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恋人編ー3年生前期
星とともに光れ -出陣-
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動きやすくて温度調節できる格好、荷物は少なめ……
璃央にアドバイスを貰って初のバンドライブの準備を整え、開場時刻に合わせてライブハウスまでやってきた。やっぱり璃央と一緒に来てよかった。ライブには何回か行ったことがあるらしく、慣れてるみたいだ。ドリンク代別で要るとか初心者殺しだろ。
「準備はいいな」
「うん」
「よし、敵陣に乗り込むぞ! 打倒、一条鷹夜!」
「なんかノリが違う!」
中に入ると、全体的に若い大学生くらいの女の子が多かった。同じ大学の人も多そう。男の割合は少ない。きゃっきゃとしている女の子たちはおそらく一条が言ってた顔ファンかな、と予想できる。本当に好きで見にきてる人もいるんだろうけど……一条は真剣に音楽作りしていたのに、顔だけを目当てにってのは……いや、わからないこともないんだけど、なんだかな……
「璃央はレグルスのMV見たりした?」
「見てねえ。見たらムカつくし」
だろうなあ……
「つかコメントだけ見たら、一条鷹夜の顔のことばっかで萎えた。他人の先入観で見るより自分の目で見て確かめる。和真と仲良くなったのはムカつくけど、この規模のライブするってことは本気でやってんだろ。そこをバカにしたりはしねえ」
真っ直ぐステージを見つめる璃央の瞳が透き通って見えて、あ、俺は璃央のこういうところが好きなんだ、ってストンと腑に落ちた。他にもたくさんあるけど、相手が真剣に好きって言ってるものを否定しないところ。強くて、かっこいい。
「和真?」
「いや……璃央のこと好きだなって思った」
「えっ、このタイミングで? どのへんが?」
「いっぱい……」
「詳しく教えろよ!」
むうっ!と口を尖らしている。可愛い。
すると、全体の照明が暗くなった。観客みんなが会話をやめて会場が静まりかえったとき、ステージに人影が見えた。カチャカチャ、と楽器を用意する音がする。
始まる……!
静かなギターのイントロが聴こえ、すぅ、と息の吸う音がマイクを通る。その瞬間にステージが明るく照らされ、凄みのある演奏に変わった。真ん中に立った一条は閉じていた目を開き、歌声を響かせた。
「う、わぁ……!」
思わず声が漏れる。目の前で演奏される音楽は、MVで見るよりも迫力があって綺麗に輝いて見えた。全身で音を浴びてる感じ! ライブってすげえ!
見入っているうちに数曲が終わった。
次はMCみたいだ。
「みんな、今日は来てくれてありがとーごさいます!」
真剣な歌声から一転、人懐っこい声が届いた。一条は手を高くあげて全体に見えるように大きく振る。女の子たちからは「かっこいい!」「生の鷹夜やばーい!」と声が聞こえるが、隣にいる璃央は……
「くそ……」
と、睨みつけている。こんな顔、他のお客さんやバンドメンバーには見せられない。客席暗いし、後ろの方だしよかった。というか璃央の顔だってミーハー女子に見られたら大変なことになるしな。
「鷹夜以外も覚えて帰ってねー」
「鷹夜を支えてるのは俺らです」
「お前らの演奏をさらに良くしてんのは俺の歌だぞ」
「ステージで喧嘩すんな」
4人の掛け合いに、観客からも笑いが起こる。バンドってMCでも休まずにこうやって盛り上げてるんだ。
そしてMCは進み、
「次はなんと、新曲でーす! しかもラブソング!」
新曲という言葉に会場がワッと盛り上がる。バンドメンバーも軽く楽器を鳴らして盛り上げに加わっている。
「星の光は小さいけど、月光や街灯に負けても、昼の太陽の陽の中でも必ず空にある。喧嘩したり嫌になることがあっても、星の光みたいに好きって気持ちは消えたりしない……みたいな感じの曲!」
「こんな説明してるけど、詞は完ペキなんだよな」
