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ファンクラブ
【23】
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「まずは見てもらった方が早いと思うんです」
千愛希さんはそう言うと、律くんが持つノートパソコンを取り上げ、こちらに持ってきた。ダイニングテーブルの席につくよう促され、奏ちゃんは手前の一番左の席へ座った。
もともと6人がけテーブルであり、テーブルとセットの椅子が対面するように3つずつ並んでいる。
奏ちゃんが座った席は、本来お義父さんが座るところ。そしてその隣に私、私の右隣に千愛希さんが座った。
私が座る席は律くん、千愛希さんが座っている場所はおばあちゃんとそれぞれ指定席である。
いつもとは違う配置に若干の違和感を抱きつつ、開かれた画面を見つめる。
穏やかなBGMが流れ、まるでこちらに向かって微笑んでいるような私の写真が浮かび上がるように写し出された。
「え……凄い」
華やかな枠取りがされており、背景は淡いピンク色で、文字は赤紫で表示されている。彩りがあまねくんが初めてプレゼントしてくれたパンプスに似ていた。
「綺麗……」
奏ちゃんでさえ、そう自然と言葉を溢している。スクロールされていくと、【本館はこちら】という文字が表示されている。
千愛希さんがそこをクリックすると、BGMがポップなものへと変わり、
〔一まどかプロフィール〕
〔意見交換場所〕
〔公式写真館〕
〔問い合わせ〕
と書かれている。
こうしてみると、デザインには拘っているが、至って普通のHPだ。
プロフィールは、昔テレビや雑誌に一部の情報として掲載されていたものだったし、写真館のページに貼り付けてある写真は、雑誌に掲載されたことのあるものであった。
プライベートで撮った覚えのある写真は、一番最初に使用されていた写真だけだ。
また、写真館の一番下には〔公式HPであり、写真使用にあたり本人の許可を得ています。肖像権の侵害には該当致しません〕と書かれている。
ちゃんと注意書きがされている辺り、色んな可能性が懸念されているように見えた。
「へぇ……けっこう凝ってるね」
私がそう言えば、千愛希さんはふふっと笑って「これってフェイクなんです」と言った。
「フェイク?」
「そうです。わざと一枚だけプライベート写真を使ったのは、誰も見たことのない今のまどかさんが見られる特別な場所だと思わせるためです。そして、本人の許可を得ていますという表示は、本人と近しい存在の者が創作したことを意味します」
「……うん、そうだね」
「この情報交換の伝言板は、このパソコンと私のスマホに同期させてあります。アクセス数とアカウントがこちらにのみ情報として表示されます」
「え!?」
「そして探しているや死、殺すなどマイナスなコメントをすると自動的にウィルスが発動し、向こうのパソコン内のデータがこちらに流れてきます」
「えぇ!?」
「まあ、ハッキングってヤツです」
千愛希さんがにっこりと笑って言えば、律くんが「クラッキングでしょ。犯罪だよ」と息を漏らした。
「悪用する気はないのよ。ただ、これはあまねくんからの要望で、まどかさんの元カレさん? から守るための機能です」
「え?」
「まどかさんの情報を何がなんでも欲しい人が中にはいるみたいですね。私もそうですが……」
なんて顔を赤らめているが、すぐに彼女は気を取り直して、「ですが、私や周くんとは違う意味で邪な考えを持つ人間も存在します。予めその人達のアクセスの経緯を辿り、パソコンに侵入してまどかさんに直接被害が出ないよう先回りするシステムです」と言った。
千愛希さんはそう言うと、律くんが持つノートパソコンを取り上げ、こちらに持ってきた。ダイニングテーブルの席につくよう促され、奏ちゃんは手前の一番左の席へ座った。
もともと6人がけテーブルであり、テーブルとセットの椅子が対面するように3つずつ並んでいる。
奏ちゃんが座った席は、本来お義父さんが座るところ。そしてその隣に私、私の右隣に千愛希さんが座った。
私が座る席は律くん、千愛希さんが座っている場所はおばあちゃんとそれぞれ指定席である。
いつもとは違う配置に若干の違和感を抱きつつ、開かれた画面を見つめる。
穏やかなBGMが流れ、まるでこちらに向かって微笑んでいるような私の写真が浮かび上がるように写し出された。
「え……凄い」
華やかな枠取りがされており、背景は淡いピンク色で、文字は赤紫で表示されている。彩りがあまねくんが初めてプレゼントしてくれたパンプスに似ていた。
「綺麗……」
奏ちゃんでさえ、そう自然と言葉を溢している。スクロールされていくと、【本館はこちら】という文字が表示されている。
千愛希さんがそこをクリックすると、BGMがポップなものへと変わり、
〔一まどかプロフィール〕
〔意見交換場所〕
〔公式写真館〕
〔問い合わせ〕
と書かれている。
こうしてみると、デザインには拘っているが、至って普通のHPだ。
プロフィールは、昔テレビや雑誌に一部の情報として掲載されていたものだったし、写真館のページに貼り付けてある写真は、雑誌に掲載されたことのあるものであった。
プライベートで撮った覚えのある写真は、一番最初に使用されていた写真だけだ。
また、写真館の一番下には〔公式HPであり、写真使用にあたり本人の許可を得ています。肖像権の侵害には該当致しません〕と書かれている。
ちゃんと注意書きがされている辺り、色んな可能性が懸念されているように見えた。
「へぇ……けっこう凝ってるね」
私がそう言えば、千愛希さんはふふっと笑って「これってフェイクなんです」と言った。
「フェイク?」
「そうです。わざと一枚だけプライベート写真を使ったのは、誰も見たことのない今のまどかさんが見られる特別な場所だと思わせるためです。そして、本人の許可を得ていますという表示は、本人と近しい存在の者が創作したことを意味します」
「……うん、そうだね」
「この情報交換の伝言板は、このパソコンと私のスマホに同期させてあります。アクセス数とアカウントがこちらにのみ情報として表示されます」
「え!?」
「そして探しているや死、殺すなどマイナスなコメントをすると自動的にウィルスが発動し、向こうのパソコン内のデータがこちらに流れてきます」
「えぇ!?」
「まあ、ハッキングってヤツです」
千愛希さんがにっこりと笑って言えば、律くんが「クラッキングでしょ。犯罪だよ」と息を漏らした。
「悪用する気はないのよ。ただ、これはあまねくんからの要望で、まどかさんの元カレさん? から守るための機能です」
「え?」
「まどかさんの情報を何がなんでも欲しい人が中にはいるみたいですね。私もそうですが……」
なんて顔を赤らめているが、すぐに彼女は気を取り直して、「ですが、私や周くんとは違う意味で邪な考えを持つ人間も存在します。予めその人達のアクセスの経緯を辿り、パソコンに侵入してまどかさんに直接被害が出ないよう先回りするシステムです」と言った。
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