明日は、晴れますか?

カラスヤマ

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国王の一人娘

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栄華を極めた国王がいた。他国との戦争でも負けなし。無類の強さを誇っていた。そんな彼が治める国は文字通り、天国に一番近い国と称されるほど誰もが羨む富に満ちていた。
全てを手にいれた国王。若い頃は、自分が惚れた女は例え人妻であろうと、その旦那を殺してでも奪い取るほど傲慢だった。そんな彼も年を取り、幾分丸くなってきた。そんなある日、王が久しぶりに小躍りするほど嬉しい出来事があった。王妃が待望の赤ん坊をその身に宿したのだ。国民全員が祝福する中、その王の娘は何不自由なく成長した。
しかし、娘がちょうど7歳になった頃から徐々に異変が起こり始める。
突然、原因不明の発作を起こした娘が、獣のような姿で人間を襲うようになった。娘は、世話人を惨殺。食い散らかした。しかし、発作が収まるとまた元の可愛らしい少女に戻った。
国王と妃は国中の医者を呼び、何とかして娘を治そうとした。しかし、娘の発作は良くなるどころか、どんどん悪化していき、遂に治療に来た医者まで襲うようになった。王に似てワガママだったが、心は弱い娘は、そんな今の自分の状態に耐えきれなくなり、遂に護衛を切り裂き、城を抜け出した。

自分の死に場所を求めて。

元々、金の使い方すら知らないこの少女はすぐに途方にくれ、力尽き、霧に包まれた深い森の中で迷子になってしまった。

「もう……死にたい。ここで」

獣の姿と成り果てた少女は、枯れ葉の上にドサッと受け身もとらずに倒れた。死神が首を狩りに来るのを静かに待っていると、下手な鼻歌を歌いながらこっちに向かってくる男の子に気づいた。背負っているリュックは、少年の背丈の二倍以上もある。

一瞬、目があった獣の少女と不思議な少年。

「へぇー、めずらしい。ベリカリストじゃん。生きてる奴は、初めて見た。すげぇー」

少年は、目をキラキラさせて近づいてきた。

「あな…た……」

私が、恐くないの?

「もう大丈夫だよ。青龍の涙があるから」

少年は、巨大なリュックから青白く輝く
小さな瓶を取り出すと、その瓶ごと私の牙が生えた口の中に放り込んだ。吐き出す元気もない私は、その瓶を飲み干すと、ゆっくり……ゆっくり……ゆっく…りと夢に落ちた。

………………………。
………………。
…………。

久しぶりに目を開けると、私は元の姿に戻っていた。ずっと苦しかった頭痛もしない。

少年は、優しく笑うとまたリュックを背負って、その場から去ろうとした。

「ベリカリスト………。獣化は、黒魔法の一種。キミ、可哀想だけど誰かに相当恨まれてるね。しばらく、気をつけたほうがいいよ」

「あなた……?」

「僕は、ニート。本当は、さっきの青龍の涙さ……。死ぬほど苦労して採取したから、うんとお金もらいたかったけど………。君、僕以上に貧乏で文無しみたいだから今回はサービスするよ」

少年は、駆けるように走ると霧の中に消えた。

私は、自分の足で城に戻るとパパとママに先ほどの不思議な体験を全て話した。怒ったパパが兵隊を引き連れ、私に呪いをかけた犯人をすぐに見つけ出した。その犯人、メイド長を生きたまま、弱火でじわじわと火炙りにした。そのあとパパは、私を救ってくれた男の子を探そうとしたけど、私は名前すら知らないから、それは無理だと嘘をついた。

だって、彼は私の手で見つけ出すから。

必ず。


だからもう少し待っててね。

Myダーリン。
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