「んで俺は毎回、こういう風にしてほしいってフィーリング無茶振り作曲を振られるわけ」
「でも作曲も完ペキなんだよな」
「それじゃあ次の曲……『星とともに光れ』!」
一条が曲名を言うと、照明が明るく楽しげなものになった。ラブソングということもあり、他の曲よりアップテンポ。でも星が優しく煌めいて降りそそぐ感じや、儚さと明るさのバランスがちょうどいい。頑張って作ったんだろうな。いい曲だ……
あ、一条と目が合った……
と思ったら、こっちに向かって投げキスが飛んできた。周りの子たちはキャーーッと黄色い声をあげる。ファンサすげえな、アイドルみたいだ。感心していると、璃央はわなわなしながら俺と一条を見比べ、俺だけに聞こえるように耳打ちをした。
「今の投げキス、和真にしてきた!!!」
「いやいや、パフォーマンスだって。ラブソングだし」
「あのヤロウ……オレだってしたことないのに……!」
「そこ?」
開始から約2時間後、無事にライブは終わった。
結論、初めてのライブ、楽しかった! 周りの熱気やライブノリにはちょっとついていけなかったけど……いい経験ができたなと思う。チケットくれてありがとう、一条……またなんかお礼しよう。でも「それより感想だ」とか言ってきそうだな。
ライブの間もだったけど、会場を出てからも、隣を歩く璃央はなんだかずっと不貞腐れている。
「璃央、楽しかった?」
「……む……」
まあ無理矢理付き合わせたみたいなもんだし、璃央は一条のこと敵視してて嫌いっぽいし……
「やっぱり嫌だった……よな? 付き合わせてごめんな」
「ちがう!」
璃央は足を止め、俺を真っ直ぐ見た。
「オレは和真がいれば、場所なんてどこだっていい! ……でも、それ抜きにしても……わりと楽しくて、盛り上げるのも演出も上手かったし……なんか……」
だんだん声が小さくなって、目も逸れていく。たぶん、すごいって認めたい気持ちとか嫉妬とか、いろんな感情がいっぱいになって、微妙な顔してたんだ……
再び歩き始めた璃央に追いつく。
「良かったから、複雑なんだ?」
「そう……曲もわりと好きだったし……」
「な! いい曲だよな」
「くそ、そうでもないライブだったら口ほどでもないな一条鷹夜って言ってやろうと思ってたのに。ライブに文句つけれるとこねぇじゃん」
あれこれ言ってるけど、楽しんでくれたみたいでよかった。一条にも璃央の感想伝えたら喜んでくれるだろうな。
「文句があるのは、こっちに対して異常に投げキスやウインクが多かったこと」
「たまたま正面にいたからじゃない?」
「いーや、絶対狙ってやってる。あいつと関わるときは油断すんなよ」
一条、そんな裏表あるようには見えないけどな……でも璃央が心配してるし、気に留めておこう。
「一条鷹夜の話はもうやめだ。よっしゃラブホ行くぞ!」
今日の璃央の中でいちばんテンション高くなってて、張り切ってる。
「ラブホに行くテンションじゃないな」
「ん? じゃあもっとエローく誘ってやんよ」
えっ、とたじろいだ肩を取られ、耳もとに唇を寄せられた。
「2週間分、たっぷり気持ちよくなろうなぁ♡」
エロ声で囁かれて、耳に軽くキスまでされたらもうダメだ。なんだこいつエロすぎる。
「~~~~! 璃央!」
「はっはっは、照れてんの! 耐性ねえなあ!」
ステージの上の明るいスポットライトじゃない、無機質な街灯の光の下でも、意地悪に舌を出して笑う璃央はそれはそれは綺麗で、息が詰まった。
……ボーッと見惚れていたら、腹が鳴った。璃央は「あぁ」と口を開ける。
「そういや晩飯食ってなかったな。オレも腹減った」
「だなぁ」
「ラブホ直行したいけど、せっかくだし美味いもんでも食いに行くか!」
「いいよ。どこ行く?」
璃央はスマホを取り出してマップアプリを開いた。タプタプと入力し、画面に表示されたのは……
「ライブ後はラーメンだろ!」
「ラーメン!」
「ここ、オレの好きなラーメン屋。そこそこ近いし、和真と一緒に食べたことないから、行きたい」
