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それぞれの門出

【26】

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 私はそっとあまねくんの手を握った。ぎゅっと力を込めて。

「私、もっとちゃんとあまねくんとわかり合いたいって思う」

「……俺もだよ」

「だからね、私ももう隠し事なんてしない。あまねくんが傷付くかもとか、嫉妬するかもなんて思わずに全部話すね、何もかも」

「……え? ……まだ何かあるの?」
 
 あまねくんは顔をひきつらせて、必死に口角を上げているようだった。

「律くんと2人で会ってたのはね、臣くんの日記が見つかったからなの。その内容について話したら、あまねくんには言わない方がいいって言われて……でも、やっぱりあまねくんが追々何で言ってくれなかったの? ってなっても嫌だし、隠し事されてることが不信感に繋がるなら、ちゃんと話すね」

「え……う、うん……」

 私は、未だに顔をひきつらせたままのあまねくんの手を引き、リビングの電気を消した。階段の灯りだけで2階へ上がり、彼と一緒にベッドの中へ潜り込む。

 2人横になったまま、私は臣くんの日記の内容について語った。誕生日プレゼントの謎、花井麻友との関係、彼女の実家へ行く約束、記入された婚姻届け、渡せなかった婚約指輪。

「最終的には議員の娘さんを選んだわけだから悪いのは全部臣くんだけどね……。でも、ちゃんと愛されてたんだなって知ったよ」

 彼はずっと黙って聞いていた。相槌なんて一度も入れずに。

「あまねくんが臣くんと愛情のない付き合いをしてたって言う度に、この事思い出して、私も隠してるの心苦しかったんだ。でも、この事言えて、改めて臣くんとのことは過去のこととしてあまねくんと前に進もうって思えたよ。聞いてくれてありがとうね!」

 私の心は晴れやかだった。裁判も終わり、判決が下され、雅臣とのことは全て過去のものになった。私はもうあまねくんに隠し事をしていないし、これで晴れてあまねくんと陽茉莉との人生だけを考えていける。

 私は穏やかな心であまねくんの唇に口付けし、「おやすみ。あまねくん大好きだよ」そう言って目を閉じた。

 泣き疲れもあるのか、すぐに睡魔が襲ってきて、瞼が重くなる。
 薄れゆく意識の中、「聞きたくなかった……聞きたくなかった」とぼそぼそ呟くあまねくんの声が聞こえた気がした。
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