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第四章
310『天幕での夕べ』
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捲られた布を潜って目にしたのは、とても屋外だとは思えないほど調えられた空間だった。
陽が翳り、一気に冷え込んできた外に比べて室温まで魔導ストーブを使って調整されていた。
「これは……」
見るからに外からの見かけと中の広さが違う。
空間魔法が使われていると言うが、公爵は今までこのようなものは見た事も聞いた事もない。
公爵とともに入ってきていた従者は呆然としていたが、ハッと気づいて主人の外套を脱がせ始めた。
「まずはお茶を。どうぞこちらへ」
見るからに暖かそうな段通が敷き詰められた床、猫足の優美なしつらえのソファーや椅子、テーブル。
アラーニェが盆に乗せて持ってきたのはロイヤルコペ○ハーゲンのティーセットだ。
これも従者は当然、老公爵も目を瞠るほどの逸品だ。
「アラーニェ、夕餉はいつくらいになる?」
「アンソニーが仕上げにかかっておりましたから、もうすぐかと」
完璧な作法で淹れられた茶が美しい仕種でテーブルに置かれた。それを見計らって尋ねたアンナリーナに、微笑みとともにアラーニェが答えた。
「お食事用の天幕にご用意致します。
それまでこちらでお寛ぎ下さい」
まるで宮廷女官のような物腰のアラーニェを見送って、老公爵はアンナリーナに目を移した。
この少女は高位の貴族なのかもしれないと思ったところ。
「私、貴族じゃないですから。
仕えてくれているのは眷属の皆です」
「リーナ殿は次々と驚かせてくれますな」
「私は色々な国を巡って暮らしていますから」
老公爵にはアンナリーナのこの贅沢な暮らしが想像出来なかった。
その味だけでなく目も楽しませるとりどりのオードブルが目の前にセットされた皿の上に置かれる。
一口大のそれは、鯛のテリーヌコンソメゼリー寄せ、スモークサーモン、きゅうりとアボカドのミルフィーユポテトサラダ。
どれも美味で老公爵を驚愕させる。
そのあと続く、濃厚なダブルコンソメスープ、甘鯛のムニエル昆布出汁のあんかけ、柚のソルベ、オークキングとミノタウロスジェネラルの合挽き和風ハンバーグと老公爵は堪能した。
デザートは夕張メロン。もちろん【異世界買物】で購入した。
「リーナ殿、堪能させていただいた。
これほど美味なものを食べたことはなかった」
「気に入っていただいて嬉しいです」
その頃、アンナリーナと公爵の食事に立ち会っている従者のほかの一行はセトの案内で彼らのために張られた天幕にいた。
「申し訳ないが急だったのでひと張りに4人になってしまった」
天幕には暖かな絨毯が敷かれ、魔導ストーブが赤々と燃えていた。
テーブルと4脚の椅子、水差しとコップ、魔導ランプもある。
これが5張り。ほかに食堂用の天幕もある。
陽が翳り、一気に冷え込んできた外に比べて室温まで魔導ストーブを使って調整されていた。
「これは……」
見るからに外からの見かけと中の広さが違う。
空間魔法が使われていると言うが、公爵は今までこのようなものは見た事も聞いた事もない。
公爵とともに入ってきていた従者は呆然としていたが、ハッと気づいて主人の外套を脱がせ始めた。
「まずはお茶を。どうぞこちらへ」
見るからに暖かそうな段通が敷き詰められた床、猫足の優美なしつらえのソファーや椅子、テーブル。
アラーニェが盆に乗せて持ってきたのはロイヤルコペ○ハーゲンのティーセットだ。
これも従者は当然、老公爵も目を瞠るほどの逸品だ。
「アラーニェ、夕餉はいつくらいになる?」
「アンソニーが仕上げにかかっておりましたから、もうすぐかと」
完璧な作法で淹れられた茶が美しい仕種でテーブルに置かれた。それを見計らって尋ねたアンナリーナに、微笑みとともにアラーニェが答えた。
「お食事用の天幕にご用意致します。
それまでこちらでお寛ぎ下さい」
まるで宮廷女官のような物腰のアラーニェを見送って、老公爵はアンナリーナに目を移した。
この少女は高位の貴族なのかもしれないと思ったところ。
「私、貴族じゃないですから。
仕えてくれているのは眷属の皆です」
「リーナ殿は次々と驚かせてくれますな」
「私は色々な国を巡って暮らしていますから」
老公爵にはアンナリーナのこの贅沢な暮らしが想像出来なかった。
その味だけでなく目も楽しませるとりどりのオードブルが目の前にセットされた皿の上に置かれる。
一口大のそれは、鯛のテリーヌコンソメゼリー寄せ、スモークサーモン、きゅうりとアボカドのミルフィーユポテトサラダ。
どれも美味で老公爵を驚愕させる。
そのあと続く、濃厚なダブルコンソメスープ、甘鯛のムニエル昆布出汁のあんかけ、柚のソルベ、オークキングとミノタウロスジェネラルの合挽き和風ハンバーグと老公爵は堪能した。
デザートは夕張メロン。もちろん【異世界買物】で購入した。
「リーナ殿、堪能させていただいた。
これほど美味なものを食べたことはなかった」
「気に入っていただいて嬉しいです」
その頃、アンナリーナと公爵の食事に立ち会っている従者のほかの一行はセトの案内で彼らのために張られた天幕にいた。
「申し訳ないが急だったのでひと張りに4人になってしまった」
天幕には暖かな絨毯が敷かれ、魔導ストーブが赤々と燃えていた。
テーブルと4脚の椅子、水差しとコップ、魔導ランプもある。
これが5張り。ほかに食堂用の天幕もある。
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