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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その86 顧問を説得せよ!
しおりを挟む「この人が、蒼川先生ですか……」
まじまじと先生を見つめながら、ちぃはそう独り言のように呟いた。
そう。このぼーっとしたような先生こそが、僕らの探していた蒼川碧先生である。
「それで、今日はどのようなご用件で?」
のんびりとした口調で蒼川は問いかけてくる。そうだった。僕らはまだ、先生に相談しないといけないことを口にしちゃいなかったのだ。
ここは代表として、部長である望子先輩が話すようだ。
「はい。実は、私たちの部活動である太鼓部の顧問の先生になっていただきたいと思い、先生の元を訪ねたのですが」
と、いつになく丁寧な口調で望子先輩は蒼川先生にそう言った。……意外だった。まさか望子先輩がこんな丁寧な口調で話すことができるだなんて。
思えば、望子先輩がこんな口調になるのは初めて出会った時だけだったような気もするが……なんだか新鮮すぎて、僕は驚きを隠せなかった。
「……まぁ、いつもがあんなんだからな。仕方ないさ」
と、小声で路世先輩がそう告げる。……そうだよな。望子先輩っていっつも子どもじみた感じだし、なんだか猫かぶっているような感じがした。
とまぁ、その話はどうでもいいとしてだ。望子先輩の頼み事に、蒼川先生はどう返答を返すのだろうか。
「そうですね……。私は別に構いませんよ」
「やった!」
「しかし、」
と、付け加えるかのように先生は告げた。
「貴方たちの部活動がどんなものか分からないので、少しだけ見学させてから考えても宜しいでしょうか?」
と、蒼川先生は付け加えた。……まぁ、そうなるっちゃそうなるよなと思いつつ、僕は頬を掻いた。
そりゃ、太鼓部だなんて誰も知らないし、そもそも存在自体を知らないだろう。ならば、太鼓部がどんな部活なのかを知るためにも、部活動の見学は大切だ。
でも……。
「……そういえば、顧問の先生が決まるまで部活動停止じゃなかったか?」
「あっ……」
そういえばそうだ。紗琉は言っていた。「顧問の先生が決まるまでは部活動を停止する」と。それじゃ見学なんて出来たものじゃない。
「どうすれば……」
「……どうやら見学もできない状況のようですね。ならば私は貴方たちの部活動の顧問にはなれませんわ」
「そんな……」
と、まるでタイミングを見計らっていたかのように昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「それでは、私はこれで。皆さん、授業には遅れないように」
と、蒼川先生は中庭を去って行った。
「……結局、振り出しに戻ってしまったな。望子先輩、これからどうするんだ?」
と、路世先輩は望子先輩に尋ねる。こうなってしまった以上、やるべき事柄は一つしかない気はするが、路世先輩はあえて聞いたのだ。
「なんとかして、蒼川先生に私たちの部活動を見学させる!」
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