注文した豚骨ラーメンが目の前に運ばれてきた。濃いめのスープの匂いが食欲をそそる。
「美味い!」
「だろ。和真と食べれて嬉しい」
ライブで汗かいたからか、塩分がいつにも増して美味く感じる。それに、久しぶりに璃央と一緒にご飯を食べるからってのもあるだろうな。つい、正面に座る璃央を見ながら食べ進めてしまう。なんでラーメン食べてるだけなのに、こんな綺麗なんだろ……世界って不思議だ……
すると、テーブルに置いていた俺のスマホが鳴った。画面には一条からの電話の表示が。璃央がいち早く反応した。
「一条鷹夜から!?」
「え、なんで? どうしよ、出ていい?」
ダメって言うだろうな……と予想しながら璃央の様子を伺う。眉間に皺を寄せて考え込み、やがて顔を上げた。
「いいぞ。出ろ」
「意外……」
「まあオレも聞くけどな」
その場を立った璃央は俺の隣に座って、着信を取ったスマホに耳を寄せた。
『もしもし、和真?』
「一条、お疲れ。あっ、ライブすごかった!」
『お、サンキュな。こっちは解散したとこでさあ。今ちょっといいか?』
ぴっとりくっついて聞き耳を立てている璃央をチラッと見る。顔全体で嫌悪の表情を作りながら、指で丸を示してくれた。
「うん、大丈夫」
『和真、今どこいる?』
「ラーメン食ってる」
『いいなー、ラーメン。俺も行っていい?』
「え!?」
今は璃央と一緒だし……「ふたりきりの時間邪魔されてたまるか、適当に理由つけて断れ!」とか言うに決まってる……!
と思ったのに、璃央にスマホを奪われた。
「来いよ、お前には言いたいことが山ほどあんだ!」
喧嘩モードかい~~~~~~!!
『お? もしかして和真の隣にいた子?』
「チッ、やっぱこっちに気づいて投げキスしてきたろ」
『どこのラーメン屋いんの?』
「流すな! ……まあこの話は直で会ってからたっぷりしてやるよ」
ラーメン屋の場所を伝えた璃央は電話を切った。
「り、璃央……何言うつもり!?」
「よっしゃ、待つ間に炒飯と餃子追加だ。来いや、一条鷹夜!」
「まだ食うの!?」
璃央にアドバイスを貰って初のバンドライブの準備を整え、開場時刻に合わせてライブハウスまでやってきた。やっぱり璃央と一緒に来てよかった。ライブには何回か行ったことがあるらしく、慣れてるみたいだ。ドリンク代別で要るとか初心者殺しだろ。
「準備はいいな」
「うん」
「よし、敵陣に乗り込むぞ! 打倒、一条鷹夜!」
「なんかノリが違う!」
中に入ると、全体的に若い大学生くらいの女の子が多かった。同じ大学の人も多そう。男の割合は少ない。きゃっきゃとしている女の子たちはおそらく一条が言ってた顔ファンかな、と予想できる。本当に好きで見にきてる人もいるんだろうけど……一条は真剣に音楽作りしていたのに、顔だけを目当てにってのは……いや、わからないこともないんだけど、なんだかな……
「璃央はレグルスのMV見たりした?」
「見てねえ。見たらムカつくし」
だろうなあ……
「つかコメントだけ見たら、一条鷹夜の顔のことばっかで萎えた。他人の先入観で見るより自分の目で見て確かめる。和真と仲良くなったのはムカつくけど、この規模のライブするってことは本気でやってんだろ。そこをバカにしたりはしねえ」
真っ直ぐステージを見つめる璃央の瞳が透き通って見えて、あ、俺は璃央のこういうところが好きなんだ、ってストンと腑に落ちた。他にもたくさんあるけど、相手が真剣に好きって言ってるものを否定しないところ。強くて、かっこいい。
「和真?」
「いや……璃央のこと好きだなって思った」
「えっ、このタイミングで? どのへんが?」
「いっぱい……」
「詳しく教えろよ!」
むうっ!と口を尖らしている。可愛い。
すると、全体の照明が暗くなった。観客みんなが会話をやめて会場が静まりかえったとき、ステージに人影が見えた。カチャカチャ、と楽器を用意する音がする。
始まる……!
