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近付く距離と遠ざかる距離
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月曜日、夜天は外来の診察室で1人うーんと腕を組んで考え事をしていた。つい2日前、夕映が言ったパジャマパーティーがずっと脳裏にあったのだ。
パジャマパーティーなんて言葉を聞いたのは初めてだった。今まで付き合ったどの女性もそんなものをするとは言わなかった。
検索すればパジャマ姿で友人の家に泊まり込み、噂話や恋愛話に花を咲かせワイワイ楽しむパーティーのことだと書かれていた。中には男女問わず、なんて書かれているものもある。
嘘だろ……さすがに嘘だろ。少しずつ俺との交友関係に慣れてからって……最終的に俺んちに泊まりに来るつもりでいるのか?
パジャマ着てパーティーするだと? 旭との惚気を聞きながら、俺の隣で寝るつもりなのか? 俺のベッドで? ……アイツはバカなのか? それ以外に考えられない。バカ過ぎるだろ、何も考えてなさ過ぎるだろ。どうやったら俺とパジャマパーティーをする考えに至るんだよ。
夜天にはわけがわからなかった。最近ではすっかり夜天に心を許している様子の夕映。夜天が普通だと言えば素直にそれに従うし、仕事に関しても勉強に対しても教えてやれば前向きに取り組む。
友達になってやるとは言ったし、友達の定義は夕映に任せるとも言った。だからといってまさかここへきてパジャマパーティーがでてくるとは思いもしなかった。
さすがにそれはまずいと説明するべきか。それとも旭との距離が近付いているのなら、そこには触れず、2人が上手くいってから彼氏がいるならダメだと断ってやればいいかと色々と方法を考える。
そうこうしている内に、とっくに外来は終わっているというのに夜天はいつまで経っても病棟に戻れずにいた。
あー……くそ。こんなバカみてぇなことで何振り回されてんだよ、俺。自分が情けなく思えてくる、と夜天はまた頭を抱える。
「あれ、夜天先生ぇ? まだここにいたんですか?」
不意に後ろから甘ったるい声が聞こえ、ゾクリと鳥肌が立つ。苦手意識が体に出たことで、本能的に関わりたくないと嫌な汗が滲んだ。
「……もう戻る」
夜天はそう言って立ち上がった。しかし、ひょこっと顔をのぞき込まれ、愛らしい顔が現れた。1つ1つのパーツはどれも整っており、美しいとは思う。しかし、性格の悪さが顔に滲み出ているようで、夜天はどうも好きになれなかった。
「えー。夜天先生行っちゃうんですか?」
「仕事あるからな。橘も何でここにいるんだよ。外来は終わっただろ?」
「急外に手伝いに行ってるんですけど、忘れ物しちゃって取りに来たんです。でも、夜天先生に会えたのラッキーです」
ピッタリと体を寄せる橘杏奈に夜天は鬱陶しそうに顔をしかめた。
パジャマパーティーなんて言葉を聞いたのは初めてだった。今まで付き合ったどの女性もそんなものをするとは言わなかった。
検索すればパジャマ姿で友人の家に泊まり込み、噂話や恋愛話に花を咲かせワイワイ楽しむパーティーのことだと書かれていた。中には男女問わず、なんて書かれているものもある。
嘘だろ……さすがに嘘だろ。少しずつ俺との交友関係に慣れてからって……最終的に俺んちに泊まりに来るつもりでいるのか?
パジャマ着てパーティーするだと? 旭との惚気を聞きながら、俺の隣で寝るつもりなのか? 俺のベッドで? ……アイツはバカなのか? それ以外に考えられない。バカ過ぎるだろ、何も考えてなさ過ぎるだろ。どうやったら俺とパジャマパーティーをする考えに至るんだよ。
夜天にはわけがわからなかった。最近ではすっかり夜天に心を許している様子の夕映。夜天が普通だと言えば素直にそれに従うし、仕事に関しても勉強に対しても教えてやれば前向きに取り組む。
友達になってやるとは言ったし、友達の定義は夕映に任せるとも言った。だからといってまさかここへきてパジャマパーティーがでてくるとは思いもしなかった。
さすがにそれはまずいと説明するべきか。それとも旭との距離が近付いているのなら、そこには触れず、2人が上手くいってから彼氏がいるならダメだと断ってやればいいかと色々と方法を考える。
そうこうしている内に、とっくに外来は終わっているというのに夜天はいつまで経っても病棟に戻れずにいた。
あー……くそ。こんなバカみてぇなことで何振り回されてんだよ、俺。自分が情けなく思えてくる、と夜天はまた頭を抱える。
「あれ、夜天先生ぇ? まだここにいたんですか?」
不意に後ろから甘ったるい声が聞こえ、ゾクリと鳥肌が立つ。苦手意識が体に出たことで、本能的に関わりたくないと嫌な汗が滲んだ。
「……もう戻る」
夜天はそう言って立ち上がった。しかし、ひょこっと顔をのぞき込まれ、愛らしい顔が現れた。1つ1つのパーツはどれも整っており、美しいとは思う。しかし、性格の悪さが顔に滲み出ているようで、夜天はどうも好きになれなかった。
「えー。夜天先生行っちゃうんですか?」
「仕事あるからな。橘も何でここにいるんだよ。外来は終わっただろ?」
「急外に手伝いに行ってるんですけど、忘れ物しちゃって取りに来たんです。でも、夜天先生に会えたのラッキーです」
ピッタリと体を寄せる橘杏奈に夜天は鬱陶しそうに顔をしかめた。
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