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義母
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「お前の後宮に、また一人、妃が入って来たらしいね。凌貴人だったかな。」
「そうです。」
「お可愛らしい方だったわね。」
妟纛、そしてその母である賷陰は、凌貴人を褒めた。
「でも、何故かしら、嫌な予感がするのよ、私。」
一人、隣でそう呟いたのは、璡姚だった。この人の勘はよく当たる。下界にいた頃は、名のある呪術師だったとか。
「寳闐もそう言っていましたよ。」
寳闐もまた、別の意味で、勘が鋭い。周りをよく見て生活しているのだろう。中立的に生きているのだから、それくらいは出来なくてはならないのかもしれない。
「私もそう思うわ、旲瑓。凌貴人を後宮に入れたのは、間違いだったかもしれない。」
四人の視線が、永寧大長公主に集まる。永寧大長公主は重い口を開く。
「榮莉鸞貴妃に、そっくり、瓜二つじゃない。」
貴人は、無品の位だ。そして、後宮では最下位の位。そのため、宮を与えられることもなく、部屋を借りて住む。そして、四夫人とは違い、侍女の数も制限されている。
「懍懍。」
貴人は雀斑の侍女に声を掛ける。
「莉鸞を見て、どう思った?」
「そうね、妈妈。どれだけ豪奢に着飾っても、莉鸞は莉鸞なんだなって。庶民が貴妃様なんて、似合わないわ。」
「そうねぇ。莉鸞はさしずめ、下女がお似合いなのに。血が繋がっているのが、恥ずかしいくらいよ。」
理不尽な話だ。榮氏はこの凌貴人から生まれたのに………
ケラケラと笑う。二人。
立ち聞きをしている女に、気が付かなかった。
「小姐!」
才人は走る。
「はしたないわよ、妹妹。如何したの?」
はあはあと息を切らせている俐才人。余程のことがあったのではないかと、寳闐は不安になる。
「凌貴人知ってますよね。」
「勿論。」
「侍女に、懍懍って云うのがいるのも。」
「知ってるわ。」
「その二人が、貴妃様のことを、呼び捨てに、莉鸞と呼んでいたのです。それに、貴人が漏らしていましたわ。」
貴人は馬鹿だ。愚かだ。才人は、思った。
「血が繋がっているのが、恥ずかしい、って。」
「貴人と莉鸞が血が繋がっている?」
旲瑓は吃驚して、永寧大長公主の顔を覗き込む。
「まさか。」
「いいえ、かなり確証は高いの、まさかよ。」
永寧大長公主はやはりと思った。寳闐を経由されて伝わった話だ。
「私。言ったわね。榮貴妃と凌貴人が瓜二つだって。」
「でも、それだけじゃ………」
「声も、身のこなしも、そっくりだと言ったら?」
旲瑓の心は揺らぐ。
「それに、貴人ごときが貴妃を呼び捨てにするかしら。普通ならば、名も呼べぬ程、尊い方だと思うはずなのに。」
実は、こんな話も聞いた。
「貴妃は貴人に対して、名を名乗っていないの。だから、『榮貴妃』だということしか、知らなかったはずよ。それなのに、如何して、『榮莉鸞』なのだと知っていたのかしら。面識があるってことよね。」
『初めまして、お目にかかれて光栄で御座います。凌と申します。』
そう言っていた声は、何処かで聞いたことがある気がした。
そうだ。
霛塋公主が生まれる前だ。
母親によって、地獄に引き込まれかけていた榮氏を、旲瑓が助けた。その時に母親を見た。醜く歪んだ顔をしていたが、多分、元は良かったのだろう。
そして、凌貴人の侍女を、懍懍と云ったが、彼女の夫の連れ娘の名もまた、懍懍だった。
(何が目的なのだろう。)
旲瑓には分からない。
