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それぞれの生活

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 翌日になると千景から連絡が入った。

「デートどうだった?」

 そう聞かれて出会ってからの流れと自分の気持ちの変化を話した。今まで嬉しそうに楽しそうに彼氏とのデートを話す友人たちのことがあまり理解できなかった。
 依のことは好きだったが、はしゃぐ気持ちも苦しくなるほど鼓動が激しくなることもあまりなかった。

 初めて依とキスをした時とセックスをした時だけはさすがに緊張もしたし心臓もうるさいくらいに高鳴った。
 ただそれは依にというよりは行為に対するものだったような気もする。

 千景に話している間にも早口になったり声が弾むのが自分でもわかる。恋愛の話をするのってこんなに楽しかったかなと亜純は思う。

「楽しかったみたいでよかったね」

 そう言われて大きく頷いた。千景が聞くまでもなく、亜純が彼の配慮やしてくれて嬉しかったことを語る。次のデートの日程を決めたこともメイクで失敗したことも。
 まだ会って2回目で、相手のこともあまり知らないのに何度か会ってみたいと思えた。否、知らないからこそたくさん知りたいと思えたのだ。

 千景はいつものように穏やかに話を聞いてくれた。恋愛話を語れる女友達も何人かいるが、皆自分が聞いてほしい方が勝って、いつの間にか亜純の話はいつも後回しだった。
 といっても、亜純の話と言えば喧嘩もなにもない依との平穏な話だったものだから刺激を求める皆にはあまり興味のないものだったのだろう。

 その証拠に離婚したという話をした時には根掘り葉掘り聞かれたものだ。自分にとってあまり聞かれたくない話は他人にとって聞きたい話。自分が夢中になって話したいことは、他人にとってどうでもいい話。
 きっと今回も離婚話よりは刺激が少なくて、皆が通ってきた普通の恋愛話で、亜純は子供だなんて言われながら結局旦那と子供の愚痴に戻るのだろうことは想像がつく。

 それを思うと、話したい時に満足いくまで話を聞いてくれる千景の存在は亜純にとって嬉しいものだった。
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