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第四章

306『老公爵との出会い』

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 出立した時は薄曇りだった空も、今は青く晴れ渡っている。
 そんな中、13羽の騎鳥に乗った一行は順調に旅程を進めていた。


「天気が回復して、よろしゅうございましたね、旦那様」

 老公爵の騎鳥は一段と大きく立派で、2人用の鞍が付けられ、今話しかけた男が操縦していた。

「そうだな。
 いくらこの数日は天気の崩れは少ない可能性とはいえ、どうなるかわからない。願わくばこのまま国まで何事もなく行きたいものよ」

 今は晩秋。
 あともう少しで冬を迎えるこの辺りは、そろそろ北風が強くなる頃だ。
 現在この上空で騎鳥に乗っている彼らは風の精霊の保護魔法で守られているため普通にしていられるが、そうでなければ早々に低体温症で意識を失っていただろう。

 青空の下に薄雲がかかり始め、太陽は傾いてきている。
 そして風がより冷たくなってきた頃、最後尾についていた騎鳥の乗り手がある事に気付いた。

「おい、おまえ、隊列から外れているぞ」

 見る見るうちに騎鳥たちがバラバラの方向に動き出す。
 騎手たちは何が起こったのか理解出来ずに慌てるばかりだ。

「おい、どうしたんだ!?」

 あちこちで悲鳴に近い叫びが聞こえ、老公爵もその異常に気がついた。

『ーーーー』

 人間には聞こえない精霊の声が語りかけてきて、ようやく騎鳥たちは落ち着きを取り戻した。
 崩れた隊列は元通りになり、ひと安心したところにそれはやって来た。

 太陽を遮るものなど何もないはずなのに、突然巨大な影に覆われた老公爵の騎鳥は逃げることも出来ずにただ飛び続けていた。
 その時、一行が目にしたのは上空から被せるように降下してくるブラックドラゴンの姿だ。

「ドラゴン!! 何故こんなところに!」

 一行は老公爵を除きパニックに陥ったが、不思議な事に騎鳥は落ち着いている。彼らは恐怖に震えていたが逃げ出す事はなかった。
 実はこれは、アンナリーナを守るために付いてきたイェルハルドが眷属の風精霊に命じて鳥たちを宥めていた事が起因する。
 そうでなければ脆弱な騎鳥などショック死してもおかしくないだろう。
 その巨大で禍々しいオーラを出すブラックドラゴンは一番大きな老公爵の騎鳥に近づいていった。

「おお……これは何としたことだ」

 その存在自体の威圧感と、膨大な魔力の圧力をもろに受け、騎鳥が羽ばたくのを忘れそうになった時、そのブラックドラゴンの方から声が聞こえてきた。

「すみませーん、そちらテラシォン公爵様御一行ですかー?
 公爵様はいらっしゃいますかー?」

 ドラゴンの鋭い爪の間から顔を覗かせた少女が、えいやっと飛び降りてきて老公爵の騎鳥に並ぶように近づいてきて、そのまま飛行している。

「……儂がテラシォンだ。
 お嬢さん、何か用かね?」

「よかったー。
 エッケハルトさんに聞いて追いかけて来たんですよ。
 私はリーナ。【劣化版アムリタ】の出品者です」

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