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第四章

295『ガムリの工房とゆで卵』

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 魔獣の森の奥深く、ツリーハウスの敷地内に作られた簡易の鍛冶場ではガムリが張り切って各人の得物のメンテナンスを行っていた。

「おはよう。調子はどうかな?」

 開けっ放しになっている扉の枠にノックし、ガムリの唯一無二の主が入ってきた。

「リーナ様、おはようございます!」

 今回のダンジョン遠征は長期になる事が予想されている。
 その為、アンナリーナの眷属各々の得物を調整しているのだが、ここに主個人がやってくるとは思わなかった。

「いつもありがとう。
 簡易の工房しか用意出来なくてごめんね。
 今、滞在している大陸にはドワーフの王国があるらしいの。
 絶対に連れて行くから待っていて」

「リーナ様、俺は今のままで十分満足しています。
 貴重な素材も好きなだけ使わせてもらっているし、この工房だって俺の前の工房と比べたらどれほど良い鍛冶場か言いようのないほどです」

「うん、でも私はガムリにもっといい工房でもっといい武器を作って欲しい。それに関しては自重する気はないの」

 ドワーフの王国は北部大陸の北の端にあると言う。
 その国には鉱物のふんだんに採れる鉱山に囲まれ、一方だけ開けた谷を使って交易をしている。
 そこは天然の関所となって敵を阻んでいると同時に、出入国する者たちを管理する場となっていた。

「それにその国には珍しいダンジョンがいくつもあるそうじゃないの」

 ダンジョン産の素材は貴重だ。
 どうやらこのドワーフの王国では採れた鉱石を他国に出さず、武器や防具に生成して輸出している。

「北の大陸には私が探していたものがあるかもしれないの。
 もしそれが手に入れば、ガムリにちゃんとした工房をプレゼントできると思う」

 アンナリーナの探し物とは一体?




 大量の食料品の購入は、あちらで行うと目をつけられる可能性があるのでエイケナールで行った。
 あとは【異世界買物】でサラダにする野菜や玉子を買い込んだ。
 そしてこの後、ツリーハウスにいる眷属たちはびっくりするような量のゆで卵を茹でて、殻を剥く地獄に陥る事になった。
 後にこれは煮卵とおでんに姿を変えて、皆を楽しませたのだ。


 アンナリーナたちは【迷宮都市】まで転移し、そのままダンジョンに潜っていった。
 その際ギルドには、月単位での探索を行うと申請すると驚愕されてしまったが前回のこともある。
 渋々ながら許可を出したギルドは【提案】と言う形である縛りを言ってきた。

「はぁ~? そんな事無理に決まってるでしょう?
 私たちとそれ以外の人たちとはスピードが全然違うのよ。
 スピードを合わせるのも、彼らを庇って戦うのもいい加減にして欲しい」

 ギルド側が言い出した『ギルド側が指定した冒険者パーティーを一緒に連れて行く』と言う提案はけんもほろろに退けられてしまった。
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