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第二章 二品目 リンゴの”くるくる”
7 迷子
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「うわ、いつもの倍額……」
最寄りのスーパーについてすぐにリンゴの売り場を見つけた竹志は、思わずそう呟いてしまった。
今は夏場。リンゴのシーズンオフだ。手に入らないわけではないが、どうしても値段が張ってしまう。
思わず手がぷるぷる震えてしまう竹志だったが……ぐっと、腹に力を込めた。
「うううぅん……でも、サプライズのため……! 高級肉よりはずっと安い!」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、竹志はリンゴを一つ、カゴに入れた。
本当に覚悟を決めるのは会計の時のはずだが……今の竹志にはそんなことも思いつかない。何故なら、リンゴを買う決心はしたものの、件の”くるくる”の正体については何もわかっていないのだから。
改めて、カゴの中のリンゴを見つめてみる。
「くるくる……きっと巻くんだよなぁ」
竹志は、色々な案をイメージしてみる。
リンゴを何かで巻くというのなら、いったい何を巻きつけるのか。肉か、野菜か? それとももっと別のものか? もしくはリンゴで何かを巻くのか?
後者は、すぐに否定できた。リンゴはかじるのは容易だが、何かに巻き付けるほどのしなやかさは持ち合わせていない。無理に巻こうとすると簡単に割れてしまうだろう。
「いや、皮なら巻けるか……でもそれなら剥かずに丸かじりすればいいか。じゃあやっぱり何かを巻くのかな……何を巻くんだろう?」
思考がそのまま声に出ていることも気付かず、竹志はぐるぐる考えを巡らせていた。ああでもないこうでもない、あれならどうだこれならどうだと、堂々巡りに陥って、結局何も良い案が浮かばない。
底なし沼にでもはまったかのような感覚を覚えて、竹志はふと、大きく息を吐き出した。そして、何か懐かしいような気がした。
(ああ、そうだ。初めて『はてなのレシピノート』の料理を作った時みたいだ)
あの時も、レシピに書かれた情報と目の前に並ぶ品々を見て、アレコレ思案したものだ。
「うん、ここでリンゴだけ見て唸ってても仕方ないな。とりあえず店の中を見て回ろうか。そしたら何かわかるかも……って、あれ?」
自分にしっかり着いてきていたはずの天に問いかけた。元気な返事が聞こえるものと思っていたが、何も聞こえない。それどころか姿も見えない。
「え……ええええぇ!? ど、どこ!? 天ちゃん、どこ行った!?」
キョロキョロ周囲を見回したが、それらしい人影は見えない。そもそも小さいので、大人が大勢いればすぐに見えなくなってしまう。
しかも今、竹志がいるのは店の入り口近くの青果コーナー。ちょっと歩けばすぐに店から出ることが出来てしまう。
竹志は青ざめながら、開け放たれているドアから出た。やはり、あの小さな姿は見えない。竹志はドアを出たすぐ傍の場所にいた、買い物カゴを整理している店員に駆け寄った。
「あの……男の子、見ませんでしたか? これくらいの身長の……」
竹志が自分の腰より少し低いくらいの場所を示して尋ねると、店員はうーんと考え込んでいた。
「いえ、見てないです。まだ店内にいるんじゃないでしょうか。お客さん、さっきもここを通られましたよね? 一緒にいた男の子、それから後は見かけていないので」
「そうですか。ありがとうございます……!」
幸いにもその店員は自分たちが通ったことを覚えていてくれたらしい。その目撃証言に背中を押されて、竹志は店内に戻った。
この中にいるなら、まだ希望はある。
竹志はずんずん歩きながら、棚を一列ずつ、奥まで見通して、進んでいった。
最寄りのスーパーについてすぐにリンゴの売り場を見つけた竹志は、思わずそう呟いてしまった。
今は夏場。リンゴのシーズンオフだ。手に入らないわけではないが、どうしても値段が張ってしまう。
思わず手がぷるぷる震えてしまう竹志だったが……ぐっと、腹に力を込めた。
「うううぅん……でも、サプライズのため……! 高級肉よりはずっと安い!」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、竹志はリンゴを一つ、カゴに入れた。
本当に覚悟を決めるのは会計の時のはずだが……今の竹志にはそんなことも思いつかない。何故なら、リンゴを買う決心はしたものの、件の”くるくる”の正体については何もわかっていないのだから。
改めて、カゴの中のリンゴを見つめてみる。
「くるくる……きっと巻くんだよなぁ」
竹志は、色々な案をイメージしてみる。
リンゴを何かで巻くというのなら、いったい何を巻きつけるのか。肉か、野菜か? それとももっと別のものか? もしくはリンゴで何かを巻くのか?
後者は、すぐに否定できた。リンゴはかじるのは容易だが、何かに巻き付けるほどのしなやかさは持ち合わせていない。無理に巻こうとすると簡単に割れてしまうだろう。
「いや、皮なら巻けるか……でもそれなら剥かずに丸かじりすればいいか。じゃあやっぱり何かを巻くのかな……何を巻くんだろう?」
思考がそのまま声に出ていることも気付かず、竹志はぐるぐる考えを巡らせていた。ああでもないこうでもない、あれならどうだこれならどうだと、堂々巡りに陥って、結局何も良い案が浮かばない。
底なし沼にでもはまったかのような感覚を覚えて、竹志はふと、大きく息を吐き出した。そして、何か懐かしいような気がした。
(ああ、そうだ。初めて『はてなのレシピノート』の料理を作った時みたいだ)
あの時も、レシピに書かれた情報と目の前に並ぶ品々を見て、アレコレ思案したものだ。
「うん、ここでリンゴだけ見て唸ってても仕方ないな。とりあえず店の中を見て回ろうか。そしたら何かわかるかも……って、あれ?」
自分にしっかり着いてきていたはずの天に問いかけた。元気な返事が聞こえるものと思っていたが、何も聞こえない。それどころか姿も見えない。
「え……ええええぇ!? ど、どこ!? 天ちゃん、どこ行った!?」
キョロキョロ周囲を見回したが、それらしい人影は見えない。そもそも小さいので、大人が大勢いればすぐに見えなくなってしまう。
しかも今、竹志がいるのは店の入り口近くの青果コーナー。ちょっと歩けばすぐに店から出ることが出来てしまう。
竹志は青ざめながら、開け放たれているドアから出た。やはり、あの小さな姿は見えない。竹志はドアを出たすぐ傍の場所にいた、買い物カゴを整理している店員に駆け寄った。
「あの……男の子、見ませんでしたか? これくらいの身長の……」
竹志が自分の腰より少し低いくらいの場所を示して尋ねると、店員はうーんと考え込んでいた。
「いえ、見てないです。まだ店内にいるんじゃないでしょうか。お客さん、さっきもここを通られましたよね? 一緒にいた男の子、それから後は見かけていないので」
「そうですか。ありがとうございます……!」
幸いにもその店員は自分たちが通ったことを覚えていてくれたらしい。その目撃証言に背中を押されて、竹志は店内に戻った。
この中にいるなら、まだ希望はある。
竹志はずんずん歩きながら、棚を一列ずつ、奥まで見通して、進んでいった。
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