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それぞれの生活

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 帰宅した後は体中が熱くてたまらなかった。車を降りる少し前、「ねぇ亜純ちゃん。ギュッてしたら怒る?」そんなことを聞かれた。

 キスはされなかったが、期待していた分ハグのお誘いは嬉しく感じた。

「う、ううん……」

 軽く首を振ると、運転席側からそっと抱きしめられた。悠生の匂いをかなり近くに感じる。相手の鼓動なのか自分のものなのかわからない。けれどとても速く動いていたから、きっと私のなんだろうなと亜純は思った。

「それじゃあね」

 わりとすぐに解放されて、車から降りると前回のタクシーと同様に車が去るのを見送ってから家まで歩いた。
 その間もずっと心臓はうるさかった。

 わー! どうしよう! 抱きしめられちゃった……。次もきっとハグはあるよね? 今度はもっと長くするかな。それとも今度こそキスとか……。

 想像しては照れて、頭の中に浮かんだ悠生の顔をかき消す。まだ付き合ってるわけじゃない。ハグなんて友達でもするし。外国なら挨拶だし。そんなふうに必死で期待を封じこもうとするがどうしたって次のデートを想像せずにはいられなかった。

 そんな異変に美希は気付いていた。

「亜純先生、最近可愛くなった?」

「え!? そんな、ほんとですか?」

「うん。あ……あのイケメンの彼といい感じとか?」

「じ、実は2回会いまして……。次が3回目なんです」

「えー! いいじゃん! 次もご飯?」

「そうなんです。お互いに時間を合わせるのがちょっと大変で」

「まあシフト制だとそうだよね。でもそれだと付き合っても遠出とかは難しいかぁ」

 美希にそう言われて付き合った後のデートのことを考える。依とは色んなところへ行った。県外へもよく行った。
 依が有給を使って亜純の行きたいところへ連れてってくれたのだ。

「有給とかあったら……合わせられますかね」

「どうかなぁ。うちらだってそんな簡単に有給使えないからね。彼女のために有給使ってくれたら相当大事にされてると思うよ」

 美希の言葉にそういうものか……と合わない休みについて考えてみた。
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