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太陽の娘 1
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よく知られた大河の上流、下って行けば川幅が際限まで拡がり膨大な水量を湛えるその川は、ここでは幾つかの細流が合わさり段々とその流れを増やして行く。
水の恩恵なのか森林地帯と草原が隣接する珍しい地域だ。
そこに人々が住み着いたのは必然か。
始めはサバンナで獲物を狩り森で木の実を採り移動を繰り返す、そんな生活をしていた彼らがそこに定住し畑作をして家畜を飼う。
幾世代かたつうちにそこには村が出来、人々の数は増えて行った。
自然とリーダーとなるものが現れそして繁栄して行く。
BC10000年頃この辺りにはまだ国といえるような規模の集落は出来ていなかった。
シリスと呼ばれるその男はここ、クシュという村のリーダーだ。
精悍な顔つきのアフリカン。後年ヌビア人と呼ばれる人達の祖にあたる。
太陽と水の恵みによって今年も収穫の時期を迎えようとしていた。
シリスは獣人族の代表、ホルと村外れの草原地域にやってきている。来年の耕作を相談する為に。
開墾には獣人族の力を借りなければならない。
「では、そのように」
軽い雑談のあと村へ戻ろうと踵を返した瞬間、快晴の空のもと雷のような大きな音が鳴り響く。と、はるか上空から眩しいほど光耀く何かが墜ちてくる。
ホルはシリスとさっと眼差しを交わすと獣化して飛び立った。
一直線にその“光耀くもの”に向けて翔けて行く。
既に地区のあちらこちらから何人もの鳥人が飛び立っているがその中でもホルの大きさは別格。
両翼15mの隼。空の王者ホルの姿だ。
『ピューピュィッ』
追いついた朱鷺のトートが声を掛ける。ホルより僅かに小振りだがその羽根に隠された身体は逞しい。
「一体何なんだ?」
答えがかえる前に“それ”はすぐ横を通り過ぎて行った。
『人?!』
“それ”を追って急降下しながら距離を図った。
「俺が上から引っ掛けてスピードを落とす!トートは下からサポートを!」「おう!」
羽根に触れないように背に乗せる。おそらくチャンスは一度。
よく見ると何かを背負っているようだ。あれを旨く掴めれば身体を傷つける事は避けられるかもしれない。だが強度は?
「えぇいままよ!」『ピュッ』声をかけて“その人”の背中のもの〈リュック〉に足爪をかけておもいっきり握る。同時に全力で羽ばたいたが“その人”は思ったよりも軽くてすぐに落下を止めて提げる事が出来た。トートの背中を借りずに地上へ降ろすことが出来てほっとする。
大きく羽ばたいて地面ぎりぎりを浮遊するとその人の身体をそおっと降ろした。
足爪を注意深くほどいて身体を離すと自らの獣化を解いて、「生きているか?」ひざまずいて抱き起こし呼吸を確認する。
それから初めてまじまじと“その人”を観察した。
「これは……」
はっとして背中の荷物を外すと怪我がないか身体を探ってみる。念のため着衣を捲ってみようとすると「何やってるんです?」トートが人化して現れた。
「何を不埒な事をしてるんです?」「俺はただ……」赤くなって口ごもる。
「怪我がないか確認していただけだ」
「しかしなんと色素の薄い人なんだ?獣人族にも明るい色を纏うものはいるがこれほどのものは……そもそもこの方は人なのか?」
先ほどよりも多少顔色が良くなった少女(?)は何よりも目を引く金の髪を持ち、ぬけるような白い肌をしている。
その感触は筆舌にし難い程の柔らかさ。この赤道近くの厳しい日光に晒されて生きてきたもののそれとは考え難い。
第一、この少女は空から“堕ちて”来たのだ。
「とりあえず村へ連れて帰りましょう」
ホルは少女を抱いて立ち上がった。まるで子供のように軽い。
ぐったりと脱力して据わらない首にそっと手を添えて抱きしめた。
“いい薫りがする。”
もし今、俺とこの子の2人きりなら地面に押さえつけ、引き裂き、犯して……
「何を考えているんです?」
言葉遣いこそ丁寧だが普段聞いたことのないような鋭い声がした。
「誤魔化しても駄目ですよ。あなたの考えている事など手にとるように解ります」
苦しそうな引き絞った声で続く。
「わたしもそうなんですから」
俺たちは見つめ、いや、睨みあった。
“トート!!こいつが?!”
「どうやらこの方は私達を“その気”にさせる何かをお持ちのようですね」
トートは面白くなさそうに少女(?)の背負っていた荷物を拾い上げた。
「私達だけなのか、もしそうでなかったら」
チラリと此方を見遣る。
「大変なことになりますよ」
“ゾッ”とした。
もし獣人達が“欲情”したら……
俺達はとりあえず村長のシリスのもとへ向かった。
暫く一緒にいると慣れてきたのか始めは我慢し難い程の衝動“欲情”が収まってきたのを感じる。
一体なんだったというのだ?
