこそ、お互いの魅力に改めて気付けたのだと思った。

 明日、ちゃんと伝えよう。今までのお礼も、これから千景とどうしていきたいかも。亜純はそう決意した。だから、今日のことをシミュレーションして寝付けなくなってしまうのも当然だった。
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