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第四章
205『不審な影』
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攻略は順調に進んでいる。
まあ、それも無理はない。
アンナリーナたちの能力は完全なオーバーキルなのだ。
眼前を遮る敵を蹴散らし、わざと魔獣が固まっている場所を探して突入し、ついでにマップを記入していく。
……当初予定していた全体マップ作成は早々に諦めた。
それはこのダンジョンが広大だという事もあるが、単にアンナリーナが面倒くさくなったからだ。
そうこうするうちに3日経ち、アンナリーナ一行は前回到達していた12階層を大きく越え、今は16階層に来ていた。
そして今、とても困った状況になっている。
それはこの階層が今までにないほど広いという事もあるが、実は別の案件でアンナリーナは悩んでいた。
それはテオドールを始め、従魔たちも同じで、どう対処すれば良いのか戸惑っていた。
それはこの16階層にきて3度目の交戦の時だった。
バラバラと分布する、この階層でメインの魔獣【ハイ・コボルト・ソルジャー】を狩っていて、何となく違和感を感じた。
それは4度目、5度目と続く。
「ねえ、ちょっと集まって」
アンナリーナのその言葉に、4人が顔が触れ合うほど近づいた。
「気づいてる?
何か、変な動きをしている個体がいるよね?」
それはいつのまにか近づいてきていて、戦闘が始まると一度引き、様子を窺っている。
そして自分が標的になる寸前、姿を消すのだ。
それがもう3度繰り返されている。
「完全に何か意図しているよね。
2度までは偶然かと思っていたけど、もうこれは必然だね」
テオドールも頷き返した。
野生の、感覚の鋭いセトとイジはそれ以上のものを感じているようだ。
「主人も感じているだろうが……悪意は感じさせない。
どうやらあちらも戸惑っているような雰囲気だが、どうだろう?」
「そうだな……
今もこちらを、ジッと見ている?」
イジは心底気持ち悪そうな顔をしている。
「あ、動き出した」
アンナリーナはマップ上の点が紫に変わっている事に気づいていた。これは普段魔獣を示す青点から変化したものだ。
「う~ん、なんだろう。
こんな事初めてだからよくわからないよ」
この場では、このまま様子を見ながら進む事にした。
そして相手に気取られないように、今までと変わりなく、高速で移動していく。
「しかし、この階層はだだっ広いね。
下に降りる階段があれば、この悩ましい状況からも解放されるのに」
基本的に、このダンジョンに生息する魔獣は階層を越えて活動しない。
だから下に降りてしまえばスッキリするのだが。
「また、来てる」
あまりの広大さに2~3日での踏破を諦めたアンナリーナたちは、今夜の野営地に定めた平原で夕餉を食していた。
「相変わらず悪意は感じないけど……
何か困っちゃうね」
大型馬車を家屋がわりに、外に魔導コンロやテーブルなどを出して、アンソニーが出張してきての夕食だった。
その周りに堅固な結界を張り、一応見張りは立てているが、全体にゆったりとした空気が流れている。
「まあ、まだ下への階段も見つかってないし、何となく長丁場になりそうな気がする。
……のんびり構えてたらいいんじゃないか?」
おっとりとテオドールが、そう提案する。
「うん、そうだね。
今のところ実害もないし」
アンナリーナがチラリと視線を巡らせた先は結界の向こう、平原を越えた森の中に向けられる。
「うん、見てる」
そのハイ・コボルト・ソルジャーは付かず離れずの距離感でアンナリーナたちを窺っていた。
まあ、それも無理はない。
アンナリーナたちの能力は完全なオーバーキルなのだ。
眼前を遮る敵を蹴散らし、わざと魔獣が固まっている場所を探して突入し、ついでにマップを記入していく。
……当初予定していた全体マップ作成は早々に諦めた。
それはこのダンジョンが広大だという事もあるが、単にアンナリーナが面倒くさくなったからだ。
そうこうするうちに3日経ち、アンナリーナ一行は前回到達していた12階層を大きく越え、今は16階層に来ていた。
そして今、とても困った状況になっている。
それはこの階層が今までにないほど広いという事もあるが、実は別の案件でアンナリーナは悩んでいた。
それはテオドールを始め、従魔たちも同じで、どう対処すれば良いのか戸惑っていた。
それはこの16階層にきて3度目の交戦の時だった。
バラバラと分布する、この階層でメインの魔獣【ハイ・コボルト・ソルジャー】を狩っていて、何となく違和感を感じた。
それは4度目、5度目と続く。
「ねえ、ちょっと集まって」
アンナリーナのその言葉に、4人が顔が触れ合うほど近づいた。
「気づいてる?
何か、変な動きをしている個体がいるよね?」
それはいつのまにか近づいてきていて、戦闘が始まると一度引き、様子を窺っている。
そして自分が標的になる寸前、姿を消すのだ。
それがもう3度繰り返されている。
「完全に何か意図しているよね。
2度までは偶然かと思っていたけど、もうこれは必然だね」
テオドールも頷き返した。
野生の、感覚の鋭いセトとイジはそれ以上のものを感じているようだ。
「主人も感じているだろうが……悪意は感じさせない。
どうやらあちらも戸惑っているような雰囲気だが、どうだろう?」
「そうだな……
今もこちらを、ジッと見ている?」
イジは心底気持ち悪そうな顔をしている。
「あ、動き出した」
アンナリーナはマップ上の点が紫に変わっている事に気づいていた。これは普段魔獣を示す青点から変化したものだ。
「う~ん、なんだろう。
こんな事初めてだからよくわからないよ」
この場では、このまま様子を見ながら進む事にした。
そして相手に気取られないように、今までと変わりなく、高速で移動していく。
「しかし、この階層はだだっ広いね。
下に降りる階段があれば、この悩ましい状況からも解放されるのに」
基本的に、このダンジョンに生息する魔獣は階層を越えて活動しない。
だから下に降りてしまえばスッキリするのだが。
「また、来てる」
あまりの広大さに2~3日での踏破を諦めたアンナリーナたちは、今夜の野営地に定めた平原で夕餉を食していた。
「相変わらず悪意は感じないけど……
何か困っちゃうね」
大型馬車を家屋がわりに、外に魔導コンロやテーブルなどを出して、アンソニーが出張してきての夕食だった。
その周りに堅固な結界を張り、一応見張りは立てているが、全体にゆったりとした空気が流れている。
「まあ、まだ下への階段も見つかってないし、何となく長丁場になりそうな気がする。
……のんびり構えてたらいいんじゃないか?」
おっとりとテオドールが、そう提案する。
「うん、そうだね。
今のところ実害もないし」
アンナリーナがチラリと視線を巡らせた先は結界の向こう、平原を越えた森の中に向けられる。
「うん、見てる」
そのハイ・コボルト・ソルジャーは付かず離れずの距離感でアンナリーナたちを窺っていた。
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