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第2章 芋聖女と呼ばないで

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 アベルに連れられ、屋敷の中をどこまでも歩いたような気がした。
 てっきり村に出かけるのだと思ったのに、何故か館の中を歩き続けている。長い廊下を歩き、どこかの部屋に着いたと思うと、室内にはさらに地下へと続く階段があった。

「足下に気をつけろ」

 アベルがランタンで照らしながら、階段を下った。
 
 地下への階段は、肌寒かった。外もひんやりしていたが、地下ともなるとさらに冷え込んでいる。

 その上、ランタンがないと一歩先すら見えない。

 慎重に下っていくと、アベルは小さなドアを開けた。
 ようやく、明るい場所に出た。といってもランタンの灯りで照らせる程度ではあるが。

「レオナール、準備を頼む」
「はい」

 レオナールに指示を出すと、アベルはレティシアを室内に招き入れた。そして、大きな機械の前にある椅子に座らせた。

「あれ? この機械……」

 機械は、古びて湿っぽいこの部屋に似合わず、ピカピカに磨き上げられたように光っていて、とても立派で豪奢に見えた。
 
 魔力が籠もって光る大きな魔石が設置されている。

 貴族の邸宅でも王宮でも見ない珍しいものだが、レティシアは、この機械に見覚えがあった。

 少しだけ違うのは、魔石の向こう側に長い管が何本も走り、その間に魔力が流れていることだ。

「ああ、そうか。やはり使ったことがあるか」
「はい。でもこれは、教会で祈りを捧げるものじゃあ……?」
「は?……まぁいい。使ったことがあるなら、同じようにやってみろ」

 アベルは事もなげに「早く」と急かしてくる。
 レティシアはおそるおそる、装置の魔石に向けて祈りを捧げた。いつも、そうしていたからだ。

 すると急に魔石が煌々と光り出した。レティシアの身に秘められた魔力に呼応するかのように。

 そして魔石の方に向かって、レティシアの魔力がゆっくりと流れていった。畑に向けていたようにゆっくりと、少しずつ。細い糸を手繰りながら巻き取っているかのような感覚を覚えていた。

 手繰られていった魔力はやがて細い管に吸い込まれていき、やがて先端に置かれた小瓶に、小さな雫となってこぼれ落ちた。

 透き通る空のような、真っ青な雫だった。

「これって……?」
「お前の魔力だ」
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