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第四章

174『忍び寄る手』

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 陽が暮れてからの到着から、宿をとり、夕食ののち部屋に入る。
 そしてようやく一服したアンナリーナは慎重に探査を始めた。

「!!」

 思わず、といった様子で身を引いたアンナリーナは傍のテオドールを見上げる。そして念話で話しかけた。

『熊さん、当たりみたい』

『どうした? リーナ』

 テオドールは訝しげだ。

『この村、普通じゃない。
 宿の中にも私たちを監視している目があるし、敵意を持ってる人たちがいる……村人全部じゃないけど』

『どうする?バルトリ殿のところに行って話すか?』

 アンナリーナは考えた。

『今夜は下手に動かない方がいいね。
 皆の部屋は結界で囲むよ』

 まんじりとした、胃が痛む夜が始まった。



 翌朝、いささか顔色の悪いアンナリーナが階下の食堂に行くと、もう皆が揃っていて朝食を食べていた。

「おはようございます」

 この村から出るまでは、皆に気取られるわけにはいかない。
 アンナリーナは笑顔を浮かべて席に着いた。
 口にする朝食もほとんど味が感じられない。自分たちだけならこれほどの圧力を受けないのだが、他人の、それも護衛対象を守らないといけないプレッシャーが半端ではない。

「では、食事が済んだら出発しましょうか。私は馬車を回して来ます」

 ダマスクの足元にはもう荷物が置かれている。
 アンナリーナは震えそうになる足を叱咤して、再び階段を上がった。

『ここで何か仕掛けてくる様子はないけど、わからないね。
 しばらくは注意した方がいいかも』

 念話で遣り取りしたふたりは頷き合い、アンナリーナは常時【危機察知】【悪意察知】をオンにした。

 そこにナビの声が割り込んでくる。

『主人様、この村の奥に、公表されていない裏街道があるようです。
 昨夜から何度か動きがあったのですが、先程は複数人数が動いたようです』

『その、昨夜からの動きはモニターしてる?』

『はい、すべてマップに提示出来ます』

 次から次へと持ち上がる問題に眩暈がして来そうだ。
 そして無事出発し、馬車が村を出てひとまずホッとしているとまた、トラブルが持ち上がった。

 順調に走っていると思われた馬車が、急にガタガタと揺れ、街道に止まる。
 何事かと飛び出していった冒険者たちとテオドールに続いて、アンナリーナも降りていくと、ダマスクが怒りのあまり顔を真っ赤にしている。

「誰かが車輪に細工しやがった!
 それもご丁寧に、すぐには壊れないように。もう少し速度を上げたらバラバラになるところだったぜ!」

 すぐに予備の車輪と交換しようとするダマスクにアンナリーナは言う。

「待って!
 ……もう、こんな事になるなんて!!
 皆んな、これから見ることには一切突っ込みなしで!」

 アンナリーナのインベントリから馬車が現れる。
 同時にテオドールの指示によって乗り合い馬車から馬が外された。
 瞬時に乗り合い馬車がアンナリーナのインベントリに収納され、代わりにアンナリーナの馬車にエピオルスたちが繋がれる。

「さあ、皆んな中に入って」

 そうこうするうちに、念話で呼び出されたセトとイジが馬車から降りて来た。
 彼らが御者台に収まり、馬たちを並走出来るように繋ぐと、馬車が動き出す。
 エピオルスは馬たちの走れる限界近くの速度で走り、結界で囲われ、風魔法で補助された馬車はあっという間にスピードに乗り、この地域から離れるために疾走した。

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