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第四章
64『派閥』
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エレアント公爵にエスコートされ、サロンのソファーに落ち着いたアンナリーナは、周りを親子ほど年の離れた男たちに囲まれて困惑していた。
「え……っと、これはどういった状況でしょうか?」
「すまんの、ダビネチュスク大公殿下がお見えになるまで、ちと待って欲しい」
ユングクヴィストが口にした名は、この館の主人である人物である。
そして大公は、ここにいるエレアント公爵の従兄弟でもあり、派閥の領袖だ。
「大公様が私に何の御用でしょうか?」
本人は真面目にわからないのだが、側から見れば今更である。
「リーナ殿がくれた助言により、我が家は救われた。
あのままでは政略的に拙い事になっていたわけで、それは派閥の力加減の崩壊を招くところだった」
エレアント公爵が言うところでは、アンナリーナは知らずして、高度な宮廷謀議にその身を沈めていたようだ。
「あの……私は公爵様のお嬢様を破滅させたわけですよね?
たしかに首のすげ替えは提案しましたが、私に対しての恨みとかは……ないのですか?」
アンナリーナはこてんと首を傾げて見せた。
「無いな。
あれは完全な政略的入内であって、そのために育成してきた駒だった。
第一、それほど大事なら表に出さんよ」
「はぁ……さようでございますか」
あまりにもドライなエレアント公爵に、アンナリーナは目を白黒させている。
「まあ、今夜はお披露目のようなものじゃ。
これが済めばそなたの周りは多少、静かになるじゃろう」
ユングクヴィストの言葉に、アンナリーナは改めて震撼する。
本気でこの国から逃げ出したくなってきた。
「そうならんように、この場は設けておる……心配せずともよいよ」
ユングクヴィストが子供にするように、綺麗に結われた髪を撫でた。
心を読まれているようで、ゾッとしたアンナリーナは、さらに強く見られているのを感じ、ハッとする。
ホールの方で、何か騒ぎが起きていたのは知っていた。
その騒ぎが近づいてくる気配を感じ、ユングクヴィストと顔を見合わせていると、サロンにひとりの女性が駆け込んできた。
「どこ?どこにいるの?」
背の低いアンナリーナは、男たちに囲まれ埋没していて目に付きにくかったのだろう。
その女性……カテレインはキョロキョロとアンナリーナを探していた。
「カテレイン、いい加減にしなさい」
追いついてきた王がカテレインを捕まえて、サロンから出ていこうとする。
「ほら、もうすぐダンスが始まる。
舞踏室に行こう」
「ええっ、ライオネル様……
私、どうしてもあの首飾りが欲しいの」
「宰相を通して話を持って行こう。
それでよいな?」
「ダメダメ! 今欲しいのです!
ライオネル様は王様でしょう?
今すぐ行って、取り上げてきて下さい」
話の内容を聞いていた面々は、アンナリーナの首飾りに目をやる。
「それ、でしょうか?」
「これでしょうね」
ユングクヴィストたちはそれとなく壁を作って、アンナリーナを王の視線から遮った。
そのアンナリーナはあまりにも異常な女性に向かって【解析】してみる。
「ふ~ん、なるほどね」
舞踏会では音楽の演奏が始まり、ダンスが始まったようだ。
オーソドックスなワルツが演奏され、サロンからも人が引いていく。
「ほら、ダンスが始まったぞ。
行こう、カテレイン」
引き摺られるようにして、国王とその寵姫が退出していく。
それと入れ替わるように、挨拶の済んだ大公夫妻がやってきた。
「え……っと、これはどういった状況でしょうか?」
「すまんの、ダビネチュスク大公殿下がお見えになるまで、ちと待って欲しい」
ユングクヴィストが口にした名は、この館の主人である人物である。
そして大公は、ここにいるエレアント公爵の従兄弟でもあり、派閥の領袖だ。
「大公様が私に何の御用でしょうか?」
本人は真面目にわからないのだが、側から見れば今更である。
「リーナ殿がくれた助言により、我が家は救われた。
あのままでは政略的に拙い事になっていたわけで、それは派閥の力加減の崩壊を招くところだった」
エレアント公爵が言うところでは、アンナリーナは知らずして、高度な宮廷謀議にその身を沈めていたようだ。
「あの……私は公爵様のお嬢様を破滅させたわけですよね?
たしかに首のすげ替えは提案しましたが、私に対しての恨みとかは……ないのですか?」
アンナリーナはこてんと首を傾げて見せた。
「無いな。
あれは完全な政略的入内であって、そのために育成してきた駒だった。
第一、それほど大事なら表に出さんよ」
「はぁ……さようでございますか」
あまりにもドライなエレアント公爵に、アンナリーナは目を白黒させている。
「まあ、今夜はお披露目のようなものじゃ。
これが済めばそなたの周りは多少、静かになるじゃろう」
ユングクヴィストの言葉に、アンナリーナは改めて震撼する。
本気でこの国から逃げ出したくなってきた。
「そうならんように、この場は設けておる……心配せずともよいよ」
ユングクヴィストが子供にするように、綺麗に結われた髪を撫でた。
心を読まれているようで、ゾッとしたアンナリーナは、さらに強く見られているのを感じ、ハッとする。
ホールの方で、何か騒ぎが起きていたのは知っていた。
その騒ぎが近づいてくる気配を感じ、ユングクヴィストと顔を見合わせていると、サロンにひとりの女性が駆け込んできた。
「どこ?どこにいるの?」
背の低いアンナリーナは、男たちに囲まれ埋没していて目に付きにくかったのだろう。
その女性……カテレインはキョロキョロとアンナリーナを探していた。
「カテレイン、いい加減にしなさい」
追いついてきた王がカテレインを捕まえて、サロンから出ていこうとする。
「ほら、もうすぐダンスが始まる。
舞踏室に行こう」
「ええっ、ライオネル様……
私、どうしてもあの首飾りが欲しいの」
「宰相を通して話を持って行こう。
それでよいな?」
「ダメダメ! 今欲しいのです!
ライオネル様は王様でしょう?
今すぐ行って、取り上げてきて下さい」
話の内容を聞いていた面々は、アンナリーナの首飾りに目をやる。
「それ、でしょうか?」
「これでしょうね」
ユングクヴィストたちはそれとなく壁を作って、アンナリーナを王の視線から遮った。
そのアンナリーナはあまりにも異常な女性に向かって【解析】してみる。
「ふ~ん、なるほどね」
舞踏会では音楽の演奏が始まり、ダンスが始まったようだ。
オーソドックスなワルツが演奏され、サロンからも人が引いていく。
「ほら、ダンスが始まったぞ。
行こう、カテレイン」
引き摺られるようにして、国王とその寵姫が退出していく。
それと入れ替わるように、挨拶の済んだ大公夫妻がやってきた。
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