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将来の夢

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 亜純が帰宅すると、玄関のドアを開けた瞬間に入浴剤の匂いが鼻を掠めた。

「ただいま」

「おかえり。お風呂沸かしたよ」

 リビングからやってきた依がへらっと笑う。お調子者だった依も大人になるにつれ、落ち着きが出てきたように見えた。
 もとい、高校時代から亜純と2人きりの時だけは妙に大人しくなったりしたものだ。

「ありがとう。お風呂もう入ったんだね」

 首からかけたフェイスタオルと、寝巻き姿の依を見て亜純は言った。自動車メーカーの営業職に就いている依は、整備士のように汚れて帰ってくることはない。
 だから入浴を後回しにすることもあるのだけれど、本日は亜純よりも先に済ませたようだ。

「うん。一緒に飯作ろうと思って材料も買ってきた」

 依はそう言いながら冷蔵庫を指さした。亜純はふっと頬を緩めて、キッチンのシンクで手を洗った。
 まだ野菜と肉が残っていたはずだから、今日は残り物で何か作ればいいや。そう思っていたから買い物はしてこなかったのだ。

 依が食べたいものがあるなら、今日はそれにしよう。そう思いながら手を拭う。

「今日は何が食べたいの?」

「お好み焼き。冷蔵庫の中にキャベツと豚肉あったから。冷凍のエビとイカ買ってきた」

「おお! 冷蔵庫の中身を把握して買い物とは上級者だね」

 亜純が褒めれば、依は嬉しそうに顔を綻ばせた。それからギュッと亜純を抱きしめると「冷蔵庫の中身が無駄になると亜純怒るからさ。今日はちょっと考えた」と言って亜純の肩に顔を伏せた。

「依、私仕事帰りで汗もかいてて汚いからさ。お風呂入ってくるまで待ってて」

「ヤダ。くっつきたいもん」

 依は頬を擦り寄せて、亜純の頬に軽くキスをした。レモングラスの入浴剤の香りが鼻を抜けた。
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