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第四章
181『ハルメトリアにて』
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話は理解したが、これは儂のところに持ってくるべきものではないじゃろう?」
ひと通り、ハルメトリアを出国してからの魔獣の出没状況や、先日のキールストレッド帝国、学研都市アルファ・ケンタウリ付近で起きた変事を説明したアンナリーナに、ユングクヴィストはそう声をかけた。
「情報を得ることが難しい儂の立場では、これから集めるのも難しい。
これは、もし返答が欲しいのなら他のところに行くべきじゃろ」
「はい、それはそうなのですが」
行くべきところは決まっている。
それでもアンナリーナが迷っているのは、そこが王宮であるからだ。
「……儂が先触れを出してやろう。
馬車を用意させるので、そなたも仕度をしてきなさい」
「ええと、王宮は駄目です。やめておきます」
アンナリーナの過剰なまでの反応に、ユングクヴィストは内心で大きく溜息を吐く。
自分を取り込みたがっているものたちの元に、自ら向かうのを厭う弟子の頑固さは折り紙つきだ。
「では、エレアント公爵の元に先触れを出そうか?
あそこなら多少の情報は持っておるじゃろう」
「そう……ですね。仕度をして参ります」
一度ツリーハウスに帰って、足取り重く戻ってきたアンナリーナは、今度は貴族邸に行くにふさわしい装い……クリーム色の地色に暖色系の色とりどりの花柄のドレスを着ている。
襟ぐりや袖口には繊細なレースが施されており、細身のシルエットと共に上品さを醸し出していた。
「さて、参ろうかの」
外出用のローブに着替えたユングクヴィストが待っていた。
「ユングクヴィスト様?」
「そなた一人を行かせるわけにはいかんじゃろ」
長い髭を扱くように撫でながら、ユングクヴィストは茶目っ気たっぷりに笑った。
「それは誠ですか!?」
エレアント公爵はアンナリーナの話を聞いて絶句する。
まだ今は各国で魔獣が活性化している話しかしていないのだが、最早公爵は混乱の極みに至っていた。
それに加えてアンナリーナたちの偽物が出没しているのを聞いて、今度は憤慨している。
「こちらでは、そういった話は聞きませんな」
公爵は従者に何事かを言いつけると、アンナリーナたちに向き直った。
「ギルドに命じて情報を集めさせよう。少し猶予をもらえるだろうか」
「はい、問題ありません。
それからもうひとつ、お願いがあります」
「何だね?」
「ハルメトリア国発行の “ お墨付 ”をいただきたいのです。
今回、私の名を騙った連中を罰するため、捕獲の時に何があっても合法だという “ 勅命 ”をいただきたい」
「そうか。
それならば手に入れる努力をしてみよう。何、そのうち我が国所属と騙るかもしれぬ」
繰り返すが、薬師や治癒士を騙るのは重罪だ。まして今回の連中は偽の薬剤を扱っている。
これは各国でも決して許されない事であり断罪されてしかるべきである。
3日後、ユングクヴィストの元に顔を出したアンナリーナに、エレアント公爵から国王発行の【処刑許可書】と現在わかっている情報が渡された。
そしてアンナリーナは馬車の旅に戻っていく。
ミルバラからアシードまでは約10日の日程だ。
ここからは通常の旅程となり、野営地と村の宿とで順番に宿泊する事になる。
そして何事もなくアシードに着いたアンナリーナたちは、しばらくの間この地を拠点とする事になる。
ひと通り、ハルメトリアを出国してからの魔獣の出没状況や、先日のキールストレッド帝国、学研都市アルファ・ケンタウリ付近で起きた変事を説明したアンナリーナに、ユングクヴィストはそう声をかけた。
「情報を得ることが難しい儂の立場では、これから集めるのも難しい。
これは、もし返答が欲しいのなら他のところに行くべきじゃろ」
「はい、それはそうなのですが」
行くべきところは決まっている。
それでもアンナリーナが迷っているのは、そこが王宮であるからだ。
「……儂が先触れを出してやろう。
馬車を用意させるので、そなたも仕度をしてきなさい」
「ええと、王宮は駄目です。やめておきます」
アンナリーナの過剰なまでの反応に、ユングクヴィストは内心で大きく溜息を吐く。
自分を取り込みたがっているものたちの元に、自ら向かうのを厭う弟子の頑固さは折り紙つきだ。
「では、エレアント公爵の元に先触れを出そうか?
あそこなら多少の情報は持っておるじゃろう」
「そう……ですね。仕度をして参ります」
一度ツリーハウスに帰って、足取り重く戻ってきたアンナリーナは、今度は貴族邸に行くにふさわしい装い……クリーム色の地色に暖色系の色とりどりの花柄のドレスを着ている。
襟ぐりや袖口には繊細なレースが施されており、細身のシルエットと共に上品さを醸し出していた。
「さて、参ろうかの」
外出用のローブに着替えたユングクヴィストが待っていた。
「ユングクヴィスト様?」
「そなた一人を行かせるわけにはいかんじゃろ」
長い髭を扱くように撫でながら、ユングクヴィストは茶目っ気たっぷりに笑った。
「それは誠ですか!?」
エレアント公爵はアンナリーナの話を聞いて絶句する。
まだ今は各国で魔獣が活性化している話しかしていないのだが、最早公爵は混乱の極みに至っていた。
それに加えてアンナリーナたちの偽物が出没しているのを聞いて、今度は憤慨している。
「こちらでは、そういった話は聞きませんな」
公爵は従者に何事かを言いつけると、アンナリーナたちに向き直った。
「ギルドに命じて情報を集めさせよう。少し猶予をもらえるだろうか」
「はい、問題ありません。
それからもうひとつ、お願いがあります」
「何だね?」
「ハルメトリア国発行の “ お墨付 ”をいただきたいのです。
今回、私の名を騙った連中を罰するため、捕獲の時に何があっても合法だという “ 勅命 ”をいただきたい」
「そうか。
それならば手に入れる努力をしてみよう。何、そのうち我が国所属と騙るかもしれぬ」
繰り返すが、薬師や治癒士を騙るのは重罪だ。まして今回の連中は偽の薬剤を扱っている。
これは各国でも決して許されない事であり断罪されてしかるべきである。
3日後、ユングクヴィストの元に顔を出したアンナリーナに、エレアント公爵から国王発行の【処刑許可書】と現在わかっている情報が渡された。
そしてアンナリーナは馬車の旅に戻っていく。
ミルバラからアシードまでは約10日の日程だ。
ここからは通常の旅程となり、野営地と村の宿とで順番に宿泊する事になる。
そして何事もなくアシードに着いたアンナリーナたちは、しばらくの間この地を拠点とする事になる。
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