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第四章

203『難癖をつけてくる奴ら』

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【ジャスティスハート】絡みのあれやこれやは、アンナリーナ自身が強制的に休息を取らされたため、詳しい事はわからない。
 ただテオドールから、ダンジョンから出てきた連中はもれなく、待機していた幌馬車に押し込まれ、アシードの街に搬送されて行ったそうだ。
 結果的にアンナリーナは3日間、熱を出して寝込み、1日を様子見としてようやく当初の計画通り、この騎士のダンジョン(仮)の攻略を始められることになった。
 期間は約2ヶ月。
 船の出航まで、まだ間があるがこのくらいが潮時だろう。

「では、私たちは長期間このダンジョンに潜りますので、よろしく」

 入り口の兵士に、そのあたりもちゃんと断っておく。
 これでゆっくり探索する事ができる。

 そんな遣り取りをしていたところに、何やら見覚えのある男たちが数人近づいてきた。
 初めはダンジョンが目的かと思ったが、それにしては軽装備過ぎる。

「おい、おまえら!」

 ダンジョンに入ろうとしているアンナリーナたちに向かって駆けてくる男たちは全部で4人。
 その彼らはアンナリーナに向かって、凄い剣幕でまくし立ててくる。

「え……っと、どちらさま?」

 彼らはアンナリーナが対応した事で見誤っていた。
 彼女の隣にはテオドールも、セトやイジもいることを。

「今日は提案があってやってきた」

 4人の中で、まだ比較的冷静な男が話し始めた。

「我々は、先日のダンジョンからの撤退の際に入手した、魔獣の素材の返還を要求する」

 ここでようやくアンナリーナは、この目の前の4人が、先日サルベージしてきた【ジャスティスハート】のメンバーだと気付いた。

「……返還って、あなたたちは何もしてないでしょう?
 ただ、一緒に走っていただけじゃん」

「なっ、それでも我々には要求する権利がある!」

 どのような権利だと言うのか。
 この件はダンジョンから出るとき、エンゲルブレクトと話し合い済みだ。
 アンナリーナは今回の依頼の報酬を、途中で狩った魔獣をすべて移譲される事で相殺した。
 彼らはその取り決めを知らないと言うのだろうか。
 とんだ言い掛かりである。
 アンナリーナはうんざりして、溜息する。
 ここで始めて、テオドールが口を開いた。

「あの後、正式に契約の書面を交わした。
 俺が立会い、双方が契約書の控えを持っているはずだが、それでも納得いかないと?」

「あたりまえだ!
 俺たちは犠牲者も出したのに、碌な素材も持ち帰れなかったんだぞ」

 それはあちらの言い分であって、アンナリーナ側がどうこう言われる筋合いではない。

「もう、この話は終わっているはず。
 退いて下さらない?私たちは前回邪魔された攻略に、改めて潜行するのだから」

 アンナリーナは、火に油を注ぎにかかる。
 そして男たちはついに得物に手をかけた。

「!!」

 瞬間、アンナリーナの身体から魔力が溢れ、男たちを威圧する。
 おそらく今まで、これほどの魔力に曝された事がないのだろう。
 得物を取り落とし、四つん這いになって俯く顔からは脂汗が止まらない。

「あなたたちを捜索して連れ帰ったことにより発生した、正当な報酬を渡せと言うの?
 私はこの事を、どう捉えればいいのかしら」

 普段温厚なアンナリーナの、憤怒の表情が恐ろしい。

「剣を抜いたわね?
 皆、見ていたわよね。
 正当防衛で、グシャってやってもいいわね?」

「お待ち下さい!」

 汗びっしょりの人馬が現れて、あたりが突然騒がしくなる。
 そして転げるように馬から降りてきたのは、今頃はアシードにいるはずのエンゲルブレクトだった。
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