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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その91 突然の来訪者!?

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 とうとう予選二回戦が迫ってきていたとある日の出来事。
 僕は望子先輩と迫る予選の話をしながら休息を摂っていた。

「いよいよですね……」
「そうだねー」

 いつになくのほほんとしている望子先輩。やはり予選二回戦とあるだけ、もう緊張もほぐれているのだろうか。
 ……というか、望子先輩に緊張という概念があるのかでさえも分からない。
 この人はいつもマイペースだからか、緊張したところを一度も見た事がないような気がした。

「先輩はどう思いますか? 勝てると思いますか?」
「うーん……」

 僕の問いかけに望子先輩は顎に手を当てている。
 僕は相手側の実力を知らないわけだし、今の僕らの状態で戦って勝てるのかどうかさえも分からない。
 だからこそ、望子先輩に聞いてみて、相手側とどこが違うのか知りたかったのだ。

「そうだね。このままでも多分勝てるとは思うけど、結果はあまり大差ないと思うよ」
「そうですか……」
「向こうの実力もそこそこあるし、勿論私たちだってしっかり力をつけてきた。けれど、今の状態じゃあまり大差ない結果で終わる。……そこに勝敗の違いがある程度だけで」

 つまり、今の状態ではほぼ五分五分ということらしい。実力も大差ない状態でやり合えば、勝てるかどうかも分からない状況になるということだ。

「しかし、もう練習時間も限られてますし……これからどうやってその差を引くんですか?」
「そこは自分たちでどうにかしないと……ね?」

 立ち上がり、望子先輩はそう当たり前のように告げた。自分たちでどうにかする……か。
 確かに。僕らの戦いは僕らでどうにかしなければならない。それは望子先輩も同じだ。
 チーム戦だとしても、結局は一対一の状況で太鼓を叩くわけだ。そこに望子先輩も路世先輩もちぃも手を貸してはくれない。
 だからこそ、望子先輩はそう言ったのだろう。自分の実力は自分でどうにかするしかない、と。

「……先輩、僕そろそろ休憩あがりますね」

 そう考えると、いてもたってもいられなかった。今すぐにでも練習して力をつけたくなり、僕は休憩からあがろうとしたその時だった。

「新聞部です! 太鼓部主将の望子先輩にお聞きしたいのですが!」
「うわっ!?」

 唐突に見知らぬ女の子が部室に現れる。ノックもなしに部室に入ってくるとは、なかなか失礼な人だなぁ……。

「真彩さん!? どうしてここに!?」
「ちぃ。知り合いなのか?」
「同じクラスなんです……。まさか新聞部に入っているとは……」

 僕とちぃが話していることをそっちのけに、その真彩とかいう子は望子先輩にインタビューをやっていた。

「どうですか? 次の試合は勝てると思いますか?」
「そうだねぇ……」

 望子先輩もそんなに嫌ではなさそうで、普通にインタビューに答えていた。
 結局小一時間くらいインタビューを行うと、その子はやっと帰っていくのだった。……一体なんだったのだろうか?

「なんかインタビュー受けたらジュース貰えたよ! 鍵くん!」
「それは良かったですねー」
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