379 / 577
第四章
139『食料品店での情報』
しおりを挟む
「美味しいです~」
皿に乗っているのは、薄く切った黒パンの上に玉子や、ハム、ソーセージなどをのせた、一口オープンサンドのような試食の品だ。
それをひとつ、口にしたアンナリーナは、思わず叫んでいた。
「そうかい、そうかい。
うちの弁当は皆に評判がいいんだよ」
「特にこのハムやソーセージは絶品です! これは別に購入したいです」
老婆は目尻を下げて喜んだ。
「ありがとうね。
よかったらこちらでお茶でもどうだい?」
店の奥のテーブルを囲み、アンナリーナとテオドールは老婆とのおしゃべりを楽しんでいた。
その中で老婆はこれからの旅を続けるための情報を教えてくれた。
「まずこの村を出て、その夜は野営となる。翌日は余程のことがない限り次の村での宿泊となるんだが、最低でも当日の昼、夜、翌日の朝、昼の分の食事は用意しなければならないんだよ」
「なるほど、だからこの村はこんなにお店が充実しているのね」
「何か、押し売りしているみたいだけど、保存の効く食材も色々工夫していて、お馴染みの干し肉も、食べやすいように柔らかいタイプもあるんだよ」
「私はアイテムバッグを持っているので、あまり保存食にこだわらないのだけど、なるほど普通はそうよね」
「そう、乗り合い馬車の旅では、食事は基本各自が用意するんだ。
こんな事は、あなたたちなら重々承知だよね。
それと水も用意しないと駄目なんだよ」
これも馬車旅では珍しくない事だが。
「私は【ウォーター】で飲料水を出すことができますが、途中で補給できないのですか?」
「ああ、そうなんだよ」
老婆は言葉を濁したので、アンナリーナはそれ以上を聞く事はなかった。
「ではお買い物をさせていただきます」
アンナリーナのインベントリには大量な備蓄があるが、ここでも小麦粉と豆類を購入した。
新鮮な蕪を見つけて、これも買う。
そして煮物に向いた、癖のない黄色い人参も買った。
ハムはブロックで、生ハムもあったのでこれも買いだ。
ソーセージも、プレーンなものとスパイスの効いたもの、両方を買い込んだ。
「では、お弁当を3つ、予約させてもらいます。明朝取りに来ますね」
にこやかに買い物を終え、ご機嫌で宿に戻っていくアンナリーナは今日買った食材で作るスープの事で頭がいっぱいだった。
宿の食堂兼酒場は乗り合い馬車の乗客で賑わっていた。
そこにアンナリーナとテオドールが加わる。
「無事、席が取れたようだね?」
夜の定食を持ってきた女将にそう言われて、アンナリーナは頷いた。
「追加で彼に麦酒を。私にはぶどうジュースをお願いします」
「はいよ!あとは追加はいいかい?」
「燻製肉の盛り合わせを頼む」
テオドールはまず、酒を楽しむつもりのようだ。
「熊さん、私も……」
「リーナはやめといた方がいいな。
前回は翌朝、頭が痛いと言ってたろう?」
いくら自分で治癒できるとはいえ、馬車旅を前にして具合が悪いのは拙い。
「うん、わかった」
こういう時、アンナリーナは案外素直だ。
すぐに定食のメイン、鳥の照り焼きに意識を移し、ソースなのか付け合わせかわからないグレイビーソースみたいなものをフォークですくっていた。
「明日、楽しみだね。熊さん」
皿に乗っているのは、薄く切った黒パンの上に玉子や、ハム、ソーセージなどをのせた、一口オープンサンドのような試食の品だ。
それをひとつ、口にしたアンナリーナは、思わず叫んでいた。
「そうかい、そうかい。
うちの弁当は皆に評判がいいんだよ」
「特にこのハムやソーセージは絶品です! これは別に購入したいです」
老婆は目尻を下げて喜んだ。
「ありがとうね。
よかったらこちらでお茶でもどうだい?」
店の奥のテーブルを囲み、アンナリーナとテオドールは老婆とのおしゃべりを楽しんでいた。
その中で老婆はこれからの旅を続けるための情報を教えてくれた。
「まずこの村を出て、その夜は野営となる。翌日は余程のことがない限り次の村での宿泊となるんだが、最低でも当日の昼、夜、翌日の朝、昼の分の食事は用意しなければならないんだよ」
「なるほど、だからこの村はこんなにお店が充実しているのね」
「何か、押し売りしているみたいだけど、保存の効く食材も色々工夫していて、お馴染みの干し肉も、食べやすいように柔らかいタイプもあるんだよ」
「私はアイテムバッグを持っているので、あまり保存食にこだわらないのだけど、なるほど普通はそうよね」
「そう、乗り合い馬車の旅では、食事は基本各自が用意するんだ。
こんな事は、あなたたちなら重々承知だよね。
それと水も用意しないと駄目なんだよ」
これも馬車旅では珍しくない事だが。
「私は【ウォーター】で飲料水を出すことができますが、途中で補給できないのですか?」
「ああ、そうなんだよ」
老婆は言葉を濁したので、アンナリーナはそれ以上を聞く事はなかった。
「ではお買い物をさせていただきます」
アンナリーナのインベントリには大量な備蓄があるが、ここでも小麦粉と豆類を購入した。
新鮮な蕪を見つけて、これも買う。
そして煮物に向いた、癖のない黄色い人参も買った。
ハムはブロックで、生ハムもあったのでこれも買いだ。
ソーセージも、プレーンなものとスパイスの効いたもの、両方を買い込んだ。
「では、お弁当を3つ、予約させてもらいます。明朝取りに来ますね」
にこやかに買い物を終え、ご機嫌で宿に戻っていくアンナリーナは今日買った食材で作るスープの事で頭がいっぱいだった。
宿の食堂兼酒場は乗り合い馬車の乗客で賑わっていた。
そこにアンナリーナとテオドールが加わる。
「無事、席が取れたようだね?」
夜の定食を持ってきた女将にそう言われて、アンナリーナは頷いた。
「追加で彼に麦酒を。私にはぶどうジュースをお願いします」
「はいよ!あとは追加はいいかい?」
「燻製肉の盛り合わせを頼む」
テオドールはまず、酒を楽しむつもりのようだ。
「熊さん、私も……」
「リーナはやめといた方がいいな。
前回は翌朝、頭が痛いと言ってたろう?」
いくら自分で治癒できるとはいえ、馬車旅を前にして具合が悪いのは拙い。
「うん、わかった」
こういう時、アンナリーナは案外素直だ。
すぐに定食のメイン、鳥の照り焼きに意識を移し、ソースなのか付け合わせかわからないグレイビーソースみたいなものをフォークですくっていた。
「明日、楽しみだね。熊さん」
1
