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こんにちは赤ちゃん

【20】

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「そういうわけで、とにかく今は無事に子供達が茉紀ちゃんのもとに帰ってくるのを待ってる状態なの」

「結局、旦那さんの言ったことは、どっからどこまでが本当なんですか?」

「俺、それについてまだ聞いてないからね」

「……」

 私は、仕方なく先程茉紀の旦那さんとのやり取りを話して聞かせた。思い詰めた表情をしていたことも。

「ふーん。まあ、あの旦那が子供のことを全く想ってないわけではないと思うよ。休みの日もたまにはどこかに連れてくこともあるって言ってたし。それに、向こうの親が孫を溺愛してるなら尚更ね。
 母乳を飲まなくなって、もう出ないっていうのは茉紀ちゃんも言ってたし、一時は本当に泣けるくらい悲しかったとも言ってたけど、酒飲んで酔っぱらったらまあいいかって思えたとも言ってたよ」

 ハイジさんは、そう言ってふっと笑う。未だに1人で泣いてるんじゃないかなんて思っていたから、少しほっとした。

「立ち直り早いですね」

「いつまでも引きずらないところが茉紀ちゃんの長所でもあるからね。だからと言って、もう悲しくない、乗り越えたってわけではないと思うよ。それ以上に子供の将来のこととか、考えることが多いだけで」

「そうですよね……」

「茉紀ちゃんが離婚を選ぶのか、ちゃんと話し合って解決させるのかはわからないけど」

「茉紀は話し合う気はあるんですか?」

「茉紀ちゃんの方が冷静だと思うよ。育児をしたことない奴がいつまでも1人で2人も面倒みれるわけがないって言ってるし」

「でも、平日は旦那さんの両親が見てるんですよね?」

「だったら余計にじゃない? 腹を痛めて生んだ母親だって育児ノイローゼになったりするんだよ? いくら孫でも俺もそこまでもたないと思うけどね」

 ハイジさんはそう言って笑っている。そりゃそうだ。積極的に育児に関わろうとする旦那さんならまだしも、今まで放棄してきた人間が両親に頼らず完璧に育児や家事をこなせるとは思えない。

「だから、傷付いてはいるけど、今は待つ時なんて言って悟りを開いてるよ。不倫相手を選ぶにしたって、前妻の子供をつれていって上手くいくのか。それとも子供も茉紀ちゃんも捨てて不倫相手を選ぶのか。
 今は不倫がバレたばかりで気が動転してるから、そんな馬鹿げたことしてるけど、その内冷静になった時に茉紀ちゃんに泣きついてくると思う。その時、彼女がどうするかだよね」

「……そうですね。私、茉紀はハイジさんと今もずっと一緒にいるんだと思ってました」

「まさか。俺、夜型の人間だよ? なんならさっき起きて買い物出たとこだし。どんなに複雑なことでも、最終的に決めるのは茉紀ちゃんだからね。アドバイスはしても、それ以上には踏み込まない」

「……ハイジさんて、他人と適度な距離をとりたがりますよね」

「とりたがるっていうか、深入りはしたくないかな」

「誰にでも?」

「そうだね」

「……あまねくんに、昔ハイジさんには凄く大切な恋人がいたって聞きました」

 ハイジさんは時に親切で、時に冷たい。味方でいるようで、違うんじゃないかと思わされることもある。掴み所のないこの人が、恋人にするくらいの女性。どんな人なのだろうかと気にはなる。
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