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第3章 泥まみれの宝

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 ルクレール王国の王都は、明るい日差しに照らされていた。
 街では人々が店開きの準備をして、賑やかな声があがり、煙突から香ばしい香りがする煙が立ち上り始めている。

 人々は暮らしが乏しくなる中でも、明るさを失わないよう努めていた。

 だが、その中心にあって、最もきらびやかな佇まいの王宮は、重苦しい空気に包まれていた。

 重臣会議の最中であり、皆、険しい面持ちを互いに向けていた。集まっているのはこの国の名だたる貴族たち。国王を筆頭に、リュシアン王太子、宰相リール公爵など……この国の舵取りがこの場で決まる。

 とりわけ今は、税の徴収、およびそのための国内の状況と今後の予算について議論する場だった。だが重臣たちに呼ばれてきた役人が、いつもの役目通り報告の数字を読み上げると、皆黙り込み、やがて一人が声を荒らげた。

「これはいったいどういうことだ!」

 びくりと身を震わせる役人を見て、皆顔を見合わせて困惑していた。
 怒りの矛先を向けられた哀れな男を庇ったのは、誰あろう国王だった。

「この者を怒鳴ったところで何にもなるまいよ。この者は、ただ各地から上がってきた報告の数字をまとめただけなのだからな」
「しかし陛下……! この税の納付量はあまりにも酷い。例年の半分にも満たないではありませんか。これではいざと言うときの備蓄どころか、冬を越すことすらも……」
「わかっておる。その『やりくり』について思案するのが、この会議の本題ではないのか?」

 国王はそう言って重臣を宥め、文官には退出を命じた。室内に留まっている重臣たちは、誰も皆、苦い表情を浮かべている。

 そんな中、誰かの小さな呟きが、静かな室内に響いた。

「聖女の『恵み』は、どうしたのだ……!」 

 その言葉にぴくりと反応を示したのは、リュシアンが最初だった。

「彼女は……アネットはまだ聖女としての務めを始めて日が浅い。少しのことは目を瞑ってもらいたい」
「先代……王妃殿下は、聖女となられたその日からこの国全てを太陽の如く照らしてこられました。歴史を紐解いても、聖女となられた御方は皆、幼い頃よりその力を示してこられ、交代によって衰えが見られた例など、ただの一度もないではありませんか!」
「だが彼女の力は本物だ。お前たちも見ただろう? そして認めたではないか!」
「我々は彼女が花を咲かせたから承認したのではない。その力を以て、国民に遍く『恵み』を……富と繁栄をもたらしてくれるとあなたが説得したから……だから頷いたのだ。これでは話が違う!」
 
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