静かなギターのイントロが聴こえ、すぅ、と息の吸う音がマイクを通る。その瞬間にステージが明るく照らされ、凄みのある演奏に変わった。真ん中に立った一条は閉じていた目を開き、歌声を響かせた。
「う、わぁ……!」
思わず声が漏れる。目の前で演奏される音楽は、MVで見るよりも迫力があって綺麗に輝いて見えた。全身で音を浴びてる感じ! ライブってすげえ!
見入っているうちに数曲が終わった。
次はMCみたいだ。
「みんな、今日は来てくれてありがとーごさいます!」
真剣な歌声から一転、人懐っこい声が届いた。一条は手を高くあげて全体に見えるように大きく振る。女の子たちからは「かっこいい!」「生の鷹夜やばーい!」と声が聞こえるが、隣にいる璃央は……
「くそ……」
と、睨みつけている。こんな顔、他のお客さんやバンドメンバーには見せられない。客席暗いし、後ろの方だしよかった。というか璃央の顔だってミーハー女子に見られたら大変なことになるしな。
「鷹夜以外も覚えて帰ってねー」
「鷹夜を支えてるのは俺らです」
「お前らの演奏をさらに良くしてんのは俺の歌だぞ」
「ステージで喧嘩すんな」
4人の掛け合いに、観客からも笑いが起こる。バンドってMCでも休まずにこうやって盛り上げてるんだ。
そしてMCは進み、
「次はなんと、新曲でーす! しかもラブソング!」
新曲という言葉に会場がワッと盛り上がる。バンドメンバーも軽く楽器を鳴らして盛り上げに加わっている。
「星の光は小さいけど、月光や街灯に負けても、昼の太陽の陽の中でも必ず空にある。喧嘩したり嫌になることがあっても、星の光みたいに好きって気持ちは消えたりしない……みたいな感じの曲!」
「こんな説明してるけど、詞は完ペキなんだよな」
「んで俺は毎回、こういう風にしてほしいってフィーリング無茶振り作曲を振られるわけ」
「でも作曲も完ペキなんだよな」
「それじゃあ次の曲……『星とともに光れ』!」
一条が曲名を言うと、照明が明るく楽しげなものになった。ラブソングということもあり、他の曲よりアップテンポ。でも星が優しく煌めいて降りそそぐ感じや、儚さと明るさのバランスがちょうどいい。頑張って作ったんだろうな。いい曲だ……
あ、一条と目が合った……
と思ったら、こっちに向かって投げキスが飛んできた。周りの子たちはキャーーッと黄色い声をあげる。ファンサすげえな、アイドルみたいだ。感心していると、璃央はわなわなしながら俺と一条を見比べ、俺だけに聞こえるように耳打ちをした。
「今の投げキス、和真にしてきた!!!」
「いやいや、パフォーマンスだって。ラブソングだし」
「あのヤロウ……オレだってしたことないのに……!」
「そこ?」
開始から約2時間後、無事にライブは終わった。
結論、初めてのライブ、楽しかった! 周りの熱気やライブノリにはちょっとついていけなかったけど……いい経験ができたなと思う。チケットくれてありがとう、一条……またなんかお礼しよう。でも「それより感想だ」とか言ってきそうだな。
ライブの間もだったけど、会場を出てからも、隣を歩く璃央はなんだかずっと不貞腐れている。
「璃央、楽しかった?」
「……む……」
まあ無理矢理付き合わせたみたいなもんだし、璃央は一条のこと敵視してて嫌いっぽいし……
「やっぱり嫌だった……よな? 付き合わせてごめんな」
「ちがう!」
璃央は足を止め、俺を真っ直ぐ見た。
「オレは和真がいれば、場所なんてどこだっていい! ……でも、それ抜きにしても……わりと楽しくて、盛り上げるのも演出も上手かったし……なんか……」
だんだん声が小さくなって、目も逸れていく。たぶん、すごいって認めたい気持ちとか嫉妬とか、いろんな感情がいっぱいになって、微妙な顔してたんだ……
再び歩き始めた璃央に追いつく。
「良かったから、複雑なんだ?」
「そう……曲もわりと好きだったし……」
「な! いい曲だよな」