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
姉の代わりでしかない私
下菊みこと
恋愛
クソ野郎な旦那様も最終的に幸せになりますので閲覧ご注意を。
リリアーヌは、夫から姉の名前で呼ばれる。姉の代わりにされているのだ。それでも夫との子供が欲しいリリアーヌ。結果的に、子宝には恵まれるが…。
アルファポリス様でも投稿しています。
魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される
日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。
そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。
HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!
ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。
ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。
しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。
その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!
【完結】はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話【R18】
ケロリビ堂
恋愛
万年はらぺこのおぼこサキュバス、シルキィが美しく性欲の強い男エルフ、レイモンドと一夜のあやまちで淫紋を用いたサキュバスの契約をしてしまう。その日からレイモンドのダンジョンマッピングの仕事を手伝いながら性欲処理の相手として一緒にダンジョンに潜ることになったシルキィだが、エルフらしくなく人間臭いレイモンドに惹かれていく。レイモンドの中でもまた、シルキィの存在は大きくなっていくが……。(ムーンライトノベルにも投稿している作品です)
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
もふもふと一緒 〜俺は狙われているみたいだ〜
コプラ
BL
俺はもふもふの世界に住んでいる。獰猛系のもふもふなので、俺は常に身の危険を感じているんだ。俺たちの祖先の血筋がもふもふしてるせいで、性格や行動、体格がそれに左右はされると言うおまけつき。
俺がこの世界に違和感を持つのは前世の記憶のせいだ。小さい頃は妙に動物的だと思っていたけど、姉に発情期が来てトラウマになった。俺は発情期怖すぎてこっそり薬飲んでるんだ。でも、俺につきまとう奴らが何か最近不穏なんだよな。俺の発情期、待ってるみたいでさ。
違和感を感じながら学園生活をしている高2の雪弥は、発情期の不安を抱えながら、友人達に守られつつも狙われて、毎日を過ごしている。雪弥には誰にも言ってない秘密がいくつかあって…。発情期が無事終わっても更なる問題勃発で⁉︎
希少種のせいもあって、美人過ぎるが、中身は案外男らしい雪弥。美人に寄って来る有象無象のせいで表情筋が死んでる雪弥が、発情期が終わった途端デレ甘に⁉︎周囲を翻弄する雪弥だった。発情期やマーキングから逃れられない獣人を先祖に持つ俺たちの青春学園物語。
条件付きチート『吸収』でのんびり冒険者ライフ!
ヒビキ タクト
ファンタジー
旧題:異世界転生 ~条件付きスキル・スキル吸収を駆使し、冒険者から成り上がれ~
平凡な人生にガンと宣告された男が異世界に転生する。異世界神により特典(条件付きスキルと便利なスキル)をもらい異世界アダムスに転生し、子爵家の三男が冒険者となり成り上がるお話。 スキルや魔法を駆使し、奴隷や従魔と一緒に楽しく過ごしていく。そこには困難も…。 従魔ハクのモフモフは見所。週に4~5話は更新していきたいと思いますので、是非楽しく読んでいただければ幸いです♪ 異世界小説を沢山読んできた中で自分だったらこうしたいと言う作品にしております。
ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む
紫楼
ファンタジー
酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。
私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!
辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!
食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。
もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?
もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。
両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?
いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。
主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。
倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。
小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。
描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。
タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。
多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。
カクヨム様にも載せてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる