191 / 208
それぞれの門出
【35】
しおりを挟む
「まどかさんが、明るく元気な子に願いを込めてつけてくれたのは凄く素敵だと思うんだ。でも、俺はまどかさんみたいに綺麗で気品のある子にも育ってほしいって思うんだ。清楚な意味も込めて茉莉も入れたし……だから、まどかさんさえ良ければ楊貴妃の妃はどうかなって」
「楊貴妃……? 私、そんなに品格とかないよ。自分の子供に妃をつけるって名前負けしたりしない……?」
とてもいい案だとは思うけれど三大美女と呼ばれる楊貴妃から名前を取るなんて……将来いじめられたりしないかなと不安になる。
「何言ってんの、まどかさん。俺とまどかさんとの子供だよ? 名前負けなんて無縁に決まってるじゃん」
珍しく強気なあまねくん。自分の容姿が嫌いなくせに、自信満々にそう言うあまねくん。よっぽど陽菜ちゃんと同じ字を使うの嫌なんだろうな……。
たしかに、何かの拍子で陽茉莉の字に自分の名前が入っていることを知った陽菜ちゃんが、自分を意識してくれたのかもしれないなんて勝手に勘違いする可能性もなくはない。そういう突拍子もない考え方をするような子だ。
名前は一生ものだし、私とあまねくんの手から離れた後もその名前を背負って生きていくのだ。それを考えたらやはりどうにも縁起の悪い字に見えてならない。
忘れてたけど、私今年のおみくじ凶だったし。ここは大吉のあまねくんの意見を尊重した方がいい気がしてきた。
「……何だかんだ全部の字を私一人で決めて、あまねくんとは答え合わせをしただけだから、あまねくんがちゃんと意味まで考えてそうしたいって言うならそれもいいかなって思うよ」
「本当!? じゃあ、妃茉莉に変更でいい?」
「……うん。どうかな……他の人の意見も聞く?」
「……聞く?」
あまねくんと私は顔を突き付けて、首を傾げた。守屋家全員が揃ったところで、経緯を話した。
家族全員苦虫を噛み潰したような顔をしていた。満場一致で改名が決まり、私とあまねくんは妃茉莉で出生届を出しに行くのだった。
「楊貴妃……? 私、そんなに品格とかないよ。自分の子供に妃をつけるって名前負けしたりしない……?」
とてもいい案だとは思うけれど三大美女と呼ばれる楊貴妃から名前を取るなんて……将来いじめられたりしないかなと不安になる。
「何言ってんの、まどかさん。俺とまどかさんとの子供だよ? 名前負けなんて無縁に決まってるじゃん」
珍しく強気なあまねくん。自分の容姿が嫌いなくせに、自信満々にそう言うあまねくん。よっぽど陽菜ちゃんと同じ字を使うの嫌なんだろうな……。
たしかに、何かの拍子で陽茉莉の字に自分の名前が入っていることを知った陽菜ちゃんが、自分を意識してくれたのかもしれないなんて勝手に勘違いする可能性もなくはない。そういう突拍子もない考え方をするような子だ。
名前は一生ものだし、私とあまねくんの手から離れた後もその名前を背負って生きていくのだ。それを考えたらやはりどうにも縁起の悪い字に見えてならない。
忘れてたけど、私今年のおみくじ凶だったし。ここは大吉のあまねくんの意見を尊重した方がいい気がしてきた。
「……何だかんだ全部の字を私一人で決めて、あまねくんとは答え合わせをしただけだから、あまねくんがちゃんと意味まで考えてそうしたいって言うならそれもいいかなって思うよ」
「本当!? じゃあ、妃茉莉に変更でいい?」
「……うん。どうかな……他の人の意見も聞く?」
「……聞く?」
あまねくんと私は顔を突き付けて、首を傾げた。守屋家全員が揃ったところで、経緯を話した。
家族全員苦虫を噛み潰したような顔をしていた。満場一致で改名が決まり、私とあまねくんは妃茉莉で出生届を出しに行くのだった。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる