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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その104 扇風機戦争!?

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「そろそろ夏休みだね~」
「そうですね~」

 僕は望子先輩とともに扇風機の目の前に座って涼んでいた。
 扇風機の一番強い風にしていても部室全体に届くことはないため、こうして僕たちは扇風機を占領していたのだ。

「おい、ケン後輩に望子。俺たちのほうに風が来ないだろ。もっと離れろよ」
「ええー。いーじゃん別にー。涼みたかったからこっちに来ればいいじゃーん」

 ぷくー、と頬を膨らませながら望子先輩は抗議した。……流石はマイペース。自分さえよければ周りのことなんか知らんぷりだ。それが望子先輩らしい。
 しかし、この暑さだからか路世先輩も負けてはいなかった。……いや、そもそも彼女が望子先輩に負けることはないだろうが。

「よーし、お前がそういうんだったら……こうしてやるわっ!」
「ああー! 私の扇風機がぁー!!」

 路世先輩はなんと、僕と望子先輩から扇風機を取り上げたのだ。……鬼だ。この暑さを扇風機なしで頑張れと言っているのだ。まさしく鬼だ!

「扇風機を占領していたお前たちに言われたくはないわ!」
「でも、暑いですよ?」
「だからって、扇風機を占領しない! ただでさえこの部室は暑いんだからよぉ!」

 そう。この部室にはクーラーなんてものはないし、この前生徒会から貰ったもう一台の扇風機は望子先輩が壊してしまったのだ。
 ……借りて早々に壊すだなんて、生徒会に言いにくかったのでそのままにしているが……扇風機一台でこの部室全体を快適にするのは不可能なことだった。

「元はと言えば、望子が扇風機を壊すからだろ!? だったら壊した張本人はその扇風機で過ごすことだな!」
「ええー……。路世ちゃん鬼すぎるよぉー……」
「鬼で結構! お前はそろそろその性格をどうにか治してもらわんとな」

 路世先輩も望子先輩のそのマイペースな性格にカンカンのようだ。……まぁいつものことだし、どうせすぐに忘れているだろうけれども。

「……暑苦しいです」

 ちぃはそう、部室の唯一の日陰にちょこんと座ったまま、そう呟いた。その姿はまるで置物のようで、ピクリとも動こうとはしなかった。

「ぐぬぬ……。あ、そうだ! 折角こんな暑いんだし、生徒会に頼んでプール掃除でもやろうよ!」
「大会が近いってのに、お前はよくもそんなこと言えたもんだなぁ……?」

 ビキビキ、となにかが悲鳴をあげるような音とともに路世先輩は望子先輩を見下ろしていた。確かに望子先輩の案は最高だが、今の僕らは「どん・だー」の真っ最中。そんな中、一日も練習を止めることはできない状況だった。

「別にいいでしょ。一日くらい休んでもさ! たまには休息も必要だと思うよ」

 望子先輩の言い分も分かる。最近、僕らは大会にばかり目がいっていて休息も取らずにずっと練習に励んでいた。
 確かに練習も必要ではあるが、たまには気分をリフレッシュするためにも休息は必要ではないかと思った。

「ま……まぁ確かに、このまま練習が続いてぶっ倒れられても困るしな……。分かったよ。明日はオフにしよう」
「やったーっ! じゃ私、早速生徒会に聞いてみるねー」

 と、望子先輩は颯爽と部室を出ていった。部室に取り残された僕と路世先輩とちぃは口を揃えてこう言った。

「……あいつ、行動だけはホントに早いよな」
「……望子先輩、行動だけは早いですよね」
「……望子さん、行動だけは本当に早いですよね」
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