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第四章
154『野営地の惨劇』
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「何……これ?」
野営地いっぱいに広がる、ぐしゃぐしゃに壊れた馬車の残骸。
それはアンナリーナを、一瞬だが現実逃避させるほどの光景だった。
「酷い……」
傍でテオドールの呟きが聞こえる。
冒険者としての経験が長い彼を呆然とさせるほどの惨状は、夕陽に照らされて、その散々たる状況を際立たせている。
その時、先に我に返ったアンナリーナが叫んだ。
「熊さん、生きてるひとがいる!!」
アンナリーナが駆け寄り、瓦礫をかき分け始める。
だがすぐにらちがあかないと気づいたのだろう、馬車を出して彼らの名を呼んだ。
「セト!イジ!ツァーリ! 出てきて!」
アンナリーナに、その名を呼ばれた僕たちは、飛び出すように馬車から出てくると、いとも簡単に瓦礫を剥がしていく。
「こっちにも生存反応がある!
イジ、来て!」
そこに、エピオルスを繋いでいたテオドールが加わり、悍ましい光景の中、救助を始めた。
「こっちも、あっちにも生きてるひとがいる!」
外でのっぴきならない事態が起きていると気づいたアンソニーやガムリも出て来て、アンナリーナが示した場所の瓦礫を退けていくと、幾人もの瀕死の状態の人が見つかった。
本当に危険な状態の者には、アンナリーナがその場で【治癒魔法】をかける。
まずは命に別状がない状態にして、救護用に出したテントに並べていく。
そこではまず、アラーニェとアマルによって着衣を緩め、傷口を水で洗っていった。
結局、助けられたのは5人。
あたりには、見るからに冒険者と思われる、アンナリーナたちが間に合わず冥界に旅立った者たちの遺骸がいくつもあったが、それにしても少ないことに気づいていた。
「熊さん、これは……ちょっとおかしくない?」
馬車の状況からして魔獣に襲われたように見えるのだが、残された遺骸の数が少なすぎる。
この場で食べられてしまったにしては、普通何か身の回りのものが残るはずだ。
「生き残った奴らの、誰かが目を覚まさなければ……わからんな」
その頃、馬車の瓦礫をひとところにまとめていたセトたちも、瓦礫に魔獣の歯型などがないか確かめていたのだが、別の痕跡を見つけて困惑していた。
「主人、少しいいか?」
セトがテントの入り口から顔を覗かせて、アンナリーナを呼んだ。
アンナリーナ今、怪我人たちを傷薬だけで治療している。
今回は一応、ポーションの利用は任意とすることにしたのだ。
「どうしたの? セト」
アンナリーナが立ち上がり、近寄ってくる。
そして、もう真っ暗な外に出た。
「これを見てくれ」
差し出されたのは馬車の側面だった比較的大きな木材の瓦礫だ。
「え? 一体何?」
はじめ、黒っぽく塗られた板の何が不都合なのかわからなかったが、よくよく見てみると。
「これ……焦げてる?」
「主人、これは俺の想像なんだが、この馬車は火系魔法で吹き飛ばされたのではないかと思う。
僅かだが魔法の残滓を感じないか?」
そう言われてアンナリーナが【魔力察知】してみると、今はひとところに集められた瓦礫と、野営地全体から薄っすらと魔力が感じられる。
「ふわぁ、あの人たちは魔法が使える誰かに襲撃されたんだね」
残された状況から恐らく、襲撃者は応戦してきた護衛を殺し積荷を奪って、生き残った者を商品として連れ去る間際、火球かファイアアローで馬車を壊して証拠隠滅しようとしたのだろう。
「大変だ……」
アンナリーナは荒々しく踵を返して、テントの中に戻っていった。
野営地いっぱいに広がる、ぐしゃぐしゃに壊れた馬車の残骸。
それはアンナリーナを、一瞬だが現実逃避させるほどの光景だった。
「酷い……」
傍でテオドールの呟きが聞こえる。
冒険者としての経験が長い彼を呆然とさせるほどの惨状は、夕陽に照らされて、その散々たる状況を際立たせている。
その時、先に我に返ったアンナリーナが叫んだ。
「熊さん、生きてるひとがいる!!」
アンナリーナが駆け寄り、瓦礫をかき分け始める。
だがすぐにらちがあかないと気づいたのだろう、馬車を出して彼らの名を呼んだ。
「セト!イジ!ツァーリ! 出てきて!」
アンナリーナに、その名を呼ばれた僕たちは、飛び出すように馬車から出てくると、いとも簡単に瓦礫を剥がしていく。
「こっちにも生存反応がある!
イジ、来て!」
そこに、エピオルスを繋いでいたテオドールが加わり、悍ましい光景の中、救助を始めた。
「こっちも、あっちにも生きてるひとがいる!」
外でのっぴきならない事態が起きていると気づいたアンソニーやガムリも出て来て、アンナリーナが示した場所の瓦礫を退けていくと、幾人もの瀕死の状態の人が見つかった。
本当に危険な状態の者には、アンナリーナがその場で【治癒魔法】をかける。
まずは命に別状がない状態にして、救護用に出したテントに並べていく。
そこではまず、アラーニェとアマルによって着衣を緩め、傷口を水で洗っていった。
結局、助けられたのは5人。
あたりには、見るからに冒険者と思われる、アンナリーナたちが間に合わず冥界に旅立った者たちの遺骸がいくつもあったが、それにしても少ないことに気づいていた。
「熊さん、これは……ちょっとおかしくない?」
馬車の状況からして魔獣に襲われたように見えるのだが、残された遺骸の数が少なすぎる。
この場で食べられてしまったにしては、普通何か身の回りのものが残るはずだ。
「生き残った奴らの、誰かが目を覚まさなければ……わからんな」
その頃、馬車の瓦礫をひとところにまとめていたセトたちも、瓦礫に魔獣の歯型などがないか確かめていたのだが、別の痕跡を見つけて困惑していた。
「主人、少しいいか?」
セトがテントの入り口から顔を覗かせて、アンナリーナを呼んだ。
アンナリーナ今、怪我人たちを傷薬だけで治療している。
今回は一応、ポーションの利用は任意とすることにしたのだ。
「どうしたの? セト」
アンナリーナが立ち上がり、近寄ってくる。
そして、もう真っ暗な外に出た。
「これを見てくれ」
差し出されたのは馬車の側面だった比較的大きな木材の瓦礫だ。
「え? 一体何?」
はじめ、黒っぽく塗られた板の何が不都合なのかわからなかったが、よくよく見てみると。
「これ……焦げてる?」
「主人、これは俺の想像なんだが、この馬車は火系魔法で吹き飛ばされたのではないかと思う。
僅かだが魔法の残滓を感じないか?」
そう言われてアンナリーナが【魔力察知】してみると、今はひとところに集められた瓦礫と、野営地全体から薄っすらと魔力が感じられる。
「ふわぁ、あの人たちは魔法が使える誰かに襲撃されたんだね」
残された状況から恐らく、襲撃者は応戦してきた護衛を殺し積荷を奪って、生き残った者を商品として連れ去る間際、火球かファイアアローで馬車を壊して証拠隠滅しようとしたのだろう。
「大変だ……」
アンナリーナは荒々しく踵を返して、テントの中に戻っていった。
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