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第四章
95『前触れ』
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「な、何という事をしてくれたのだ!!」
常は冷静沈着、声を荒げる事など滅多にない王が、怒りのあまりその身を震わせている。
先日の、第1騎士団への襲撃事件で傷を負った騎士たちへの治療……それも王弟の命を救ったばかりか奇跡の御業で欠損した四肢を再生して見せた。
ユングクヴィストの話では超神級のポーションが使われた可能性が高いと言う。
そんな “ 恩人 ”を怒らせ、怯えさせ、逃亡に追い込んだ愚か者を前に、王はその怒りを隠そうともしない。
「一体、どこからそんな考えが出てくるのだ?
かの錬金薬師殿には、この私が正式に求婚して断られているのだぞ?
彼女には伴侶もいるのだ。
それを高圧的に婚姻を迫ればどうなるか、わからなかったと申すか?!」
怒りのあまり、握りしめた拳は真っ白になっている。
王を始め、居並ぶ重鎮らの前で跪き、首を垂れる軍務大臣には反論の言葉もない。
彼は王弟の命が救われた経過を聞き及び、単純に話を進めてしまったのだから、ここには王弟本人の気持ちも反映されていない。
第一、王弟は失った血が多すぎて、未だベッドから起き上がれない状態なのだ。当時アンナリーナを認識していたかも怪しい状態だった。
そこでユングクヴィストが話し始める。
「恐らく……しばらくはこの国には近づかないでしょう。
ただ、まったく戻って来ないつもりではないようで、これを預かって参りました」
アンナリーナは出奔前にユングクヴィストを訪ねていた。
そこであるものを委ねていたのだ。
「それは?」
一枚の紙を渡された王はそこに書かれた内容に目を瞠った。
アンナリーナたちは今、アグボンラオールの王都ベソリナに到着しようとしていた。
「お?
嬢ちゃんたち、あれからどうしていたんだい?」
先日入国した時に担当してくれた兵士が、今日は王都の入り口を護る任務に就いている。
「あちこちで採取をしていたんだけど、何かあった?」
「大きい声じゃ言えないんだが、ダンジョンが出来かかっているんじゃないかと噂になっている」
「それは【迷い森】の事ですか?」
「いいや、違うんだ。
もしよければギルドで詳しい話を聞いてやってくれないだろうか」
アンナリーナとテオドールは視線を交わして頷き合った。
「わかったわ。熊さん、急ぎましょう」
何やら怪しい風向きになってきたようだ。
街中の様子は以前と変わりないように見える。
人々は溌剌としていて、何か危機が迫っているようには見受けられない。
アンナリーナはそんななか、ギルドに急いだ。
いつもならする買い食いも、今に限っては無しだ。
そうしてやって来たギルドは、思ったよりも閑散としていた。
「こんにちは。
私はリーナと言います。
鑑定士さんにお会いしたいのですが」
ギルドカードを見せて話しかけると、納得したように頷いて、立ち上がる。
そのままアンナリーナたちを案内して、あるドアをノックした。
「はい、どうぞ」
「失礼します。お客様をお連れしました」
そこでようやく顔を上げた鑑定士が、アンナリーナたちを見て動きを止める。
案内して来た受付嬢に礼を言って下がらせると、改めて向き直った。
「ようこそ、テオドール殿とリーナ殿。
私はこの王都支部の鑑定士と副ギルドマスターを兼ねているアレッサンドロです」
常は冷静沈着、声を荒げる事など滅多にない王が、怒りのあまりその身を震わせている。
先日の、第1騎士団への襲撃事件で傷を負った騎士たちへの治療……それも王弟の命を救ったばかりか奇跡の御業で欠損した四肢を再生して見せた。
ユングクヴィストの話では超神級のポーションが使われた可能性が高いと言う。
そんな “ 恩人 ”を怒らせ、怯えさせ、逃亡に追い込んだ愚か者を前に、王はその怒りを隠そうともしない。
「一体、どこからそんな考えが出てくるのだ?
かの錬金薬師殿には、この私が正式に求婚して断られているのだぞ?
彼女には伴侶もいるのだ。
それを高圧的に婚姻を迫ればどうなるか、わからなかったと申すか?!」
怒りのあまり、握りしめた拳は真っ白になっている。
王を始め、居並ぶ重鎮らの前で跪き、首を垂れる軍務大臣には反論の言葉もない。
彼は王弟の命が救われた経過を聞き及び、単純に話を進めてしまったのだから、ここには王弟本人の気持ちも反映されていない。
第一、王弟は失った血が多すぎて、未だベッドから起き上がれない状態なのだ。当時アンナリーナを認識していたかも怪しい状態だった。
そこでユングクヴィストが話し始める。
「恐らく……しばらくはこの国には近づかないでしょう。
ただ、まったく戻って来ないつもりではないようで、これを預かって参りました」
アンナリーナは出奔前にユングクヴィストを訪ねていた。
そこであるものを委ねていたのだ。
「それは?」
一枚の紙を渡された王はそこに書かれた内容に目を瞠った。
アンナリーナたちは今、アグボンラオールの王都ベソリナに到着しようとしていた。
「お?
嬢ちゃんたち、あれからどうしていたんだい?」
先日入国した時に担当してくれた兵士が、今日は王都の入り口を護る任務に就いている。
「あちこちで採取をしていたんだけど、何かあった?」
「大きい声じゃ言えないんだが、ダンジョンが出来かかっているんじゃないかと噂になっている」
「それは【迷い森】の事ですか?」
「いいや、違うんだ。
もしよければギルドで詳しい話を聞いてやってくれないだろうか」
アンナリーナとテオドールは視線を交わして頷き合った。
「わかったわ。熊さん、急ぎましょう」
何やら怪しい風向きになってきたようだ。
街中の様子は以前と変わりないように見える。
人々は溌剌としていて、何か危機が迫っているようには見受けられない。
アンナリーナはそんななか、ギルドに急いだ。
いつもならする買い食いも、今に限っては無しだ。
そうしてやって来たギルドは、思ったよりも閑散としていた。
「こんにちは。
私はリーナと言います。
鑑定士さんにお会いしたいのですが」
ギルドカードを見せて話しかけると、納得したように頷いて、立ち上がる。
そのままアンナリーナたちを案内して、あるドアをノックした。
「はい、どうぞ」
「失礼します。お客様をお連れしました」
そこでようやく顔を上げた鑑定士が、アンナリーナたちを見て動きを止める。
案内して来た受付嬢に礼を言って下がらせると、改めて向き直った。
「ようこそ、テオドール殿とリーナ殿。
私はこの王都支部の鑑定士と副ギルドマスターを兼ねているアレッサンドロです」
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