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第1章 偽聖女じゃありません!
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「ど、ど、どうしましょう……」
レティシアは焦っていた。数日前にリュシアンに追い詰められた時など目じゃないくらいに。
頭を抱えていると、隣の部屋から侍女のネリーが飛び込んできた。
「お嬢様、大丈夫ですか? いったい何が……!?」
ネリーは常にレティシアの傍に控える侍女。そのため、続きの間で寝起きをしている。この部屋の惨状の影響が及んでいたと言うことらしい。
だが子供の頃からの付き合いなだけはある。室内の惨状と、床に転がる鉢を見比べて、すぐに合点がいったようだった。
「あぁ……なるほど」
ネリーの瞳が物言わずとも語っていた。レティシアが昨日思いついた企みのせいだと。
「ち、違うのよネリー。決してわざとじゃないわ。ちょっと力が入りすぎたというか……ね?」
「ええ、わかっております。お嬢様なりの深いお考えから、ちょっと《・・・・》熱が籠もりすぎたんですよね」
「そ、そうなのよ。ちょっと力が入り過ぎちゃったわ。あははは」
「……思うに、この芋……昨日お嬢様の魔力を吸って急速生長したものですよね。そこにまた魔力を受けたから必要以上に大きくなったのでは……?」
「う、う~ん……」
レティシアとしては、魔力を注ぐときはいつも『大きくなってほしい』とそればかり思っている。それだけなのに……いや、そのせいで、部屋はレティシアの魔力を思うさま吸って大きく生長したじゃがいもの蔓や葉に覆い尽くされてしまっていた。扉の鍵穴まで塞がれてしまうほどに、隙間なく。
ひたすらに蔓や葉が大きくなりすぎたせいか、茎につくはずの芋はまだ付いてないらしい。それだけは救いのようにも思えるが、この光景にはレティシアも頭を抱えずにはいられなかった・
「や、やり過ぎた……!」
「お嬢様、あれだけ魔術の知識も技量もお有りなのに、神聖術の方はどうしてこう、制御がきかないのです? 次期聖女なのに」
「仕方ないじゃない。魔術は毎年100人以上が修めるけれど、神聖術は先人が少ないんだもの」
あれこれ言い訳をしていても、時間はいつもと平等に過ぎていく。気付けば、閉ざされた扉の向こうから、コツコツと控えめなノックの音が聞こえてきた。
「お嬢様、おはようございます。朝食のご用意が整いました」
普段ならば起床してすべての準備を整えて、朝食に向かう時刻だった。だが今日は、今は、出来ない。なぜなら扉が開けられないから。
レティシアは焦っていた。数日前にリュシアンに追い詰められた時など目じゃないくらいに。
頭を抱えていると、隣の部屋から侍女のネリーが飛び込んできた。
「お嬢様、大丈夫ですか? いったい何が……!?」
ネリーは常にレティシアの傍に控える侍女。そのため、続きの間で寝起きをしている。この部屋の惨状の影響が及んでいたと言うことらしい。
だが子供の頃からの付き合いなだけはある。室内の惨状と、床に転がる鉢を見比べて、すぐに合点がいったようだった。
「あぁ……なるほど」
ネリーの瞳が物言わずとも語っていた。レティシアが昨日思いついた企みのせいだと。
「ち、違うのよネリー。決してわざとじゃないわ。ちょっと力が入りすぎたというか……ね?」
「ええ、わかっております。お嬢様なりの深いお考えから、ちょっと《・・・・》熱が籠もりすぎたんですよね」
「そ、そうなのよ。ちょっと力が入り過ぎちゃったわ。あははは」
「……思うに、この芋……昨日お嬢様の魔力を吸って急速生長したものですよね。そこにまた魔力を受けたから必要以上に大きくなったのでは……?」
「う、う~ん……」
レティシアとしては、魔力を注ぐときはいつも『大きくなってほしい』とそればかり思っている。それだけなのに……いや、そのせいで、部屋はレティシアの魔力を思うさま吸って大きく生長したじゃがいもの蔓や葉に覆い尽くされてしまっていた。扉の鍵穴まで塞がれてしまうほどに、隙間なく。
ひたすらに蔓や葉が大きくなりすぎたせいか、茎につくはずの芋はまだ付いてないらしい。それだけは救いのようにも思えるが、この光景にはレティシアも頭を抱えずにはいられなかった・
「や、やり過ぎた……!」
「お嬢様、あれだけ魔術の知識も技量もお有りなのに、神聖術の方はどうしてこう、制御がきかないのです? 次期聖女なのに」
「仕方ないじゃない。魔術は毎年100人以上が修めるけれど、神聖術は先人が少ないんだもの」
あれこれ言い訳をしていても、時間はいつもと平等に過ぎていく。気付けば、閉ざされた扉の向こうから、コツコツと控えめなノックの音が聞こえてきた。
「お嬢様、おはようございます。朝食のご用意が整いました」
普段ならば起床してすべての準備を整えて、朝食に向かう時刻だった。だが今日は、今は、出来ない。なぜなら扉が開けられないから。
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