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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その98 青春の定義

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「それで、今日はまたどうして各部活動の見回りなんかしてるのかしら?」

 と、隣を歩く一夜に尋ねられる。私はその問いに答えを返すことはなかった。
 今日は特に仕事がないわけでもないが、部活動の見回りをしておこうかと思ったのだ。
 こういう時に限って、よくないことが起こることが多い。……虫の知らせってやつなのだろうか。

「でもまぁ、こうしてみると色んな部活があるものよね」

 と、まるで独り言のように呟く一夜。
 確かにこの学校は部活動が活発で、いろんな部活動が多い。野球とサッカーだけかと思いきや、ラグビーやフットサル、はたまた男子ソフトボールなど。男子の屋外スポーツの部活と言うだけでこれだけの部活動が上げられるのだ。
 それほど、この学校は部活動に精を入れている。それは生徒会である私も承知の上だった。ただでさえ生徒会が人手不足だというのに、部活動は増える一方なのだからたまったものではない。
 何故かムダに増えていく生徒会の仕事。それにはこの部活動の増加が原因だからだ。それに加え、存続の部活からは毎度のことながら「部費が少ない」と言われ続けるのだ。
 そりゃそうだ。他に部活が増えていくのだから部費が少し少なくなるのは仕方のないことだ。それに部費が少なくなるのはたかが一か月だけの話。来月からはちゃんと新規の部活込みで全部活動の部費が入ってくるので元通りになる。
 そういう点も踏まえ、私は部活動が増えていくのには反対だった。

「いいよねー。私も部活に入って青春の汗を流したいわー」
「……どうせアンタのことよ。三日で根を上げるに決まってるわ」

 夢見がちな一夜に現実を思い知らせてやる。一夜は部活に入ってみたいとは口にするものの、身体が全然追い付いていけずにすぐに根を上げるのがいつものパターンだった。私と太鼓を叩いていた時も実際そうだったから。

「でも、それでも青春の一ページに部活動やってたって記録を残しておきたいじゃない? 努力、友情、勝利! って」
「……アンタまたなんかの漫画に影響でもされた?」

 馬鹿馬鹿しいセリフを吐く一夜を見ながら、私はため息を漏らさずにはいられなかった。きっとコイツは昨日遅くまで少年漫画でも見ていたのだろう。そのせいでこんなことを口走っているに違いない。

「えへへ……。やっぱりバレてた?」
「アンタと一体何年の付き合いだと思ってるのよ。そのくらいの考えはお見通しよ」

 肩をすくめながらそう返す。
 青春の汗……。それはもう私には無縁のものだった。
 私は一度コイツとともに「どん・だー」を目指してともに切磋琢磨したのだ。どれだけの時間をかけて血の滲むような練習をしてきたのかなんて覚えていない。
 しかしそれを私はこの手でチャラにしてしまったのだ。自分で始めたにも関わらず。
 それ以来私は、部活動をやりたいとは思ったこともないし、もう私には青春とかそんな少年漫画のようなことをする資格はなかった。
 自分で作り上げた部活ですら、自分で崩壊させてしまうのだから……。

「…………」

 もし、あの時に戻れたならば私は……あの時と同じ選択をするのだろうか。
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