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第四章

173『野営地での宿泊』

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 アンナリーナと今回の旅の仲間たちは、出発前にある話し合いをしていた。

「では村を避けて、その先の野営地まで向かう。
 少々揺れるだろうが勘弁してくれ」

 そう、隊商を襲った容疑者がひそんでいるかもしれない点在する村を避けて、少なくともアンナリーナたちが乗り合い馬車に乗ったあの村までは、村々に寄らない事にした。
 確かに野営地も危険だが、迂闊に村の中に入って閉じ込められるのを恐れたのだ。
 もちろんアンナリーナも対抗手段を取るつもりでいる。



 港湾都市アシードに向かって旅立った第一日目、その夜の野営地にたどり着いたのはもうどっぷりと夜闇に沈んだ、もはや深夜とも言える時間帯だった。

「お疲れ様!
 私はすぐに食事の支度をしますね」

 アンナリーナは一番に馬車から降り、手早く作業台と簡易魔導コンロを取り出した。
 こういう時のためにインベントリには色々なスープやシチューの鍋が入っている。
 今夜はその中から具沢山ミネストローネを選んだ。
 このミネストローネには細かく折ったスパゲッティが入っていて、主食がわりにもなる、今日のようにゆっくりと食事の出来ない時のためにストックしていたものだ。
 これにバターの入ったロールパン、ゆで玉子とハムのポテトサラダ、トマトがテーブルに並べられていく。

「手早く食べられるものにしました。
 量はたっぷりあるので遠慮なく食べて下さい」

 男たちは大きめの深皿に入ったミネストローネに夢中だ。
 それはトマトの酸味とベーコンの風味が絶妙に絡み合い、それに野菜の甘みがプラスされて、さらにパスタが入っている。
 夏前とはいえ夜の冷気に冷えた身体が、熱いスープで暖められていく。
 彼らは言葉もなく、食事をかき込んでいた。

 満腹になって、ひと息ついた男たちが朝までの見張りの順番を決めていた。
 そこに片づけの終わったアンナリーナが顔を出した。

「見張りですか?
 一応結界を張ってあるので大丈夫だと思いますが……」

「リーナ殿は結界も張れるのか」

 もう、何でもありのアンナリーナに、バルトリは開いた口が塞がらない。

「危険地域ですからね。
 見張りも、うちの従魔を出しましょうか?」

 元隊商の者たちはセトらに馴染んでいるが、乗り合い馬車組は初めて会うだろう従魔に興味津々である。


 最初の見張り当番のものを残して、他のものがテントに引き揚げた後、アンナリーナとテオドールは自身のテントの中で話し合っていた。

「探査の結果だけど、今このあたりに脅威になるものはいないわ。
 魔獣も人間もね」

「では、今夜は無事そうだな」

 テオドールのホッとした瞬間だった。




 当然、無事に朝を迎えた一行は次の野営地に向かう。
 そしてそれを繰り返し、アンナリーナたちが初めて乗り合い馬車に乗った村にやって来た。
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