101 / 126
罪悪感
しおりを挟む
『お前に価値なんて無いんだよ。』
ずしりと、心に重しがされている様だった。もう、目を覚ましたくない。
現実は、あまりにも過酷だ。
品の良い香が香る。この香りを、確かに知っていた。
此処は何処なのだろう。分からない。
書庫に居たはずだ。少なくとも、其処ではなさそうだ。彼処は、とても埃臭かった。とても心地良くはなかった。
(何処かの、誰かの宮だわ。きっと。)
書庫には、誰か先客がいたらしい。その人物に都合の悪い内容が記されていたのかもしれない。それを見た後から、記憶が無い。
「危なかったわ………」
「本当ですね。―」
榮氏の口から話されてはならない。心苦しいが、こうして、口止めをしなければならない。
(妾はどうしてこんな所にいるのだろう。)
瞼を開こうとはしない。そこに待ち受けているのが何か、知ろうとも思わないし、知りたくもない。
(どっちにしろ、妾に居場所は、無いってことね。)
先程、思い出した。それだけで胸が締め付けられてしまう台詞。
『お前に価値なんて無いんだよ。』
下界にいた頃に投げかけられた。それが、誰の台詞だったか。何度も言われた。凌氏だったろうか。それとも、義父だったろうか。はたまた、懍懍だったろうか。
(もう、どうだって構わないわ。)
人間の娘であることを否定された。求められて妃になったのに、あれから地獄だけだ。霛塋を放置し、母であることも放棄した。
涙が頬を伝う。
別に、泣きたい訳ではない。悲しみたい訳でもない。それなのに、涙は流れる。
慰めが欲しい。
凌氏に拉致された時、確かに彼は助けに来てくれた。でも、その隣にいた、大長公主。美男美女でとてもお似合いだと思った。
(変な話よ……だって、あの二人は、叔母と甥でしょう…………)
何度も頭に言い聞かせた。
『お前の価値なんて無いんだよ。』
―あぁ、そうね。そうだわ。何故今まで気が付かなかったのかしら。
莫迦だ。大莫迦者だ。
きっと、あの人と大長公主は、身内の絆以上に、それ以外のもので結ばれている。
なんてことをしてしまったのだろう。
邪魔なのは、自分だ。
何も知らずに、下界から昇って来てしまった、自分だ。
何処へ行けば幸せにはなれるのだろう。
いや、いっそ、幸せでなくても、最低限、平穏に生きれれば良い。
(妾は、どうすることも出来ないのかもしれない。)
ずしりと、心に重しがされている様だった。もう、目を覚ましたくない。
現実は、あまりにも過酷だ。
品の良い香が香る。この香りを、確かに知っていた。
此処は何処なのだろう。分からない。
書庫に居たはずだ。少なくとも、其処ではなさそうだ。彼処は、とても埃臭かった。とても心地良くはなかった。
(何処かの、誰かの宮だわ。きっと。)
書庫には、誰か先客がいたらしい。その人物に都合の悪い内容が記されていたのかもしれない。それを見た後から、記憶が無い。
「危なかったわ………」
「本当ですね。―」
榮氏の口から話されてはならない。心苦しいが、こうして、口止めをしなければならない。
(妾はどうしてこんな所にいるのだろう。)
瞼を開こうとはしない。そこに待ち受けているのが何か、知ろうとも思わないし、知りたくもない。
(どっちにしろ、妾に居場所は、無いってことね。)
先程、思い出した。それだけで胸が締め付けられてしまう台詞。
『お前に価値なんて無いんだよ。』
下界にいた頃に投げかけられた。それが、誰の台詞だったか。何度も言われた。凌氏だったろうか。それとも、義父だったろうか。はたまた、懍懍だったろうか。
(もう、どうだって構わないわ。)
人間の娘であることを否定された。求められて妃になったのに、あれから地獄だけだ。霛塋を放置し、母であることも放棄した。
涙が頬を伝う。
別に、泣きたい訳ではない。悲しみたい訳でもない。それなのに、涙は流れる。
慰めが欲しい。
凌氏に拉致された時、確かに彼は助けに来てくれた。でも、その隣にいた、大長公主。美男美女でとてもお似合いだと思った。
(変な話よ……だって、あの二人は、叔母と甥でしょう…………)
何度も頭に言い聞かせた。
『お前の価値なんて無いんだよ。』
―あぁ、そうね。そうだわ。何故今まで気が付かなかったのかしら。
莫迦だ。大莫迦者だ。
きっと、あの人と大長公主は、身内の絆以上に、それ以外のもので結ばれている。
なんてことをしてしまったのだろう。
邪魔なのは、自分だ。
何も知らずに、下界から昇って来てしまった、自分だ。
何処へ行けば幸せにはなれるのだろう。
いや、いっそ、幸せでなくても、最低限、平穏に生きれれば良い。
(妾は、どうすることも出来ないのかもしれない。)
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる