214 / 253
お付き合いすることになりまして
24
しおりを挟む
グレン・ブラウンのピアノを聴き、昼寝までさせてもらって有意義な時間を過ごして帰宅した。
母親も、ちゃんと誰とどこへ行くと報告する夕映の言葉を信用していた。世話になった旭の同期。それも9つも年が離れている。母でさえもそれが恋愛の類だなんて思っていなかった。
帰宅後、嬉しそうにグレン・ブラウンの話をした夕映。その姿を見て、母も夜天は面倒見のいい医師だと信じて疑わなかった。
それなのに旭はいい顔をしない。お母さんはいいって言ったのに……なんでだろう。そんなことをモヤモヤと考える。
「あの、お家に行くのはよくないことですか?」
「……そんなことないよ。お互いちゃんと友達だって思ってるなら。2人共、付き合ってる人はいないわけだし」
「……はい」
そうは言うものの、褒められたことではないということくらいはさすがに理解した。そこで夕映はようやく思う。家に行っただけでこの反応。泊まっただなんて言ったらもっと怪訝な顔をされるかもしれない。そんなふうに。
「……別に責めてるわけじゃないよ。ちょっと驚いただけ。家に行くくらい仲が良いんだって」
「私、聴きたい曲があって……夜天さんがレコードを持ってるから聴かせてくれるって言ってくれたんです……」
「ああ、そういえば彼は古いレコードが好きだったね」
「初めて見たんです、蓄音機。こんなに大っきいの」
夕映は両手を左右いっぱいに広げた。同時に目もクリっと大きくなる。その子供のようなあどけない表情に、旭はようやくクスリと笑った。
全く夜天を男性として意識していないように見えて、ほんの少し安心した。
夕映は急に顔を伏せて、「先生、私……先週は夜天さんとパジャマパーティーしたんです」と言った。
言ったらいけない気がした。けれど、言わなかったら嘘をつくことになって、余計に後ろめたい気持ちになりそうだった。
「パジャマパーティー? パジャマって……泊まったの?」
「……はい」
「……付き合うことにしたんだ?」
旭は安心したのも束の間、途端に動揺した。喜んで来てくれたから、まだ自分のことを好きなものだと思い込んでいた。夜天よりも先に会いたい。そう思ったのに、2人の関係は既にもっと遠いところにあったのだと絶望にも似た感覚が押し寄せる。
「いえ……付き合ってないです。お友達です」
「は? え? ……ちょっと、言ってる意味がわかんないんだけど……」
「友達は、パジャマパーティーをするものだと思ってたんです。男の人のお家に泊まりに行くのは危ないけど、夜天さんは私が荻乃先生のこと好きなの知ってるし、私のこと子供だし友達だって言ったから……他の男の人は怖いけど、夜天さんなら安心だと思って……」
衝撃の告白に旭は自分の耳を疑った。
母親も、ちゃんと誰とどこへ行くと報告する夕映の言葉を信用していた。世話になった旭の同期。それも9つも年が離れている。母でさえもそれが恋愛の類だなんて思っていなかった。
帰宅後、嬉しそうにグレン・ブラウンの話をした夕映。その姿を見て、母も夜天は面倒見のいい医師だと信じて疑わなかった。
それなのに旭はいい顔をしない。お母さんはいいって言ったのに……なんでだろう。そんなことをモヤモヤと考える。
「あの、お家に行くのはよくないことですか?」
「……そんなことないよ。お互いちゃんと友達だって思ってるなら。2人共、付き合ってる人はいないわけだし」
「……はい」
そうは言うものの、褒められたことではないということくらいはさすがに理解した。そこで夕映はようやく思う。家に行っただけでこの反応。泊まっただなんて言ったらもっと怪訝な顔をされるかもしれない。そんなふうに。
「……別に責めてるわけじゃないよ。ちょっと驚いただけ。家に行くくらい仲が良いんだって」
「私、聴きたい曲があって……夜天さんがレコードを持ってるから聴かせてくれるって言ってくれたんです……」
「ああ、そういえば彼は古いレコードが好きだったね」
「初めて見たんです、蓄音機。こんなに大っきいの」
夕映は両手を左右いっぱいに広げた。同時に目もクリっと大きくなる。その子供のようなあどけない表情に、旭はようやくクスリと笑った。
全く夜天を男性として意識していないように見えて、ほんの少し安心した。
夕映は急に顔を伏せて、「先生、私……先週は夜天さんとパジャマパーティーしたんです」と言った。
言ったらいけない気がした。けれど、言わなかったら嘘をつくことになって、余計に後ろめたい気持ちになりそうだった。
「パジャマパーティー? パジャマって……泊まったの?」
「……はい」
「……付き合うことにしたんだ?」
旭は安心したのも束の間、途端に動揺した。喜んで来てくれたから、まだ自分のことを好きなものだと思い込んでいた。夜天よりも先に会いたい。そう思ったのに、2人の関係は既にもっと遠いところにあったのだと絶望にも似た感覚が押し寄せる。
「いえ……付き合ってないです。お友達です」
「は? え? ……ちょっと、言ってる意味がわかんないんだけど……」
「友達は、パジャマパーティーをするものだと思ってたんです。男の人のお家に泊まりに行くのは危ないけど、夜天さんは私が荻乃先生のこと好きなの知ってるし、私のこと子供だし友達だって言ったから……他の男の人は怖いけど、夜天さんなら安心だと思って……」
衝撃の告白に旭は自分の耳を疑った。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる