23 / 208
友人の悩み
【23】
しおりを挟む
「はっきり言ってくれてありがとう」
私がそう言えば「当たり前でしょ? でも、まどかさんが1人の時にまたくると困るから、暫く実家にでも行く?」と言った。
現在建築中の家は、今月中には完成予定だ。それでもあと数週間このマンションに住み続けるのは少し怖いような気がした。
「そうしようかな……。何か、引越ばかりしてるね」
ふっと笑って言えば、「ね。望まない引っ越しばかりね。でも、家が完成したら今度こそ2人だけのお家だよ。あ、3人か」そうあまねくんは私のお腹を撫でながら言った。
家を建てたらもう引っ越しはできない。今までの経験から、他人に住所を知られないよう、気をつけて生活をしようと思った。
「さーて、ご飯食べよう、ご飯」
うーんと伸びをするあまねくんの後に続き、私達は夕食にした。
あまねくんがお風呂に入っている間に、私は伊織くんに返信をした。連絡は普通にしていいからってあまねくんが言ってたし。
彼が何を考えているかわからないけれど、奏ちゃんの仕事に関わっている以上、蔑ろにできない。
〔友達としてならいいけど、奏ちゃんに酷いことするのはやめてほしい。大切な妹なの。何かしたら許せないよ〕
苛立ちもあり、そう送った。直ぐに返信があった。
〔そんなに怒らないで下さい。まどかさんと会えて嬉しくて、また前みたいに少しお話ししたかっただけなんです。奏ちゃんは大切な仕事仲間なので、酷い扱いをするつもりはありません。誤解させてすみませんでした〕
〔お願いね。約束守ってね〕
〔俺もあなたに嫌われたくないので、ちゃんと約束は守ります〕
その文章を読んで、深い溜め息をついた。嫌われたくないのでって、既にちょっと嫌いだよ。
心の中でそう呟く。
そのまま返信はせず、その日は眠りについた。
翌朝目覚めると、私は朝食の準備に取りかかった。魚を焼いている内にスマホを開くと、伊織くんからメッセージが届いていた。
〔おはようございます。今日は東京に戻ります。打ち合わせをして、夜は俳優の中西賢人と食事です〕
中西賢人? 知らないなぁなんて思いながらインターネットで検索すると、今話題の若手俳優だった。ドラマやバラエティーで引っ張りだこのイケメンだ。
「ふーん。今、こういう子が人気なんだ」
「何が?」
「わぁー!」
画面に集中していた私は、あまねくんが起きてきたことに気付かなかった。
「……朝から男の裸見て、何してんの?」
たまたま一覧で出てきた画像を順番に見ていたのが上半身裸の写真だったのだ。何もいやらしい意味で見ていたわけではない。
「ち、違うよ! 昨日言った伊織くんが、今日中西賢人って俳優さんと食事だって言ってたから、どんな人なのかなぁって思って検索してたんだよ!」
「へぇ。でも、裸じゃなくてよくない?」
「だ、だ、だから! たまたま開いてたのが裸だっただけで……」
「本当?」
「本当!」
「男の裸に飢えてるなら、俺いつでも脱ぐよ? そんな貧相な体より、俺の方がよくない?」
そう言ってその場でスウェットを脱ぎ捨てるあまねくん。しっかりした胸筋に、割れた腹筋。ボクサーパンツの上から腹直筋が顔を出している。
子供ができてから、こんなにまじまじとあまねくんの裸をみたことなどなかった。
久しぶりにみたしっかりと鍛えられた裸体に、顔を赤らめずにはいられない。
冷蔵庫横の壁まで追い詰められ、頭の横にあまねくんの腕が置かれる。首から鎖骨までのラインがとても綺麗で、私の頬を撫でる綺麗な指も視線に入る。
「触りたくなったらいつでも言ってよ? 俺の体はまどかさんのものだよ?」
「わ、わかった、わかったから服着て!」
「んー? ドキドキする?」
「……ドキドキする」
熱くなった顔を背ければ、顎を固定されて、唇を奪われた。2、3度啄むようにキスをされ、ヌルッと熱い舌が侵入してくる。
なんか、こういうの久しぶりかも……。
胸の鼓動がドクドクと激しく高鳴って、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