龗家はまた、噂されるのだろう。
義母を後宮に入れた、不届き者だと。父も子も、やはり、不道徳なのだと。
「そうです。」
「お可愛らしい方だったわね。」
妟纛、そしてその母である賷陰は、凌貴人を褒めた。
「でも、何故かしら、嫌な予感がするのよ、私。」
一人、隣でそう呟いたのは、璡姚だった。この人の勘はよく当たる。下界にいた頃は、名のある呪術師だったとか。
「寳闐もそう言っていましたよ。」
寳闐もまた、別の意味で、勘が鋭い。周りをよく見て生活しているのだろう。中立的に生きているのだから、それくらいは出来なくてはならないのかもしれない。
「私もそう思うわ、旲瑓。凌貴人を後宮に入れたのは、間違いだったかもしれない。」
四人の視線が、永寧大長公主に集まる。永寧大長公主は重い口を開く。
「榮莉鸞貴妃に、そっくり、瓜二つじゃない。」
貴人は、無品の位だ。そして、後宮では最下位の位。そのため、宮を与えられることもなく、部屋を借りて住む。そして、四夫人とは違い、侍女の数も制限されている。
「懍懍。」
貴人は雀斑の侍女に声を掛ける。
「莉鸞を見て、どう思った?」
「そうね、妈妈。どれだけ豪奢に着飾っても、莉鸞は莉鸞なんだなって。庶民が貴妃様なんて、似合わないわ。」
「そうねぇ。莉鸞はさしずめ、下女がお似合いなのに。血が繋がっているのが、恥ずかしいくらいよ。」
理不尽な話だ。榮氏はこの凌貴人から生まれたのに………
ケラケラと笑う。二人。
立ち聞きをしている女に、気が付かなかった。
「小姐!」
才人は走る。
「はしたないわよ、妹妹。如何したの?」
はあはあと息を切らせている俐才人。余程のことがあったのではないかと、寳闐は不安になる。
「凌貴人知ってますよね。」
「勿論。」
「侍女に、懍懍って云うのがいるのも。」
「知ってるわ。」
「その二人が、貴妃様のことを、呼び捨てに、莉鸞と呼んでいたのです。それに、貴人が漏らしていましたわ。」
貴人は馬鹿だ。愚かだ。才人は、思った。
「血が繋がっているのが、恥ずかしい、って。」
「貴人と莉鸞が血が繋がっている?」
旲瑓は吃驚して、永寧大長公主の顔を覗き込む。
「まさか。」
「いいえ、かなり確証は高いの、まさかよ。」
永寧大長公主はやはりと思った。寳闐を経由されて伝わった話だ。
「私。言ったわね。榮貴妃と凌貴人が瓜二つだって。」
「でも、それだけじゃ………」
「声も、身のこなしも、そっくりだと言ったら?」
旲瑓の心は揺らぐ。
「それに、貴人ごときが貴妃を呼び捨てにするかしら。普通ならば、名も呼べぬ程、尊い方だと思うはずなのに。」
実は、こんな話も聞いた。
「貴妃は貴人に対して、名を名乗っていないの。だから、『榮貴妃』だということしか、知らなかったはずよ。それなのに、如何して、『榮莉鸞』なのだと知っていたのかしら。面識があるってことよね。」
『初めまして、お目にかかれて光栄で御座います。凌と申します。』
そう言っていた声は、何処かで聞いたことがある気がした。
そうだ。
霛塋公主が生まれる前だ。
母親によって、地獄に引き込まれかけていた榮氏を、旲瑓が助けた。その時に母親を見た。醜く歪んだ顔をしていたが、多分、元は良かったのだろう。
そして、凌貴人の侍女を、懍懍と云ったが、彼女の夫の連れ娘の名もまた、懍懍だった。
(何が目的なのだろう。)
旲瑓には分からない。
龗家はまた、噂されるのだろう。
義母を後宮に入れた、不届き者だと。父も子も、やはり、不道徳なのだと。
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