「くそ、そうでもないライブだったら口ほどでもないな一条鷹夜って言ってやろうと思ってたのに。ライブに文句つけれるとこねぇじゃん」
あれこれ言ってるけど、楽しんでくれたみたいでよかった。一条にも璃央の感想伝えたら喜んでくれるだろうな。
「文句があるのは、こっちに対して異常に投げキスやウインクが多かったこと」
「たまたま正面にいたからじゃない?」
「いーや、絶対狙ってやってる。あいつと関わるときは油断すんなよ」
一条、そんな裏表あるようには見えないけどな……でも璃央が心配してるし、気に留めておこう。
「一条鷹夜の話はもうやめだ。よっしゃラブホ行くぞ!」
今日の璃央の中でいちばんテンション高くなってて、張り切ってる。
「ラブホに行くテンションじゃないな」
「ん? じゃあもっとエローく誘ってやんよ」
えっ、とたじろいだ肩を取られ、耳もとに唇を寄せられた。
「2週間分、たっぷり気持ちよくなろうなぁ♡」
エロ声で囁かれて、耳に軽くキスまでされたらもうダメだ。なんだこいつエロすぎる。
「~~~~! 璃央!」
「はっはっは、照れてんの! 耐性ねえなあ!」
ステージの上の明るいスポットライトじゃない、無機質な街灯の光の下でも、意地悪に舌を出して笑う璃央はそれはそれは綺麗で、息が詰まった。
……ボーッと見惚れていたら、腹が鳴った。璃央は「あぁ」と口を開ける。
「そういや晩飯食ってなかったな。オレも腹減った」
「だなぁ」
「ラブホ直行したいけど、せっかくだし美味いもんでも食いに行くか!」
「いいよ。どこ行く?」
璃央はスマホを取り出してマップアプリを開いた。タプタプと入力し、画面に表示されたのは……
「ライブ後はラーメンだろ!」
「ラーメン!」
「ここ、オレの好きなラーメン屋。そこそこ近いし、和真と一緒に食べたことないから、行きたい」
注文した豚骨ラーメンが目の前に運ばれてきた。濃いめのスープの匂いが食欲をそそる。
「美味い!」
「だろ。和真と食べれて嬉しい」
ライブで汗かいたからか、塩分がいつにも増して美味く感じる。それに、久しぶりに璃央と一緒にご飯を食べるからってのもあるだろうな。つい、正面に座る璃央を見ながら食べ進めてしまう。なんでラーメン食べてるだけなのに、こんな綺麗なんだろ……世界って不思議だ……
すると、テーブルに置いていた俺のスマホが鳴った。画面には一条からの電話の表示が。璃央がいち早く反応した。
「一条鷹夜から!?」
「え、なんで? どうしよ、出ていい?」
ダメって言うだろうな……と予想しながら璃央の様子を伺う。眉間に皺を寄せて考え込み、やがて顔を上げた。
「いいぞ。出ろ」
「意外……」
「まあオレも聞くけどな」
その場を立った璃央は俺の隣に座って、着信を取ったスマホに耳を寄せた。
『もしもし、和真?』
「一条、お疲れ。あっ、ライブすごかった!」
『お、サンキュな。こっちは解散したとこでさあ。今ちょっといいか?』
ぴっとりくっついて聞き耳を立てている璃央をチラッと見る。顔全体で嫌悪の表情を作りながら、指で丸を示してくれた。
「うん、大丈夫」
『和真、今どこいる?』
「ラーメン食ってる」
『いいなー、ラーメン。俺も行っていい?』
「え!?」
今は璃央と一緒だし……「ふたりきりの時間邪魔されてたまるか、適当に理由つけて断れ!」とか言うに決まってる……!
と思ったのに、璃央にスマホを奪われた。
「来いよ、お前には言いたいことが山ほどあんだ!」
喧嘩モードかい~~~~~~!!
『お? もしかして和真の隣にいた子?』
「チッ、やっぱこっちに気づいて投げキスしてきたろ」
『どこのラーメン屋いんの?』
「流すな! ……まあこの話は直で会ってからたっぷりしてやるよ」
ラーメン屋の場所を伝えた璃央は電話を切った。
「り、璃央……何言うつもり!?」
「よっしゃ、待つ間に炒飯と餃子追加だ。来いや、一条鷹夜!」
「まだ食うの!?」
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