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友達、あげようか?
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翌日も夕映は怒鳴られながら働いた。あの後、何を思ったのか夜天が暫く勉強を教えてくれたのだ。
「お前に自信がねぇからなめられるんだよ。根拠はあんだからちゃんと覚えていけ」
そう言ってビッシリとだ。かなりのスパルタで心が折れそうだったが、1人で勉強するよりも捗った気がした。
「小柳さん、澤口さんが戻ってくるから点滴の準備ね」
「は、はい!」
昨日夜勤明けだったプリセプターの遥は今日も休みでいないため、本日も昨日担当でついてもらった看護師、山本が指導していた。
夕映は震える手で物品を用意する。本日緊急入院となった90代の男性。腹痛を訴えてたった今、検査から帰ってきたばかりだ。
外来からもう点滴がなくなりそうだから準備して待っているように連絡がきたのだ。まだ何が原因で腹痛が起こっているのかわからない状態。それでも看護師達は医師の指示に従うのみ。
注射箋を見ながら文字を読み上げる。指で文字を追いながら、途中で手を止めた。
「3号……あれ?」
「何? 早くしてよ。忙しいんだから」
「あ、あの……山本さん。これ3号液ですよ?」
「だからなに? 先生の指示なんだから早く用意してよ」
「で、でもこの患者さんカリウム高かったし……」
夜天先生が言ってた。何の病気かわからない時は、開始液を入れるんだって。カリウムが入ってないから安全だって……。だから、カリウムが上がったら危ないってことでしょ? でもあの人、カリウムの数値凄く高くて……。
あっているか間違っているかはわからない。ただ、昨日の夜天の話を思い出せばこれは投与してはいけない気がした。
「は? あんた、数値なんか見てわかんの? 医者でもないくせに何様?」
「すみません……でも、大丈夫なんでしょうか……。もうなくなるって言ってたってことはもう1本は入っちゃってるってことですよね?」
「だから! 救急の先生が出した処方なんだってば! 看護師は医師の指示がなきゃ投与できないし、あんたがとやかく言うことじゃないから!」
ナースステーションの詰所で並ぶ2人。背の高い物品庫を挟んだ向こう側で、術中記録を書いていた昴が顔を上げた。
「……へぇ」
おかしそうににやりと口角を上げる。右隣にいた保が眉を上げ、「珍しい。看護師さんに関心なんかないくせに」と言った。一緒にオペに入っていた保は、入院患者の処方をオーダーしていた。
「お前に自信がねぇからなめられるんだよ。根拠はあんだからちゃんと覚えていけ」
そう言ってビッシリとだ。かなりのスパルタで心が折れそうだったが、1人で勉強するよりも捗った気がした。
「小柳さん、澤口さんが戻ってくるから点滴の準備ね」
「は、はい!」
昨日夜勤明けだったプリセプターの遥は今日も休みでいないため、本日も昨日担当でついてもらった看護師、山本が指導していた。
夕映は震える手で物品を用意する。本日緊急入院となった90代の男性。腹痛を訴えてたった今、検査から帰ってきたばかりだ。
外来からもう点滴がなくなりそうだから準備して待っているように連絡がきたのだ。まだ何が原因で腹痛が起こっているのかわからない状態。それでも看護師達は医師の指示に従うのみ。
注射箋を見ながら文字を読み上げる。指で文字を追いながら、途中で手を止めた。
「3号……あれ?」
「何? 早くしてよ。忙しいんだから」
「あ、あの……山本さん。これ3号液ですよ?」
「だからなに? 先生の指示なんだから早く用意してよ」
「で、でもこの患者さんカリウム高かったし……」
夜天先生が言ってた。何の病気かわからない時は、開始液を入れるんだって。カリウムが入ってないから安全だって……。だから、カリウムが上がったら危ないってことでしょ? でもあの人、カリウムの数値凄く高くて……。
あっているか間違っているかはわからない。ただ、昨日の夜天の話を思い出せばこれは投与してはいけない気がした。
「は? あんた、数値なんか見てわかんの? 医者でもないくせに何様?」
「すみません……でも、大丈夫なんでしょうか……。もうなくなるって言ってたってことはもう1本は入っちゃってるってことですよね?」
「だから! 救急の先生が出した処方なんだってば! 看護師は医師の指示がなきゃ投与できないし、あんたがとやかく言うことじゃないから!」
ナースステーションの詰所で並ぶ2人。背の高い物品庫を挟んだ向こう側で、術中記録を書いていた昴が顔を上げた。
「……へぇ」
おかしそうににやりと口角を上げる。右隣にいた保が眉を上げ、「珍しい。看護師さんに関心なんかないくせに」と言った。一緒にオペに入っていた保は、入院患者の処方をオーダーしていた。
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