私がそう言えば「当たり前でしょ? でも、まどかさんが1人の時にまたくると困るから、暫く実家にでも行く?」と言った。
現在建築中の家は、今月中には完成予定だ。それでもあと数週間このマンションに住み続けるのは少し怖いような気がした。
「そうしようかな……。何か、引越ばかりしてるね」
ふっと笑って言えば、「ね。望まない引っ越しばかりね。でも、家が完成したら今度こそ2人だけのお家だよ。あ、3人か」そうあまねくんは私のお腹を撫でながら言った。
家を建てたらもう引っ越しはできない。今までの経験から、他人に住所を知られないよう、気をつけて生活をしようと思った。
「さーて、ご飯食べよう、ご飯」
うーんと伸びをするあまねくんの後に続き、私達は夕食にした。
あまねくんがお風呂に入っている間に、私は伊織くんに返信をした。連絡は普通にしていいからってあまねくんが言ってたし。
彼が何を考えているかわからないけれど、奏ちゃんの仕事に関わっている以上、蔑ろにできない。
〔友達としてならいいけど、奏ちゃんに酷いことするのはやめてほしい。大切な妹なの。何かしたら許せないよ〕
苛立ちもあり、そう送った。直ぐに返信があった。
〔そんなに怒らないで下さい。まどかさんと会えて嬉しくて、また前みたいに少しお話ししたかっただけなんです。奏ちゃんは大切な仕事仲間なので、酷い扱いをするつもりはありません。誤解させてすみませんでした〕
〔お願いね。約束守ってね〕
〔俺もあなたに嫌われたくないので、ちゃんと約束は守ります〕
その文章を読んで、深い溜め息をついた。嫌われたくないのでって、既にちょっと嫌いだよ。
心の中でそう呟く。
そのまま返信はせず、その日は眠りについた。
翌朝目覚めると、私は朝食の準備に取りかかった。魚を焼いている内にスマホを開くと、伊織くんからメッセージが届いていた。
〔おはようございます。今日は東京に戻ります。打ち合わせをして、夜は俳優の中西賢人と食事です〕
中西賢人? 知らないなぁなんて思いながらインターネットで検索すると、今話題の若手俳優だった。ドラマやバラエティーで引っ張りだこのイケメンだ。
「ふーん。今、こういう子が人気なんだ」
「何が?」
「わぁー!」
画面に集中していた私は、あまねくんが起きてきたことに気付かなかった。
「……朝から男の裸見て、何してんの?」
たまたま一覧で出てきた画像を順番に見ていたのが上半身裸の写真だったのだ。何もいやらしい意味で見ていたわけではない。
「ち、違うよ! 昨日言った伊織くんが、今日中西賢人って俳優さんと食事だって言ってたから、どんな人なのかなぁって思って検索してたんだよ!」
「へぇ。でも、裸じゃなくてよくない?」
「だ、だ、だから! たまたま開いてたのが裸だっただけで……」
「本当?」
「本当!」
「男の裸に飢えてるなら、俺いつでも脱ぐよ? そんな貧相な体より、俺の方がよくない?」
そう言ってその場でスウェットを脱ぎ捨てるあまねくん。しっかりした胸筋に、割れた腹筋。ボクサーパンツの上から腹直筋が顔を出している。
子供ができてから、こんなにまじまじとあまねくんの裸をみたことなどなかった。
久しぶりにみたしっかりと鍛えられた裸体に、顔を赤らめずにはいられない。
冷蔵庫横の壁まで追い詰められ、頭の横にあまねくんの腕が置かれる。首から鎖骨までのラインがとても綺麗で、私の頬を撫でる綺麗な指も視線に入る。
「触りたくなったらいつでも言ってよ? 俺の体はまどかさんのものだよ?」
「わ、わかった、わかったから服着て!」
「んー? ドキドキする?」
「……ドキドキする」
熱くなった顔を背ければ、顎を固定されて、唇を奪われた。2、3度啄むようにキスをされ、ヌルッと熱い舌が侵入してくる。
なんか、こういうの久しぶりかも……。
胸の鼓動がドクドクと激しく高鳴って、胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる