その傷を舐めさせて

雪村こはる

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パーティーでは淑女を演じさせていただきます

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「……ちっちゃ」

 先に口を開いたのは保の方だ。夕映は、うっとたじろぐ。気にしている言葉を浴びせられ、胸に矢を放れたかのようにグサリと突き刺さった。

「ごめんね、小さくて見えなかった」

 更にグサグサっと矢が突き刺さる。夕映は気が遠くなりそうな意識をなんとか保ちつつ、「小柳夕映と申します」と頭を下げた。

「凄い若いよね?」

「21歳です」

「若っ!」

 目を丸くさせた保がまじまじと顔を近付けて夕映を見つめた。吸い込まれてしまいそうなほど綺麗な瞳に、夕映は後退った。

 ひゃー……心臓に悪い。荻乃先生もとんでもないイケメンだけど、こっちも系統は違えど整いすぎたイケメンだ。

 心の中でそう叫ぶ夕映にお構いなしの保は「誰と来たの?」と眩しい笑顔を見せた。その瞬間、旭が恋に落ちるのも納得できる気がした。

 異性だろうと同性だろうと、この人の手にかかれば皆コロッといっちゃうな。

 そう思って一瞬眉間に皺を寄せるが、すぐにその後ろに立っている旭を見つめた。

「俺が連れてきたんだ」

 保が離れたことで、少し冷静さを取り戻した旭がそう言った。夕映の視線に合わせて膝を曲げていた保がすっと立ち上がり、後ろを振り返る。

「そうなんだ。彼女なの?」

 保は平然とそう尋ねた。てっきり妹か親戚かと言われるものだと思っていた夕映は、ドキリと息を飲んだ。さらりとそんな言葉が出てくるところも魅力なんだろうなと思いながら旭の言葉を待った。

「うん。あまり公にはできないんだけど」

 そう苦笑した旭に、保は面白そうに顔を綻ばせた。新しいオモチャを見つけたような、子供のように嬉しそうな笑顔だ。

「なになに、どういうこと?」

「元々俺の患者さんで……」

「え!? ……本当?」

 保は旭と目を合わせ、大きく瞳を見開いたまま視線を夕映に移した。
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