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第四章

136『説得と出発』

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「主人様、素材になさるおつもりなら私どもにお任せ下さればよろしいですが、アンデッドとして使役なさるのならご自分で管理した方がよろしいかと」

 自らもアンデッドである死霊術師ネロが、慇懃な言葉遣いで諌めてきた。

 今は夕餉の後、珍しく皆集まって食後のお茶、及び食後酒を飲んでいた。
 そんな中始まったのはまるで説教するようなネロの “ 進言 ”である。
 昼間のアンナリーナの『単独行動』の計画を聞き及んだ “ 家族たち ”は色んな意味で怒った。
 基本アンナリーナに過保護な彼らは絶対に認めないと息巻いたのだ。

 そしてとりあえず夕餉にしようという事になり……今に至る。

「う~ん、やっぱり問題あるか……
 わかった。【猿穴】に目処がつくまでここにいるよ。
 でもその間に情報を集めるのはいいよね?」

 そう言われてテオドールは渋々了承するしかなかった。
 “ 家族 ”の中で唯一、アンナリーナを言い包める事の出来るネロも頷いて、アンナリーナが先に部屋に下がっていった後、テオドールに何事がアドバイスしていた。


 翌朝、アンナリーナが治癒魔法遣いでなければ、とても起き上がれないほど腰が抜けたようになってしまって、思わず隣で眠っているテオドールを睨みつけてしまう。

「まぁ……しょうがないか」

 激しく、念入りに愛された身体は本来なら一日中ベッドでダウンコースだ。
 普段ならこれほど責め立てないテオドールの、精一杯の抗議なのだろう。

「ごめんなさい、熊さん。
【回復】」

 ギシギシと軋んでいた全身から、すべての違和感がなくなりベッドから出ようとすると、太い腕が腰に回され引き寄せられてしまう。

「俺も一緒に行く」

「熊さん……」

「これは譲れない。一緒に行く」

「うん、わかった。ごめん、熊さん」

 心配させた自覚があるアンナリーナは、再び逞しい胸に顔を寄せた。




【猿穴】が落ち着くまで3日。
 その後もしばらく監視を続ける為、イジを始めツァーリやネロが待機する事になり、ここからアンナリーナたちは別行動となる。
 と、言ってもテント経由でいつでも戻って来られる。
 だから “ 家族たち ”も承諾したのだがアラーニェなどは見るからに不満そうだ。



 木漏れ日の差す森の中から街道に出て、アンナリーナは空を見上げた。
 遮るもののない視界は真っ青な空と真っ白な雲を捉えている。
 それがゆっくりとアンナリーナたちの上を通り過ぎていって、心地よい風が吹いていた。

「ここから村まで半日くらい?
 そこから乗り合い馬車が出ているようだからそれに乗って行こう」

「こんな田舎なんだ。
 馬車だって、そうそう出てないだろう」

「時間を潰す手段なんて、いくらでもあるよ」

 新婚旅行みたいでちょっと楽しい、と思ったのは内緒だ。



 村では一日待っただけで乗り合い馬車に乗ることになる。
 意外だったのは、この馬車の起点がここではなかった事だ。
 この街道はまだ南に続き、それは若干西側に向きながら最南端まで続く。
 そこには港があり、干した魚や、荷揚げした物資を運ぶ馬車が、定期的に行き交っているのだ。
 アンナリーナたちが乗る馬車も港から運行されていて、事前に、定員いっぱいなら次の馬車になる故、伝えられていた。

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