その傷を舐めさせて

診察は手術の後で

06

「歩く時には看護師さんが説明してくれるからね。でも、無理はしないように」

　そう念を押された夕映は、ゆっくり頷いた。今日は歩いて、明日はご飯。そう頭の中でスケジュールを確認した。
　尿道留置カテーテルも今日の内に抜いてもらえる。そう思ったら途端に気が楽になった。ベッドの側面に自分の尿が溜められているだなんていい気はしない。そう顔をしかめる。

　看護師と共に病室を出ていく希星の後ろ姿を見ながら、今日も綺麗だったな……と心の中で呟いた。

　2月の下旬となり、夕映が就職する日も刻一刻と迫っている。心構えをしていた国家試験も先週終わったばかりだった。
　看護師の国家試験はマーキングシートによるもの。問題によって4択だったり5択だったりするのだが、必修問題50問と一般問題が130問、状況問題が60問ある。合格のボーダーラインは平均値以上となるため、毎年合格の点数は異なるが、必修問題が40点以上正解していないと、一般問題がどんなに高得点であったとしても不合格となる。
　だから夕映も、試験までの3日間は必修問題に集中して勉強を重ねた。

　帰りのバス内ではインターネットで速報が出ており、凡その解答が公開されていた。しかし、これがまたサイトによって解答が異なるため、あくまでも目安にしかならない。
　それでも何度か自己採点をすると、必修問題は通過していた。あとは一般、状況問題だけだが、250点中の200点は取れていたので受かっているはずだと胸を撫で下ろした。
　1点ずつの必修問題、一般問題とは違い1問2点の状況問題は落とすとかなりの痛手になるが、夕映の場合はそちらで多く加点されているようだった。