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将来の夢

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 依は期待していなかったが、真白は約束通り亜純に依を薦めた。どんなふうに言ったのかはわからないが、亜純から「依と付き合ってみる……」と躊躇いがちに言ったのだ。

 ただし、亜純からの条件付きだった。大事にしてほしい、愛情を注いでほしい、浮気しないでほしい。そんなものだ。
 依は飛び上がるほど嬉しかった。今まで何度も断られてきてようやく付き合えることになったのだ。そんな条件など朝飯前だった。

 亜純の条件通り、依はたくさんの愛情を注ぎ、大切に扱い、他の女性によそ見することなどなかった。
 まるでそのご褒美かのように亜純も依を大切にしてくれた。

「正直、依のことは好きじゃなかったの。もちろん、友達としては好きだったよ? でも男性としてその……。でもね、今はちゃんと好き。依が大事にしてくれるから。大好き」

 そう言って可愛く笑ってくれた。長年望んでいた言葉を聞けたし、自分にしか見せない笑顔を見せてくれた。依は毎日幸せだった。

 しかしそれから数年が経ち、千景が有名な絵本作家になった。彼の夢を聞いた時、依は安心した。誰もがなれるわけではない作家を目指す千景は、大学後に社会人となった依よりもよっぽど貧しい生活をしているだろうと思ったからだ。
 経済力のない男は女性が理想とする結婚相手から外される。夢ばかりを追っていて現実から目を背けている男に惹かれる女なんかいない。
 きっと亜純もそんな千景のことを好きになるはずがない。こんなにも近い存在でいたとしても、男性として意識するはずがない。勝手にそう思い、優越感に浸っていた。

 それなのに千景は今や売れっ子作家になった。印税は相当なもので、依の収入を遥かに超えた。加えて保育士となった亜純に園児達に読んでほしいと自身が書いた本を郵送してくるようになったのだ。

 千景は依の友達だったはずなのに、依宛てではなく、亜純宛てに本が届く。依はそれがたまらなく気に入らなかった。
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