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こんにちは赤ちゃん
【23】
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「でしょ? まどかちゃんだって変わってるんだよ。今までの相談は全て茉紀ちゃんだったのに、あまねくんが傍にいるようになったらその役割はあまねくんになった」
「……そうですね」
「あまねくんと新婚生活が始まってから、色々見えてきたでしょ?」
「何がですか?」
「あまねくんの素顔? 俺はまどかちゃんよりも長く彼と一緒にいるからね。君に対する愛情が異常なことも知ってるよ」
ハイジさんはそう言ってにやりと笑う。ということは、あのコレクションや写真のことも……。クローゼットに隠してある箱の存在を思い出し、ぞっとした。
「ほら、そんな顔してる。その相手が元彼だったなら、真っ先に茉紀ちゃんに相談したでしょ? でも今はしない。それは、そんなあまねくんのことも含めてまどかちゃんが好きで、今一番信用してるのは彼だから」
「……否定はしません」
「そうなってくるとさ、茉紀ちゃんだって悲しいさ。何でもかんでも解決させるのはあまねくんで、いつの間にか頼りになる年下の旦那に親友奪われて。結婚生活をどんなふうに送っているのかの報告もないなんてさ」
ハイジさんにそう言われて、ようやく私の行動を振り返る。そういえばそうだ。私だって茉紀に何も言ってこなかった。
あまねくんとマンションで喧嘩をして以来、お互いに隠し事はやめようってことになった。陽菜ちゃんの存在がちらついた時には不安にもなった。今までの私ならあの時点ですぐに茉紀に相談していただろう。
しかし、私が泣きながら陽菜ちゃんについて尋ね、あまねくんは全てのことを包み隠さず語ってくれた。
あまねくんにとって不利なことも、もしかしたら私に嫌われるんじゃないかなんて思いながら、涙ながらに本当のあまねくんを見せてくれた。
私は彼を心から信用しているし、彼になら全てを打ち明けてもいいと思っている。いつの間にか私も生活の中心はあまねくんになってしまっていたのだ。
「そういうことだよ。自分のことは気にならなくても、他人のことは目につく。まあ、俺はあまねくんからタイムリーに話を聞いてたから全部知ってたけど」
「そうなんですか!?」
「そりゃそうでしょ。これでも一応君を落とすために協力した友人だからね」
何の悪びれもなくそう彼は言う。別にいいけど……別にいいけど、私と茉紀よりも深い友情を見せられているかのようでちょっと腹立たしい。
私は、かき混ぜた卵の半分を使ってオムレツを作り、半分を茶碗蒸しに使った。これはハイジさんの分。
私とあまねくんの分は綺麗に殻を洗ってから卵を割り、同じようにオムレツと茶碗蒸しを拵えた。
「だから、今回のことも茉紀ちゃんを責めないでやってよ」
「……わかってます。今1人で泣いてるわけじゃないならそれでいいです。私も茉紀が自分で解決させるまで待ちますから」
「うん。そうしてくれると助かるよ」
ハイジさんはそう言って、ようやくあまねくんに見せるような優しい笑顔を私に向けてくれた。
土曜日ということもあり、休日出勤を早く切り上げて帰宅したあまねくんは、リビングにいるハイジさんの姿を見つけて目を見開いた。
「え? 何してんの?」
「話すと長いんだ……」
ハイジさんは、ふうっと軽く息をつく。
私は皿を並べて、あまねくんにも先に食べるよう勧めた。
「え? なんか……卵料理多くない?」
席に着くや否や顔をひきつらせているあまねくんに、「だから話すと長いんだって」とハイジさんが言った。
割れた卵は全てハイジさんに使ったことは、あまねくんにも秘密にしておいた。私を泣かせた罰ですからね。ちゃんと火を通したし、大丈夫な筈だもん。
少しだけハイジさんのお腹を心配しながら、早めの晩餐を開始した。
「……そうですね」
「あまねくんと新婚生活が始まってから、色々見えてきたでしょ?」
「何がですか?」
「あまねくんの素顔? 俺はまどかちゃんよりも長く彼と一緒にいるからね。君に対する愛情が異常なことも知ってるよ」
ハイジさんはそう言ってにやりと笑う。ということは、あのコレクションや写真のことも……。クローゼットに隠してある箱の存在を思い出し、ぞっとした。
「ほら、そんな顔してる。その相手が元彼だったなら、真っ先に茉紀ちゃんに相談したでしょ? でも今はしない。それは、そんなあまねくんのことも含めてまどかちゃんが好きで、今一番信用してるのは彼だから」
「……否定はしません」
「そうなってくるとさ、茉紀ちゃんだって悲しいさ。何でもかんでも解決させるのはあまねくんで、いつの間にか頼りになる年下の旦那に親友奪われて。結婚生活をどんなふうに送っているのかの報告もないなんてさ」
ハイジさんにそう言われて、ようやく私の行動を振り返る。そういえばそうだ。私だって茉紀に何も言ってこなかった。
あまねくんとマンションで喧嘩をして以来、お互いに隠し事はやめようってことになった。陽菜ちゃんの存在がちらついた時には不安にもなった。今までの私ならあの時点ですぐに茉紀に相談していただろう。
しかし、私が泣きながら陽菜ちゃんについて尋ね、あまねくんは全てのことを包み隠さず語ってくれた。
あまねくんにとって不利なことも、もしかしたら私に嫌われるんじゃないかなんて思いながら、涙ながらに本当のあまねくんを見せてくれた。
私は彼を心から信用しているし、彼になら全てを打ち明けてもいいと思っている。いつの間にか私も生活の中心はあまねくんになってしまっていたのだ。
「そういうことだよ。自分のことは気にならなくても、他人のことは目につく。まあ、俺はあまねくんからタイムリーに話を聞いてたから全部知ってたけど」
「そうなんですか!?」
「そりゃそうでしょ。これでも一応君を落とすために協力した友人だからね」
何の悪びれもなくそう彼は言う。別にいいけど……別にいいけど、私と茉紀よりも深い友情を見せられているかのようでちょっと腹立たしい。
私は、かき混ぜた卵の半分を使ってオムレツを作り、半分を茶碗蒸しに使った。これはハイジさんの分。
私とあまねくんの分は綺麗に殻を洗ってから卵を割り、同じようにオムレツと茶碗蒸しを拵えた。
「だから、今回のことも茉紀ちゃんを責めないでやってよ」
「……わかってます。今1人で泣いてるわけじゃないならそれでいいです。私も茉紀が自分で解決させるまで待ちますから」
「うん。そうしてくれると助かるよ」
ハイジさんはそう言って、ようやくあまねくんに見せるような優しい笑顔を私に向けてくれた。
土曜日ということもあり、休日出勤を早く切り上げて帰宅したあまねくんは、リビングにいるハイジさんの姿を見つけて目を見開いた。
「え? 何してんの?」
「話すと長いんだ……」
ハイジさんは、ふうっと軽く息をつく。
私は皿を並べて、あまねくんにも先に食べるよう勧めた。
「え? なんか……卵料理多くない?」
席に着くや否や顔をひきつらせているあまねくんに、「だから話すと長いんだって」とハイジさんが言った。
割れた卵は全てハイジさんに使ったことは、あまねくんにも秘密にしておいた。私を泣かせた罰ですからね。ちゃんと火を通したし、大丈夫な筈だもん。
少しだけハイジさんのお腹を心配しながら、早めの晩餐を開始した。
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