家主のシリスも呼び出されていた獣と爬虫類のリーダー、ジャッカルのセテフと鰐のセベクの3人共に全く異常なさそうだ。
少し拍子抜けする程に。
「その娘(?)が空から堕ちて来たというのか?」シリスが客用の寝床に案内しながら訝しげに尋ねてくる。当たり前だ。誰だって信じられないだろう。
「この子は一体何なんだ?」
セテフが至極まともな質問をしてきた。
水の恩恵なのか森林地帯と草原が隣接する珍しい地域だ。
そこに人々が住み着いたのは必然か。
始めはサバンナで獲物を狩り森で木の実を採り移動を繰り返す、そんな生活をしていた彼らがそこに定住し畑作をして家畜を飼う。
幾世代かたつうちにそこには村が出来、人々の数は増えて行った。
自然とリーダーとなるものが現れそして繁栄して行く。
BC10000年頃この辺りにはまだ国といえるような規模の集落は出来ていなかった。
シリスと呼ばれるその男はここ、クシュという村のリーダーだ。
精悍な顔つきのアフリカン。後年ヌビア人と呼ばれる人達の祖にあたる。
太陽と水の恵みによって今年も収穫の時期を迎えようとしていた。
シリスは獣人族の代表、ホルと村外れの草原地域にやってきている。来年の耕作を相談する為に。
開墾には獣人族の力を借りなければならない。
「では、そのように」
軽い雑談のあと村へ戻ろうと踵を返した瞬間、快晴の空のもと雷のような大きな音が鳴り響く。と、はるか上空から眩しいほど光耀く何かが墜ちてくる。
ホルはシリスとさっと眼差しを交わすと獣化して飛び立った。
一直線にその“光耀くもの”に向けて翔けて行く。
既に地区のあちらこちらから何人もの鳥人が飛び立っているがその中でもホルの大きさは別格。
両翼15mの隼。空の王者ホルの姿だ。
『ピューピュィッ』
追いついた朱鷺のトートが声を掛ける。ホルより僅かに小振りだがその羽根に隠された身体は逞しい。
「一体何なんだ?」
答えがかえる前に“それ”はすぐ横を通り過ぎて行った。
『人?!』
“それ”を追って急降下しながら距離を図った。
「俺が上から引っ掛けてスピードを落とす!トートは下からサポートを!」「おう!」
羽根に触れないように背に乗せる。おそらくチャンスは一度。
よく見ると何かを背負っているようだ。あれを旨く掴めれば身体を傷つける事は避けられるかもしれない。だが強度は?
「えぇいままよ!」『ピュッ』声をかけて“その人”の背中のもの〈リュック〉に足爪をかけておもいっきり握る。同時に全力で羽ばたいたが“その人”は思ったよりも軽くてすぐに落下を止めて提げる事が出来た。トートの背中を借りずに地上へ降ろすことが出来てほっとする。
大きく羽ばたいて地面ぎりぎりを浮遊するとその人の身体をそおっと降ろした。
足爪を注意深くほどいて身体を離すと自らの獣化を解いて、「生きているか?」ひざまずいて抱き起こし呼吸を確認する。
それから初めてまじまじと“その人”を観察した。
「これは……」
はっとして背中の荷物を外すと怪我がないか身体を探ってみる。念のため着衣を捲ってみようとすると「何やってるんです?」トートが人化して現れた。
「何を不埒な事をしてるんです?」「俺はただ……」赤くなって口ごもる。
「怪我がないか確認していただけだ」
「しかしなんと色素の薄い人なんだ?獣人族にも明るい色を纏うものはいるがこれほどのものは……そもそもこの方は人なのか?」
先ほどよりも多少顔色が良くなった少女(?)は何よりも目を引く金の髪を持ち、ぬけるような白い肌をしている。
その感触は筆舌にし難い程の柔らかさ。この赤道近くの厳しい日光に晒されて生きてきたもののそれとは考え難い。
第一、この少女は空から“堕ちて”来たのだ。
「とりあえず村へ連れて帰りましょう」
ホルは少女を抱いて立ち上がった。まるで子供のように軽い。
ぐったりと脱力して据わらない首にそっと手を添えて抱きしめた。
“いい薫りがする。”
もし今、俺とこの子の2人きりなら地面に押さえつけ、引き裂き、犯して……
「何を考えているんです?」
言葉遣いこそ丁寧だが普段聞いたことのないような鋭い声がした。
「誤魔化しても駄目ですよ。あなたの考えている事など手にとるように解ります」
苦しそうな引き絞った声で続く。
「わたしもそうなんですから」
俺たちは見つめ、いや、睨みあった。
“トート!!こいつが?!”
「どうやらこの方は私達を“その気”にさせる何かをお持ちのようですね」
トートは面白くなさそうに少女(?)の背負っていた荷物を拾い上げた。
「私達だけなのか、もしそうでなかったら」
チラリと此方を見遣る。
「大変なことになりますよ」
“ゾッ”とした。
もし獣人達が“欲情”したら……
俺達はとりあえず村長のシリスのもとへ向かった。
暫く一緒にいると慣れてきたのか始めは我慢し難い程の衝動“欲情”が収まってきたのを感じる。
一体なんだったというのだ?
家主のシリスも呼び出されていた獣と爬虫類のリーダー、ジャッカルのセテフと鰐のセベクの3人共に全く異常なさそうだ。
少し拍子抜けする程に。
「その娘(?)が空から堕ちて来たというのか?」シリスが客用の寝床に案内しながら訝しげに尋ねてくる。当たり前だ。誰だって信じられないだろう。
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