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第四章
308『ダブルブッキング』
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上空にいる時には取り乱していて気づかなかったが、今の前にいる少女はパッと見た目は普通の少女に見える。
だが老公爵はその非凡さに目を瞠った。
一見どこにでもあるような茶色の髪と瞳だが、よく見ると双方とも金粉がまぶされているように輝いている。
高名な魔法戦士であった老公爵には、一目でそれが魔力が溢れ出しているものだと察知した。
容姿の見た目は凡庸だ。
だが、一体どれほどあるのか想像もつかない高魔力を持つ少女は、ある意味先だってのオークションに出品されたドラゴンより価値があるだろう。
そしてその少女は黄色いアイテムバッグからテーブルや椅子、ティーセットを取り出して今、もてなしの最中だ。
彼女の紅茶を淹れる作法は美しく、出された紅茶は美味い。
何よりも菓子や軽食、見たこともないケーキなど食指が疼く。
気づくと軽食のパン……薄切りの白く柔らかなパンに玉子などの具を挟んだもの、サンドイッチと言うそうだが、これがまた美味くて、空腹もあってすべて食してしまった。
「すまない、つい夢中になってしまった」
「お気遣いなく。
道中、休憩を取るのも惜しんで進んでらしたのでしょう。
……公爵様、今宵はどちらでお泊りですか?
このままでは陽が傾いて行きます。
もしよろしければ宿に着いてからゆっくり話を詰めたいと思います」
「うむ、そうだな」
こんな草原の真ん中で落ち着いて話をするのは不可能だ。
老公爵はアンナリーナの提案を聞き入れ、出発の命令を下す。
アンナリーナは再びセトに運んでもらい、老公爵と併走する事にしたのだ。
老公爵が今宵の宿に決めていたのは辺境都市アバイル。
もう魔人領を出て3つ目の国との国境に位置する町だ。
そこの高級宿に予約を入れていたはずなのだが。
「誠に申し訳ございません」
宿の支配人が土下座せん勢いで頭を下げている。
宿側の不手際でダブルブッキングが起き、相手方はもう部屋に入っているのだと言う。
「どちらか他の宿を紹介していただく事は出来ませんか?」
老公爵の従者のひとりが交渉しているが、この町は明日から祭りが始まり、そのせいで宿はどこも満室なのだと言う。
「申し訳ございません」
再び深く腰を折る支配人に、怒る気にもなれない老公爵は疲れ果てたように、椅子に腰掛けた。
「あの、公爵様」
アンナリーナが恐る恐る声を掛けた。
彼女にはこのピンチを凌ぐ手段がある。
「よろしければ、私どもとご一緒なさいませんか?」
アンナリーナの誘いは魅力的なのだが。
「野営用の天幕でよろしければおもてなしできます。
魔導具なのでそれなりに快適ですよ?」
アンナリーナはセトにちらりと目配せした。
だが老公爵はその非凡さに目を瞠った。
一見どこにでもあるような茶色の髪と瞳だが、よく見ると双方とも金粉がまぶされているように輝いている。
高名な魔法戦士であった老公爵には、一目でそれが魔力が溢れ出しているものだと察知した。
容姿の見た目は凡庸だ。
だが、一体どれほどあるのか想像もつかない高魔力を持つ少女は、ある意味先だってのオークションに出品されたドラゴンより価値があるだろう。
そしてその少女は黄色いアイテムバッグからテーブルや椅子、ティーセットを取り出して今、もてなしの最中だ。
彼女の紅茶を淹れる作法は美しく、出された紅茶は美味い。
何よりも菓子や軽食、見たこともないケーキなど食指が疼く。
気づくと軽食のパン……薄切りの白く柔らかなパンに玉子などの具を挟んだもの、サンドイッチと言うそうだが、これがまた美味くて、空腹もあってすべて食してしまった。
「すまない、つい夢中になってしまった」
「お気遣いなく。
道中、休憩を取るのも惜しんで進んでらしたのでしょう。
……公爵様、今宵はどちらでお泊りですか?
このままでは陽が傾いて行きます。
もしよろしければ宿に着いてからゆっくり話を詰めたいと思います」
「うむ、そうだな」
こんな草原の真ん中で落ち着いて話をするのは不可能だ。
老公爵はアンナリーナの提案を聞き入れ、出発の命令を下す。
アンナリーナは再びセトに運んでもらい、老公爵と併走する事にしたのだ。
老公爵が今宵の宿に決めていたのは辺境都市アバイル。
もう魔人領を出て3つ目の国との国境に位置する町だ。
そこの高級宿に予約を入れていたはずなのだが。
「誠に申し訳ございません」
宿の支配人が土下座せん勢いで頭を下げている。
宿側の不手際でダブルブッキングが起き、相手方はもう部屋に入っているのだと言う。
「どちらか他の宿を紹介していただく事は出来ませんか?」
老公爵の従者のひとりが交渉しているが、この町は明日から祭りが始まり、そのせいで宿はどこも満室なのだと言う。
「申し訳ございません」
再び深く腰を折る支配人に、怒る気にもなれない老公爵は疲れ果てたように、椅子に腰掛けた。
「あの、公爵様」
アンナリーナが恐る恐る声を掛けた。
彼女にはこのピンチを凌ぐ手段がある。
「よろしければ、私どもとご一緒なさいませんか?」
アンナリーナの誘いは魅力的なのだが。
「野営用の天幕でよろしければおもてなしできます。
魔導具なのでそれなりに快適ですよ?」
アンナリーナはセトにちらりと目配せした。
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