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第四章
223『大陸到達』
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その陸地を目にした時、セトはもう魔力体力両方が枯渇ギリギリだった。
それはアンナリーナも変わらず、彼女らの後ろで太陽が水平線に沈みゆくなか、必死でセトの指にしがみついていた。
ほとんど気力だけで、最後は滑空状態で浜に突っ込んだセトは、アンナリーナをその手から出すと同時に意識を失い、その姿はどんどん縮んで黒いアイデクセに変化した。
その小さなトカゲはフラフラと、倒れたままのアンナリーナに近づき、そのローブの中に潜り込んでいった。
「う……」
月明かりしかない浜で意識を取り戻したアンナリーナが、首を振り振り身を起こした。
彼女は墜落寸前のセトに、今その時使える魔力すべてを使って結界を張った。
あのまま浜に突っ込んでいたら、セトはともかくアンナリーナは無事ではすまなかっただろう。
「う……ん、セト、どこ?」
『主人、ここだ』
アンナリーナのローブの、内ポケットの中、もそりと動く感触に手を触れると再びセトの念話が届いた。
『主人、すまない。
何故か今、この状態以外の姿になれないのだ。
……不審な気配はないが気をつけてくれ』
「うん……とりあえず【ライト】」
闇の中、灯りを取ろうと光魔法の初歩【ライト】を唱えてみたが何も起こらない。
「え? もう一度【ライト】」
再び唱えてみても何も起きない。
「……?【ファイア】」
今度は火魔法の【ファイア】を試してみたがこれも駄目。
次は【ウォーター】
しかし水も出ない。
「これって、どうなってるの?」
アンナリーナはパニック寸前である。
そして見境なしに次々と魔法を使っていく。
「【インフェルノ】【ボルケーノ】」
「【フラッド】【トルネード】【アブソリュートゼロ】【サンダーボルト】」
本来ならば攻撃魔法の乱れ撃ちである。
だがこの時、アンナリーナの魔法は何ひとつ発現しなかったのだ。
「一体どうしたって言うの……?」
アンナリーナは呆然と座り込んでいた。
“ 魔法が使えない! ”
これほど恐怖を感じることはない。
月の光だけの浜でただひとり、自分自身を抱き締めて、どれくらいそうしていたのだろうか。
あまりの衝撃に、時間の感覚もなくなり……気づいたのは周りが明るくなってきた頃だった。
『主人、主人』
ローブの内側から出てきたセトがアンナリーナの頬を舐めている。
「あ、あ……セト、どうなっちゃったんだろう」
すっかり困り果てたアンナリーナに、いつもの元気はない。
14才の時のギフト授与からこちら、どれだけ魔法に依存していたかがよくわかる。
このまま使えないままなのでは、と考えて冷水を浴びせられたようにゾッとした。
『主人、とりあえずどこか安全なところへ。
そして、落ち着いてから考えよう』
そろそろと立ち上がったアンナリーナが、服についた砂をはたき落とす。
そしてセトに言われた通り、あたりを見回しながら歩き出した。
「森を抜けたら町や村があるかもしれないけど……ちょっと危険かもね」
上陸の直前まで海岸線を見ていたアンナリーナには、この近くに港などがないことがわかっていた。
『主人、向かって左側の砂浜の向こう、岩肌が見えているあの辺りを目指したらどうだろう』
今はアンナリーナの肩に乗っているセトが提案する。
素直に頷いたアンナリーナは、サクサクと足音を立てて砂浜を進んでいった。
波の侵食で階段状になった岩壁に座り込み、アンナリーナは波打ち際の波が崩れる様を見つめていた。
セトもアンナリーナも、これから行う事に、過度に緊張している。
この後、これからの命運を握る鍵になる……事柄を試そうとしていた。
「では……行きます。
『ステータスオープン』」
それはアンナリーナも変わらず、彼女らの後ろで太陽が水平線に沈みゆくなか、必死でセトの指にしがみついていた。
ほとんど気力だけで、最後は滑空状態で浜に突っ込んだセトは、アンナリーナをその手から出すと同時に意識を失い、その姿はどんどん縮んで黒いアイデクセに変化した。
その小さなトカゲはフラフラと、倒れたままのアンナリーナに近づき、そのローブの中に潜り込んでいった。
「う……」
月明かりしかない浜で意識を取り戻したアンナリーナが、首を振り振り身を起こした。
彼女は墜落寸前のセトに、今その時使える魔力すべてを使って結界を張った。
あのまま浜に突っ込んでいたら、セトはともかくアンナリーナは無事ではすまなかっただろう。
「う……ん、セト、どこ?」
『主人、ここだ』
アンナリーナのローブの、内ポケットの中、もそりと動く感触に手を触れると再びセトの念話が届いた。
『主人、すまない。
何故か今、この状態以外の姿になれないのだ。
……不審な気配はないが気をつけてくれ』
「うん……とりあえず【ライト】」
闇の中、灯りを取ろうと光魔法の初歩【ライト】を唱えてみたが何も起こらない。
「え? もう一度【ライト】」
再び唱えてみても何も起きない。
「……?【ファイア】」
今度は火魔法の【ファイア】を試してみたがこれも駄目。
次は【ウォーター】
しかし水も出ない。
「これって、どうなってるの?」
アンナリーナはパニック寸前である。
そして見境なしに次々と魔法を使っていく。
「【インフェルノ】【ボルケーノ】」
「【フラッド】【トルネード】【アブソリュートゼロ】【サンダーボルト】」
本来ならば攻撃魔法の乱れ撃ちである。
だがこの時、アンナリーナの魔法は何ひとつ発現しなかったのだ。
「一体どうしたって言うの……?」
アンナリーナは呆然と座り込んでいた。
“ 魔法が使えない! ”
これほど恐怖を感じることはない。
月の光だけの浜でただひとり、自分自身を抱き締めて、どれくらいそうしていたのだろうか。
あまりの衝撃に、時間の感覚もなくなり……気づいたのは周りが明るくなってきた頃だった。
『主人、主人』
ローブの内側から出てきたセトがアンナリーナの頬を舐めている。
「あ、あ……セト、どうなっちゃったんだろう」
すっかり困り果てたアンナリーナに、いつもの元気はない。
14才の時のギフト授与からこちら、どれだけ魔法に依存していたかがよくわかる。
このまま使えないままなのでは、と考えて冷水を浴びせられたようにゾッとした。
『主人、とりあえずどこか安全なところへ。
そして、落ち着いてから考えよう』
そろそろと立ち上がったアンナリーナが、服についた砂をはたき落とす。
そしてセトに言われた通り、あたりを見回しながら歩き出した。
「森を抜けたら町や村があるかもしれないけど……ちょっと危険かもね」
上陸の直前まで海岸線を見ていたアンナリーナには、この近くに港などがないことがわかっていた。
『主人、向かって左側の砂浜の向こう、岩肌が見えているあの辺りを目指したらどうだろう』
今はアンナリーナの肩に乗っているセトが提案する。
素直に頷いたアンナリーナは、サクサクと足音を立てて砂浜を進んでいった。
波の侵食で階段状になった岩壁に座り込み、アンナリーナは波打ち際の波が崩れる様を見つめていた。
セトもアンナリーナも、これから行う事に、過度に緊張している。
この後、これからの命運を握る鍵になる……事柄を試そうとしていた。
「では……行きます。
『ステータスオープン』」
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