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第四章
35『応援要員とティラミス』
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使用済みの食器をアラーニェが下げているところに、アンナリーナがココットに入ったデザートを置いていく。
「毎晩……というわけじゃないけれど、初日なのでデザートもどうぞ。
甘さ控え目なので、殿方も大丈夫だと思いますよ」
まず手をつけたのは商人である、タイニスだ。
もう彼は、何が出てきても驚かない。
それほど常識外れした今回の馬車の旅に、もちろん商機を見出してもいたが、それを表に出さないように必死で堪えていた。
「むっ、これは……」
一口食べて、唸ったタイニスは、あとは一気に平らげた。
タイニスは自身、口が肥えているとは言わないがそれなりに豪勢な食事に慣れているとは思っている。
顧客に貴族などの富裕層が多いのもあり彼らの嗜好にも理解があるはずだった。だがこのデザートは……
わずかにチーズの香りがするが、一体何なのか、表面に振られている茶色い粉の正体もわからない。
酒精が感じられるので何がしかの酒が使われているようだが見当もつかない。
「リーナ殿、この菓子は一体……」
「あ、気に入ってもらえました?
これは【ティラミス】と言って、どちらかと言うと大人向けの菓子ですね」
ちなみにこのティラミス【異世界買物】で調達したココアを使っている。
この世界には、アンナリーナの知る限りカカオ豆はない。
完全にアンナリーナオリジナルの菓子なのだ。
「甘目のお酒を使っているから口当たりが良いでしょう?
なんと言っても、アンソニーの自信作なのだ。
食後のお茶はアラーニェに任せ、アンナリーナは皆の寝床の支度を始めた。
ポンポンポンと、テントを出して中を確認し、戻ってくる。
「一張りに2人ずつ眠れるようにしてあります。
私たちは交代でこちらのテントで休みますので……体を拭うお湯が入り用なら声をかけて下さい」
そう言って、自らのテントに引っ込んでいったアンナリーナがしばらくして出てきたとき、その後ろに伴っていたものを見てサルバドールが茶を吹き出した。
“ それ ”は夜の闇に溶け込むような、漆黒のローブに身を包み、深くフードをかぶっていた。
袖口からわずかに覗くガントレットの、指を包む銀の金属だけが光を弾いている。
そしてなによりもその顔を覆う、仮面の異様さ。
見る角度によって、笑っているようにも、泣いているようにも、怒っているようにも見える中性的な白い顔だ。
「彼はネロ、そしてこの子は」
ネロの後ろからふわふわと現れたのは、このあたりでは滅多に見ないジェリーフィッシュだ。
「アマルです。
アマルは喋れませんが、言われたことはわかっているのでコミュニケーションは取れますよ」
アルバインはもう、何も言うことが出来なかった。
「馬車が2台になったので、夜の見張りの人数を増やします。
皆さんは安心して休んで下さいね」
そう言われて『はい、そうですか』と眠ることができない2人がいる。
アルバインとサルバドールは頷きあった。
「毎晩……というわけじゃないけれど、初日なのでデザートもどうぞ。
甘さ控え目なので、殿方も大丈夫だと思いますよ」
まず手をつけたのは商人である、タイニスだ。
もう彼は、何が出てきても驚かない。
それほど常識外れした今回の馬車の旅に、もちろん商機を見出してもいたが、それを表に出さないように必死で堪えていた。
「むっ、これは……」
一口食べて、唸ったタイニスは、あとは一気に平らげた。
タイニスは自身、口が肥えているとは言わないがそれなりに豪勢な食事に慣れているとは思っている。
顧客に貴族などの富裕層が多いのもあり彼らの嗜好にも理解があるはずだった。だがこのデザートは……
わずかにチーズの香りがするが、一体何なのか、表面に振られている茶色い粉の正体もわからない。
酒精が感じられるので何がしかの酒が使われているようだが見当もつかない。
「リーナ殿、この菓子は一体……」
「あ、気に入ってもらえました?
これは【ティラミス】と言って、どちらかと言うと大人向けの菓子ですね」
ちなみにこのティラミス【異世界買物】で調達したココアを使っている。
この世界には、アンナリーナの知る限りカカオ豆はない。
完全にアンナリーナオリジナルの菓子なのだ。
「甘目のお酒を使っているから口当たりが良いでしょう?
なんと言っても、アンソニーの自信作なのだ。
食後のお茶はアラーニェに任せ、アンナリーナは皆の寝床の支度を始めた。
ポンポンポンと、テントを出して中を確認し、戻ってくる。
「一張りに2人ずつ眠れるようにしてあります。
私たちは交代でこちらのテントで休みますので……体を拭うお湯が入り用なら声をかけて下さい」
そう言って、自らのテントに引っ込んでいったアンナリーナがしばらくして出てきたとき、その後ろに伴っていたものを見てサルバドールが茶を吹き出した。
“ それ ”は夜の闇に溶け込むような、漆黒のローブに身を包み、深くフードをかぶっていた。
袖口からわずかに覗くガントレットの、指を包む銀の金属だけが光を弾いている。
そしてなによりもその顔を覆う、仮面の異様さ。
見る角度によって、笑っているようにも、泣いているようにも、怒っているようにも見える中性的な白い顔だ。
「彼はネロ、そしてこの子は」
ネロの後ろからふわふわと現れたのは、このあたりでは滅多に見ないジェリーフィッシュだ。
「アマルです。
アマルは喋れませんが、言われたことはわかっているのでコミュニケーションは取れますよ」
アルバインはもう、何も言うことが出来なかった。
「馬車が2台になったので、夜の見張りの人数を増やします。
皆さんは安心して休んで下さいね」
そう言われて『はい、そうですか』と眠ることができない2人がいる。
アルバインとサルバドールは頷きあった。
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