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第四章
41『屈服』
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テオドールの言葉に頷いたアルバインらは、一歩後ろに下がる。
「この結界は、一度外に出ると戻れなくなるようになってる。
くれぐれも気をつけてくれ。
それと、俺ら全員が下手を打つ事は、ないと思うが、あんたらは依頼主の側に控えていてくれ」
これは、完全に足手まといになるアルバインらに対する牽制の意味合いがある。
「わかった。
俺らはタイニスの馬車の外で見張っている。テオドール、無茶はするなよ」
無茶どころか、一匹も回ってこない可能性の方が高そうだ。
テオドールが口角をあげる。
「あんたらも絶対に出て来んじゃねぇぜ」
一方、黒狼の群れを迎え討ったセトとイジは、着々とその数を減らしていた。
いくら多勢と言えど、所詮は狼の魔獣である。
森狼と比べると2倍近い個体もいるが、セトやイジの相手になるべくもない。イジの大剣が一閃するだけで首が落ち、セトの魔法で胴体から首がさよならする。
アンナリーナと言えば上空から降りてきて、群れのボスと対峙していた。
白銀の毛並みの美しい、体長3m以上ある狼。
アンナリーナは【鑑定】する。
フェンリル(狼種最上位、雄)
体力値 5380
魔力値 3795
「フェンリルなのか……」
アンナリーナの前世でのファンタジー小説の世界観では、フェンリルというのは北欧神話をルーツとした神獣であった。だが今世では、フェンリルと言えども魔獣であり、A級の討伐対象である。
「殺っちゃうのは少し惜しいよね」
しかし手抜きできる相手でもない。
アンナリーナは少しずつ魔力を乗せて、威圧をかけていった。
膨大な魔力と身体の自由を奪う圧に、フェンリルは生まれて初めて恐慌を来していた。
本来、呆気ないほど弱々しい人間の、恐怖しか感じられないその姿に、彼の腹はついに地面に押し付けられる。
『怖い、怖い、死にたくない』
今まで数多の魔獣や人間を屠ってきたフェンリルが、キャンキャンと悲鳴をあげている。
そして、残存している力を振り絞って身体を反転させたのだ。
王都の東部に広がる、魔獣の棲む森に何十年も君臨してきたフェンリルが、他者に対して腹を見せた。
そのままキャンキャンと鳴き続けているのを見て、アンナリーナは首を傾げた。
「ねえ、ナビ。あれは何をしているのかな?」
「結論から言えば、命乞いですね。
自分より上位のものに屈服しているのです」
「命乞いって言ってもねぇ」
アンナリーナは少しだけ圧を弱めた。
「主人様、この際ですので【ティム】を試してみられてはいかがですか?」
アンナリーナは今まで、従魔たちの平常時に契約を結んで来たが、本来【ティム】とはポケ○ンのように相手を弱らせ屈服させて主従契約を結ぶものだ。
圧は弱め、だが魔力はさらに強めてフェンリルを襲う。
腹を上にして動けなくなったフェンリルは、か細い声で鳴き続けている。
「もしあなたが、私に【ティム】されるつもりがあるのなら……命を助けてあげましょう。どうします?」
弱者が強者に従うのは自然界では当然のこと。
フェンリルは地に伏せ、頭を下げた。
セトとイジが、あっという間に処分した黒狼は全部で47匹。
2人はどうにか、すべての骸を回収し終わると、もうすでにアンナリーナが向かっている野営地を目指して歩き出した。
「テオドール殿にももう少し見せ場を作ってあげた方がよかっただろうか」
イジが真面目に考えている。
「2~3匹は回したと思うが、どうだろう」
「それよりご主人様はまた拾い物をなさったようだ」
自分たちも同じようなものなので、異論はないのだが。
「この結界は、一度外に出ると戻れなくなるようになってる。
くれぐれも気をつけてくれ。
それと、俺ら全員が下手を打つ事は、ないと思うが、あんたらは依頼主の側に控えていてくれ」
これは、完全に足手まといになるアルバインらに対する牽制の意味合いがある。
「わかった。
俺らはタイニスの馬車の外で見張っている。テオドール、無茶はするなよ」
無茶どころか、一匹も回ってこない可能性の方が高そうだ。
テオドールが口角をあげる。
「あんたらも絶対に出て来んじゃねぇぜ」
一方、黒狼の群れを迎え討ったセトとイジは、着々とその数を減らしていた。
いくら多勢と言えど、所詮は狼の魔獣である。
森狼と比べると2倍近い個体もいるが、セトやイジの相手になるべくもない。イジの大剣が一閃するだけで首が落ち、セトの魔法で胴体から首がさよならする。
アンナリーナと言えば上空から降りてきて、群れのボスと対峙していた。
白銀の毛並みの美しい、体長3m以上ある狼。
アンナリーナは【鑑定】する。
フェンリル(狼種最上位、雄)
体力値 5380
魔力値 3795
「フェンリルなのか……」
アンナリーナの前世でのファンタジー小説の世界観では、フェンリルというのは北欧神話をルーツとした神獣であった。だが今世では、フェンリルと言えども魔獣であり、A級の討伐対象である。
「殺っちゃうのは少し惜しいよね」
しかし手抜きできる相手でもない。
アンナリーナは少しずつ魔力を乗せて、威圧をかけていった。
膨大な魔力と身体の自由を奪う圧に、フェンリルは生まれて初めて恐慌を来していた。
本来、呆気ないほど弱々しい人間の、恐怖しか感じられないその姿に、彼の腹はついに地面に押し付けられる。
『怖い、怖い、死にたくない』
今まで数多の魔獣や人間を屠ってきたフェンリルが、キャンキャンと悲鳴をあげている。
そして、残存している力を振り絞って身体を反転させたのだ。
王都の東部に広がる、魔獣の棲む森に何十年も君臨してきたフェンリルが、他者に対して腹を見せた。
そのままキャンキャンと鳴き続けているのを見て、アンナリーナは首を傾げた。
「ねえ、ナビ。あれは何をしているのかな?」
「結論から言えば、命乞いですね。
自分より上位のものに屈服しているのです」
「命乞いって言ってもねぇ」
アンナリーナは少しだけ圧を弱めた。
「主人様、この際ですので【ティム】を試してみられてはいかがですか?」
アンナリーナは今まで、従魔たちの平常時に契約を結んで来たが、本来【ティム】とはポケ○ンのように相手を弱らせ屈服させて主従契約を結ぶものだ。
圧は弱め、だが魔力はさらに強めてフェンリルを襲う。
腹を上にして動けなくなったフェンリルは、か細い声で鳴き続けている。
「もしあなたが、私に【ティム】されるつもりがあるのなら……命を助けてあげましょう。どうします?」
弱者が強者に従うのは自然界では当然のこと。
フェンリルは地に伏せ、頭を下げた。
セトとイジが、あっという間に処分した黒狼は全部で47匹。
2人はどうにか、すべての骸を回収し終わると、もうすでにアンナリーナが向かっている野営地を目指して歩き出した。
「テオドール殿にももう少し見せ場を作ってあげた方がよかっただろうか」
イジが真面目に考えている。
「2~3匹は回したと思うが、どうだろう」
「それよりご主人様はまた拾い物をなさったようだ」
自分たちも同じようなものなので、異論はないのだが。
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