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パーティーでは淑女を演じさせていただきます
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演技だとわかっていても、夕映は胸を高鳴らせずにはいられなかった。ドクドクと体中の血液が速く循環する。
旭の彼女だと紹介されるのはこんな気分なんだ、とさっきまでの保に対する嫉妬に似た感情もどこかへ吹っ飛んだ。
「4月からうちの病院で看護師として働くから、その挨拶に」
「へぇ、そうなんだ」
興味津々といったように大きく歯を見せて笑う保。綺麗な笑顔を見せたまま「俺は旭の同期で武内保っていうの。よろしくね」と言った。
「よろしくお願いします。4月からお世話になります」
「うん。21歳ってことは新卒生か」
「はい。まだ看護師にもなっていないのですが、就職が決まっております」
噛んでしまわないよう、いつもよりもゆっくりとしたペースで話す夕映は、旭に言われた通り必死に淑女のイメージを頭に浮かべた。
「そうか、そうか。まさか旭が学生に手を出すとは。しかも患者とは」
にまーっといやらしい笑みを浮かべた保がそっと旭に顔を向けた。ああ、やっぱり……そんな声が聞こえてきそうなほど、旭な右手で目頭を押さえて顔を伏せた。
「わ、私がしつこくお願いしたんです! 荻乃先生は悪くありません!」
夕映は思わずそう声を上げた。旭の彼女として紹介されて嬉しい反面、旭が保に誤解されるのは悔しかった。
好きな人に想いを告げられないまま、他に付き合っている人がいると紹介する旭の気持ちを考えたら急に否定したくもなったのだ。
そんな夕映に保だけでなく、旭までもが目を丸くさせた。保は眉を下げてふっと微笑むと「そっか、そっか。ごめんね。旭を悪く言うつもりはないよ。俺が無神経でした」と夕映に謝罪をした。
「あ、いえ……すみません」
盛られた皿を持ったまま頭を下げる夕映。保は優しく微笑むと「よっぽど旭のことが好きなんだね」と言った。
旭の彼女だと紹介されるのはこんな気分なんだ、とさっきまでの保に対する嫉妬に似た感情もどこかへ吹っ飛んだ。
「4月からうちの病院で看護師として働くから、その挨拶に」
「へぇ、そうなんだ」
興味津々といったように大きく歯を見せて笑う保。綺麗な笑顔を見せたまま「俺は旭の同期で武内保っていうの。よろしくね」と言った。
「よろしくお願いします。4月からお世話になります」
「うん。21歳ってことは新卒生か」
「はい。まだ看護師にもなっていないのですが、就職が決まっております」
噛んでしまわないよう、いつもよりもゆっくりとしたペースで話す夕映は、旭に言われた通り必死に淑女のイメージを頭に浮かべた。
「そうか、そうか。まさか旭が学生に手を出すとは。しかも患者とは」
にまーっといやらしい笑みを浮かべた保がそっと旭に顔を向けた。ああ、やっぱり……そんな声が聞こえてきそうなほど、旭な右手で目頭を押さえて顔を伏せた。
「わ、私がしつこくお願いしたんです! 荻乃先生は悪くありません!」
夕映は思わずそう声を上げた。旭の彼女として紹介されて嬉しい反面、旭が保に誤解されるのは悔しかった。
好きな人に想いを告げられないまま、他に付き合っている人がいると紹介する旭の気持ちを考えたら急に否定したくもなったのだ。
そんな夕映に保だけでなく、旭までもが目を丸くさせた。保は眉を下げてふっと微笑むと「そっか、そっか。ごめんね。旭を悪く言うつもりはないよ。俺が無神経でした」と夕映に謝罪をした。
「あ、いえ……すみません」
盛られた皿を持ったまま頭を下げる夕映。保は優しく微笑むと「よっぽど旭のことが好きなんだね」と言った。
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