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愛情は感じるもの
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「それで、行くの?」
ずいっと顔を寄せられて、亜純は心臓が飛び出しそうなほど脈打つのを感じた。今までのトキメキとは全く異なった心臓の動きだ。
「う、うん……行けるなら嬉しい」
ここで断ったら何をされるかわからない。なるべく穏便に刺激をしないように慎重に言葉を選ぶ。
「そっか。そうだよね。だって旅行に行きたいって言い出したのは亜純ちゃんだもんね?」
「うん……」
「いいホテル取っておくからね。当日キャンセルなんてやめてよ? そしたらキャンセル料全額払ってもらわなきゃいけなくなっちゃう」
「え!?」
亜純は反射的に困惑した声を上げた。ラグジュアリーなホテルなど泊まったことはないが、経済力のある悠生が取るホテルは1泊何十万するんだろうか。あるいは何百万だろうか。
財布から金を取るだけでは飽き足らず、こうして高額な金銭をむしり取るつもりだろうかと亜純は震えた。
「そりゃそうだよ。だって、亜純ちゃんの都合で来られなくなったなら、俺がキャンセル料払うのおかしいよね?」
「うん……大丈夫」
大丈夫なわけがなかった。どうにかして断らなければ、キャンセル料を請求されてしまう。かといって今から行かないと言えばもっと酷い目に遭うかもしれない。
「よかった。安心したよ。旅行、一緒に楽しもうね」
「うん……私も楽しみにしてる」
「それで……財布を出してたのは結局なんだったの?」
低い声で唸るように言った悠生。亜純は喉の奥でヒュッと呼吸が止まるような感覚に襲われた。
財布の中を確認したことに気付いているのだと悟った。いくら亜純でも、悠生がおかしいことくらいはわかった。
ここで現金がなくなっていた話などしたら終わりだ。亜純は、じとっと汗が滲むのを感じながら掠れる声で「あのね……私もたまにはホテル代くらい払わなきゃなって思ったの」と呟いた。
ずいっと顔を寄せられて、亜純は心臓が飛び出しそうなほど脈打つのを感じた。今までのトキメキとは全く異なった心臓の動きだ。
「う、うん……行けるなら嬉しい」
ここで断ったら何をされるかわからない。なるべく穏便に刺激をしないように慎重に言葉を選ぶ。
「そっか。そうだよね。だって旅行に行きたいって言い出したのは亜純ちゃんだもんね?」
「うん……」
「いいホテル取っておくからね。当日キャンセルなんてやめてよ? そしたらキャンセル料全額払ってもらわなきゃいけなくなっちゃう」
「え!?」
亜純は反射的に困惑した声を上げた。ラグジュアリーなホテルなど泊まったことはないが、経済力のある悠生が取るホテルは1泊何十万するんだろうか。あるいは何百万だろうか。
財布から金を取るだけでは飽き足らず、こうして高額な金銭をむしり取るつもりだろうかと亜純は震えた。
「そりゃそうだよ。だって、亜純ちゃんの都合で来られなくなったなら、俺がキャンセル料払うのおかしいよね?」
「うん……大丈夫」
大丈夫なわけがなかった。どうにかして断らなければ、キャンセル料を請求されてしまう。かといって今から行かないと言えばもっと酷い目に遭うかもしれない。
「よかった。安心したよ。旅行、一緒に楽しもうね」
「うん……私も楽しみにしてる」
「それで……財布を出してたのは結局なんだったの?」
低い声で唸るように言った悠生。亜純は喉の奥でヒュッと呼吸が止まるような感覚に襲われた。
財布の中を確認したことに気付いているのだと悟った。いくら亜純でも、悠生がおかしいことくらいはわかった。
ここで現金がなくなっていた話などしたら終わりだ。亜純は、じとっと汗が滲むのを感じながら掠れる声で「あのね……私もたまにはホテル代くらい払わなきゃなって思ったの」と呟いた。
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