7 / 16
国王の一人娘
しおりを挟む
栄華を極めた国王がいた。他国との戦争でも負けなし。無類の強さを誇っていた。そんな彼が治める国は文字通り、天国に一番近い国と称されるほど誰もが羨む富に満ちていた。
全てを手にいれた国王。若い頃は、自分が惚れた女は例え人妻であろうと、その旦那を殺してでも奪い取るほど傲慢だった。そんな彼も年を取り、幾分丸くなってきた。そんなある日、王が久しぶりに小躍りするほど嬉しい出来事があった。王妃が待望の赤ん坊をその身に宿したのだ。国民全員が祝福する中、その王の娘は何不自由なく成長した。
しかし、娘がちょうど7歳になった頃から徐々に異変が起こり始める。
突然、原因不明の発作を起こした娘が、獣のような姿で人間を襲うようになった。娘は、世話人を惨殺。食い散らかした。しかし、発作が収まるとまた元の可愛らしい少女に戻った。
国王と妃は国中の医者を呼び、何とかして娘を治そうとした。しかし、娘の発作は良くなるどころか、どんどん悪化していき、遂に治療に来た医者まで襲うようになった。王に似てワガママだったが、心は弱い娘は、そんな今の自分の状態に耐えきれなくなり、遂に護衛を切り裂き、城を抜け出した。
自分の死に場所を求めて。
元々、金の使い方すら知らないこの少女はすぐに途方にくれ、力尽き、霧に包まれた深い森の中で迷子になってしまった。
「もう……死にたい。ここで」
獣の姿と成り果てた少女は、枯れ葉の上にドサッと受け身もとらずに倒れた。死神が首を狩りに来るのを静かに待っていると、下手な鼻歌を歌いながらこっちに向かってくる男の子に気づいた。背負っているリュックは、少年の背丈の二倍以上もある。
一瞬、目があった獣の少女と不思議な少年。
「へぇー、めずらしい。ベリカリストじゃん。生きてる奴は、初めて見た。すげぇー」
少年は、目をキラキラさせて近づいてきた。
「あな…た……」
私が、恐くないの?
「もう大丈夫だよ。青龍の涙があるから」
少年は、巨大なリュックから青白く輝く
小さな瓶を取り出すと、その瓶ごと私の牙が生えた口の中に放り込んだ。吐き出す元気もない私は、その瓶を飲み干すと、ゆっくり……ゆっくり……ゆっく…りと夢に落ちた。
………………………。
………………。
…………。
久しぶりに目を開けると、私は元の姿に戻っていた。ずっと苦しかった頭痛もしない。
少年は、優しく笑うとまたリュックを背負って、その場から去ろうとした。
「ベリカリスト………。獣化は、黒魔法の一種。キミ、可哀想だけど誰かに相当恨まれてるね。しばらく、気をつけたほうがいいよ」
「あなた……?」
「僕は、ニート。本当は、さっきの青龍の涙さ……。死ぬほど苦労して採取したから、うんとお金もらいたかったけど………。君、僕以上に貧乏で文無しみたいだから今回はサービスするよ」
少年は、駆けるように走ると霧の中に消えた。
私は、自分の足で城に戻るとパパとママに先ほどの不思議な体験を全て話した。怒ったパパが兵隊を引き連れ、私に呪いをかけた犯人をすぐに見つけ出した。その犯人、メイド長を生きたまま、弱火でじわじわと火炙りにした。そのあとパパは、私を救ってくれた男の子を探そうとしたけど、私は名前すら知らないから、それは無理だと嘘をついた。
だって、彼は私の手で見つけ出すから。
必ず。
だからもう少し待っててね。
Myダーリン。
全てを手にいれた国王。若い頃は、自分が惚れた女は例え人妻であろうと、その旦那を殺してでも奪い取るほど傲慢だった。そんな彼も年を取り、幾分丸くなってきた。そんなある日、王が久しぶりに小躍りするほど嬉しい出来事があった。王妃が待望の赤ん坊をその身に宿したのだ。国民全員が祝福する中、その王の娘は何不自由なく成長した。
しかし、娘がちょうど7歳になった頃から徐々に異変が起こり始める。
突然、原因不明の発作を起こした娘が、獣のような姿で人間を襲うようになった。娘は、世話人を惨殺。食い散らかした。しかし、発作が収まるとまた元の可愛らしい少女に戻った。
国王と妃は国中の医者を呼び、何とかして娘を治そうとした。しかし、娘の発作は良くなるどころか、どんどん悪化していき、遂に治療に来た医者まで襲うようになった。王に似てワガママだったが、心は弱い娘は、そんな今の自分の状態に耐えきれなくなり、遂に護衛を切り裂き、城を抜け出した。
自分の死に場所を求めて。
元々、金の使い方すら知らないこの少女はすぐに途方にくれ、力尽き、霧に包まれた深い森の中で迷子になってしまった。
「もう……死にたい。ここで」
獣の姿と成り果てた少女は、枯れ葉の上にドサッと受け身もとらずに倒れた。死神が首を狩りに来るのを静かに待っていると、下手な鼻歌を歌いながらこっちに向かってくる男の子に気づいた。背負っているリュックは、少年の背丈の二倍以上もある。
一瞬、目があった獣の少女と不思議な少年。
「へぇー、めずらしい。ベリカリストじゃん。生きてる奴は、初めて見た。すげぇー」
少年は、目をキラキラさせて近づいてきた。
「あな…た……」
私が、恐くないの?
「もう大丈夫だよ。青龍の涙があるから」
少年は、巨大なリュックから青白く輝く
小さな瓶を取り出すと、その瓶ごと私の牙が生えた口の中に放り込んだ。吐き出す元気もない私は、その瓶を飲み干すと、ゆっくり……ゆっくり……ゆっく…りと夢に落ちた。
………………………。
………………。
…………。
久しぶりに目を開けると、私は元の姿に戻っていた。ずっと苦しかった頭痛もしない。
少年は、優しく笑うとまたリュックを背負って、その場から去ろうとした。
「ベリカリスト………。獣化は、黒魔法の一種。キミ、可哀想だけど誰かに相当恨まれてるね。しばらく、気をつけたほうがいいよ」
「あなた……?」
「僕は、ニート。本当は、さっきの青龍の涙さ……。死ぬほど苦労して採取したから、うんとお金もらいたかったけど………。君、僕以上に貧乏で文無しみたいだから今回はサービスするよ」
少年は、駆けるように走ると霧の中に消えた。
私は、自分の足で城に戻るとパパとママに先ほどの不思議な体験を全て話した。怒ったパパが兵隊を引き連れ、私に呪いをかけた犯人をすぐに見つけ出した。その犯人、メイド長を生きたまま、弱火でじわじわと火炙りにした。そのあとパパは、私を救ってくれた男の子を探そうとしたけど、私は名前すら知らないから、それは無理だと嘘をついた。
だって、彼は私の手で見つけ出すから。
必ず。
だからもう少し待っててね。
Myダーリン。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる